痛快だったのは、同じ最終組で回り、目前だった勝利を逃したばかりのワトソンが目の前で見せられたストラウドのミラクル・チップインを笑顔とハイタッチで讃えた姿。そして、プレーオフに備えて練習グリーンに向かったデュークも、アテストエリアに上がってきたストラウドとすれ違いざまにハイタッチ。そんな戦士たちの爽やかさが妙に新鮮だった。
プレーオフを戦い始めた2人は実に対照的だった。どちらも初優勝をかけて戦っていたのだが、31歳のストラウドはギャラリーに向かってポーズを取ったり反応を求めたりと興奮気味でハイな様子。
一方のデュークが44歳という年齢以上に老けて見えたのは、これまで乗り越えてきた苦労のせいだろう。スポットライトが当たらない選手生活に慣れてしまっているのか、疲れてしまっているのか。ガッツポーズなんてものを取ったこともなく、取り方も知らないのではないか。そう思えるほど彼は黙々とプレーしていた。
プレーオフ1ホール目をパーで分けた後の2ホール目。デュークのドライバーショットは一回り以上も若いストラウドから20ヤード以上も置いていかれた。だが、落下エリアのフェアウエイはカート道を挟んで上って下る形状だった。あまり飛ばなかったデュークの足場は微妙なアップヒル。かっ飛ばしたストラウドの足場はきわどいダウンヒル。その差が勝敗を分けることになった。
左足上がりの傾斜を上手く利用したデュークの第2打は、まるでブレーキをかけるかのようにピンそば70センチで見事に止まった。大観衆の割れるような拍手は「すごいぜ、デューク!」と言っていた。デュークは自らバイザーを取り、「いやいや、どういたしまして」と軽く会釈。