【全米オープンコラム】見えないスコア
今週のトラベラーズ選手権は10年大会を制したババ・ワトソンが米ツアー通算5勝目を挙げるかどうかに注目が集まりつつはあったももの、他の上位選手たちの顔ぶれを見ても、メジャーのような白熱と興奮の優勝争いを期待するのは難しそうだった。
しかし……最終日の終盤は正反対になった。予期せぬ出来事が次々に起こり、手に汗握る展開となり、最後の最後はほろっとさせられるような、そんな素敵な締めくくりになった。ゴルフの戦いは72ホール。最後の最後まで何が起こるかわからない。そんなゴルフの本質を見せつけられるような、そんなサンデーアフタヌーンになった。
最初に起こった予期せぬ出来事は2位に1打差で単独首位を走っていたワトソンがパー3の16番でトリプルボギーを叩いたことだった。この大会で初優勝を挙げ、号泣した彼は、以後、徐々に強くなり、昨年はマスターズチャンピオンに輝いた。そんなワトソンが首位を快走していたら誰もが彼の勝利を予想する。だが、ワトソンは一気に3打を落とし、代わって単独首位に躍り出たのはケン・デュークだった。
44歳のデュークが優勝すれば、米ツアー史上最年長の初優勝者の誕生となる。その記録がすでに達成されたかのように周囲が色めき立ったそのとき、デュークを1打差で追っていたクリス・ストラウドが18番でグリーン奥からチップイン・バーディーを決め、デュークに並んだ。タイガー・ウッズの雄叫びのような激しいアクションでガッツポーズ。