嫌なムードとは、セルヒオ・ガルシアとの確執のこと。3日目の2番ホール(パー5)でガルシアが第2打を打とうとしたとき、タイガーが5番ウッドをバッグから抜いて2オン狙いの姿勢を見せたことでギャラリーが上げた歓喜の声がガルシアのスイングを阻害したとして、「同組の相手が先にショットしようとしている状況をタイガーは気遣うべきだった」とガルシアがタイガーを批判。
タイガーも応酬し、「セルヒオはすべてを正しく把握していない。セルヒオはすでに第2打を打ったとマーシャルから言われたからこそ僕は5番ウッドを抜いた」。雷雨中断後は凍りついた雰囲気中で2人はプレーを続け、最終ラウンドは同組にこそならなかったものの、互いに牽制し合う空気と周囲の注目は胸の中に残っていたはずだ。
「タイガーは一緒にプレーしたい選手ではない。彼はツアーで最もナイスガイなんてもんじゃない。お互い嫌いな間柄だ。僕らは2度と一緒にプレーしないほうがいい」と公言したガルシアは、優勝争いの終盤、浮島グリーンの17番(パー3)で2度も池に落とした末、「7」を叩き、18番でも池に入れて、8位へ転落。「なんだか僕が悪者みたいに思われている感じだ。僕は犠牲者なのに……」と、プレーは振るわなかったのに、口だけは最後の最後まで達者だった。
しかし、ガルシアに対して何も言わずに最終ラウンドに入ったタイガーは、黙々と勝利を目指し、意義ある優勝を達成。表彰式では、最初はあまり晴れやかな表情を見せていなかったが、「世界一のベストプレーヤー」と紹介された途端、頬を緩め、笑顔になった。
優勝会見で今季4勝の快進撃は驚きかと問われると、「驚き?ノー!(未勝利だった間)僕のキャリアはすでに終わりだと多くの人が思っていたことだろう。でも僕は終わらない。常に向上を目指し、実際、年々向上している」きっぱりと、そう言い切ったタイガーに反論できる者は皆無だ。マスターズでのルール違反問題に対しても多くを語らず、最終日はガルシアとの確執に対しても沈黙を守り、優勝の二文字ですべて黙らせる。