コロナ以前の日常や常識の下では起こらなかった論争や騒動が、パンデミック下の今は残念ながら起こりやすくなっているのかもしれない。
先週、米ゴルフ界ではビジェイ・シン(フィジー)が下部ツアー大会にエントリーしたことを巡る論争が起こった。コトの次第をかいつまんで振り返ると、シンがコーン・フェリーツアーの大会にエントリーしていることを知った同ツアーのブラディ・シュネルなる35歳の米国人選手が、シンに対する激しい批判をツイッターで発信。
マスターズ覇者で元世界一、米ツアー通算34勝で、すでに財をなしているはずのシンがわざわざ下部ツアーに出るのは「他の若者たちの大事な出場枠を奪う」、「賞金を受け取るのなら(シンは)ゴミみたいなやつだ」と激しい言葉を使用。これに対して賛否両論が渦巻いたのだが、誰もが冷静な判断や思考ができる「平時」であれば、こんな騒動は起こっていなかったはずである。
すでに57歳でシニア入りしているシンは、6月11日からの再開が予定されている米ツアーの「チャールズ・シュワッブ・チャレンジ」への出場権を有しておらず、だから戦う場を求めて下部ツアー大会にエントリーした。ただそれだけのことに本来なら批判など上がるはずはない。
主要ツアーに出られなかったら、代わりに下部ツアーに出るのは自然な流れだ。さらに言えば、たとえば「全米オープン」の出場資格を満たしていない元メジャーチャンプらが自力出場を目指して地区予選にエントリーするケースはいくらでもある。