渋野日向子がヘッドカバーに込めた“亡き恩人”への思い 「自分は一人じゃない」

桑田社長は、渋野が岡山県作陽高に在学していた時に出会い、そこから応援し続けてくれた存在。一躍シンデレラとなった2019年の「全英AIG女子オープン」の会場にも、その姿はあった。「調子が悪くても、ずっと笑顔で迎えてくださった。やりたいようにやればいいとずっと応援してくれて。桑田社長がいなかったら、今の私はいない」。こうも言わせる存在なだけに、もちろん悲しさははかり知れないほど大きい。しかしそれと同時に、ここからのさらなる“恩返し”を心に誓った。

「それをきっかけに、ちょっとずつ前を向いて、もっと頑張らないとと思ってやっていたような気がする。遅いんですけど、桑田社長が亡くなってしまったことで、すごくゴルフに対するやる気が出ました」

するとキャディバックにも、少し変化が。

「桑田社長が亡くなったことをきっかけに、またアレすけと一緒に戦うことになったんです。見るたびに社長を思い出して悲しくなることもあるんですけど、“自分は一人じゃない”、そう思わせてくれるヘッドカバーです」

スタンレーレディスでは、まさしく土壇場で優勝を手繰り寄せた。バーディを奪ってトップに並んだ正規の最終18番（パー5）、そして同じ18番を使用したプレーオフの2ホールでは、いずれもピンを狙う3打目でベタピンショットをそろえた。実に渋野らしい劇的な勝利。「スイング改造の集大成」という言葉も出た大会での涙の優勝劇は、決して一人で演じきったものではなかった。（文・間宮輝憲）