ツアー通算31勝、賞金王5回獲得している片山晋呉。今年1月に49歳となったが、国内男子ツアーでは24シーズン連続で賞金シード権を保持しており、ジャンボ尾崎の32年に次ぐ歴代2位の長さだ。永久シードを保持しているため、試合に出場するためには関係ないが、賞金シードは第一線で活躍している証。長年トップで戦っているが、燃え尽き症候群になっていた時期を乗り越えて今がある。
98年にツアー初優勝を遂げてから2008年まで毎年優勝を挙げ、同年の日本オープンで永久シードとなる25勝目をクリア。そして、翌09年のマスターズで首位と2打差の4位に入った。当時としては01年の伊澤利光と並ぶ日本勢歴代最上位の成績で、首位との差は最少だった。
「マスターズで優勝争いして、トップ10に入る」ことを目標に毎年鍛錬を重ねていた片山は、目標を達成したことでモチベーションを失ってしまった。トレーニングはしているが練習量は大幅に減ってしまった。09年以降、優勝から遠ざかり、常連だった賞金王争いに名前が挙がらなくなった。それを乗り越えて13年の「東海クラシック」で5年ぶりに優勝を挙げたが、この復活劇の裏には、レジェンドの中嶋常幸の存在がある。
09年の日本オープンの時に片山は中嶋にこう尋ねた。「ゴルフを嫌になったことはないですか」。片山の苦悩する姿を見た中嶋はこう答えた。「お前は炭でいろ」。
灰になったらもう燃えることはないが、炭ならばどんなに小さくても再び燃えることができる。「灰にはなっていない。燃える日がいつかくる。その日のために準備だけはしておけ。なかなか来ないかもしれないけど」とも付け加えた。
「中嶋さんの言葉が無かったら灰になっていたかもしれない」。モチベーションが上がらないまでも、その日から肉体のトレーニングを続け、再び燃え立つ日を待った。その結果が5年ぶりの優勝であり、今もなお現役の賞金シード選手として君臨しているのだ。