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全英会場はスタンドがなければ野原にしか見えない!?【大会写真】
最も歴史のあるメジャー大会、全英オープン。私ももうずいぶんと前になりますが、2002年のミュアフィールドで開催された大会で、宮里聖志プロのキャディをさせていただいたことがありました。キャディとして初の海外、それがしかも全英オープンということで、今思えばかなり浮足立っていたと思います。あまり海外のツアーについても詳しくなかった中、色々ご迷惑もかけただろうと反省している大会でもあります。
その際のコースの印象は、「ゴルフ場」というよりも、広々とした公園の中にある「ゴルフができる場所」。全英オープンの会場として周辺が取り囲まれていなければ、ただうねりのある野原…そんな風にも見えるような場所でした。雲が低く、なんとなくいつも暗い風景の中、コースのすぐそばで犬の散歩をしている人がいたりして、とても日常的な空間の中にゴルフがあるような、そんな印象を受けました。
地面は硬く、バンカーが深いという難しさはあるけれど、距離はそれほどでもなく、晴れていれば半袖で気持ち良くラウンドできる、そんなイメージ…なのですが、雲が立ち込めて風が吹き始めると、その景色は途端に一変します。気温は一気に下がり、セーターだけでは足りないほどの寒さになります。レインウェアは防寒着としても必需品でした。
風を遮るようなものが何もないので、風はほぼ一定方向。バンカーが深いのは、風で砂が飛ばされてしまうからなのでしょうか。グリーン上でも、風の計算が必要になります。
ただ、そういった風の強さは日本でも少なからず経験していたので、それほど難しいものではないはずなのですが、向こうでは風に伴って気温が一気に下がります。手がかじかむほどの冷たい強風が吹き荒れるといったイメージでしょうか。雨が伴うことも少なくなく、そんな天気の変化への対応が、とても難しかった印象です。午後から天候が一変したときなど、選手たちのスコアのあまりの変動に驚かされたものでした。
結果は、残念ながら予選落ち。記念に持って帰ってきた国内のものよりかなり大き目なビブスは、予選で一緒だったトム・ワトソンさんのキャディだったブルース・エドワーズさんに、「回収係にチップ渡したら持って帰れるよ」と教えてもらったものです。女子のキャディがほとんどいなかったせいか、今は亡き名キャディのブルースさんに色々と話しかけていただけたのは、とても良い思い出です。
貴重な経験をさせてくれたプロに感謝しつつ、もっと経験のあるキャディがついていれば…とも思う、私にとってほろ苦い思い出でもあります。
■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。