今回は、ゴルフクラブの本数についてのお話です。
ゴルフを始めようとするときに、多くの人が戸惑うのはゴルフクラブがたくさんあることです。小学生の子供が丸々入りそうな馬鹿デカイ大きさのキャディバッグの中に、いったい何本のクラブが入っているのか? どうして、そんなに必要なのか? ゴルフをする人たちは、そのクラブを愛しそうに大事にしているだけではなく、何故、自慢気に披露しようとするのか?
ゴルフクラブは規則で14本以内と決められています。野球は9人、サッカーは11人。それと同じように考えるとわかりやすいです。14人のレギュラーを決める監督があなたです。遠くまで飛ばす担当を始めとして、転がす担当、高い球を打つ担当、色々な役割があり、自分がやりたい戦略でレギュラーは変わります。ゴルファーにとって、14本以内という規則は良くできていて、もう少し本数を入れられれば、もっとゴルフが上手くいくのにと願っているケースも少なくないのです。
ゴルフクラブが規則で14本になったのは、1939年(世界中で統一という意味で)です。ゴルフの長い歴史からすればつい最近のことです。職人技のオーダーメイドだったゴルフクラブが大量生産されるようになっていく中で、人が20本を越えるクラブを持ち歩くようになって、それを担ぐキャディーの組合からのクレームが表向きの議論の始まりになりました。14本になった経緯は記録上も色々あるのですが、偶然と適当のちょうど良いバランスだったことだけは、現代のゴルファーであれば誰もが知っています。
練習のときは、貸しクラブでやっていた人が、ゴルフコースに出るのにクラブを3本だけ買ってデビューしました。周囲の人は「そんなんじゃ、駄目だよ」と言っていましたが、その人は初コースでゴルフが大好きになって、翌月にはクラブを8本に増やし、更に翌々月には14本のマイクラブを愛しむゴルファーになりました。本数だけで一人前になるわけではありません。でも、ゴルフに魅せられてしまった一つの物差しにはなるのです。
クラブ以外でゴルファーを助けるゴルフギアを15本目のクラブと言う話は面白いのですが…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages