ホテルや航空券、ツアー旅行などキャンセル料がかかるものすべてをひっくるめた調査だが、消費者庁が発表した『キャンセル料に関する消費者の意識調査』(令和6年1月)によると「キャンセルした時、キャンセル料がかかることを覚えていましたか?」という質問に対し、「覚えていた(「はっきり覚えていた」+「なんとなく覚えていた」)」の割合が75.4%。「覚えていなかった(「あまり覚えていなかった」+「まったく覚えていなかった/キャンセル料がかかることを知らなかった」)」の割合は20.2%だった。
「はっきり覚えていた」を年齢別にみると20代が45.6%、30代が46.1%、40代が50.3%、50代が55.7%、60代が53.4%、70歳以上が55.3%で、年齢が高くなるほど意識が高い。わずかの差だがやっぱり大人、経験値が違う。
ゴルフ場のキャンセル料というと、そもそも規定がない、規定は設けているがあまり機能していないところが多かった。また、メンバーが直接予約を入れたり、フリーで来場するゴルフ場は、仮に行けなくなったとしても1本連絡を入れればそれでOKという時代が長かったという背景もある。
■キャンセル料徴収の徹底ぶりは西高東低
関東のあるパブリックコースは2024年春からキャンセル料の規定を新設した。「キャンセルの連絡期限はプレー7日前の正午まで。期限までに連絡がなかった人は1人2,200円のキャンセル料がかかる」というもので、連絡方法は電話、メール、ウェブ予約サイトのどれでもOKとした。だが実情をよくよく聞いてみると「事前に連絡してきた人は多少期限を切っていてもキャンセル料を取らないこともある」という。最大の理由はやはり手間。キャンセル料を払ってもらうには連絡や請求など事務作業の手間がかかる。「無断で来場されないお客様には請求書を郵便でお送りしていますが……」と担当者は話す。
ところが、関東と関西ではとらえ方にだいぶ差があるようで、関西のゴルフ場はきっちり徴収しているところが多いという。
兵庫県のあるゴルフ場の担当者は「以前から規定の通りに払っていただいています。このあたりはどこも同じだと思いますけど」という。ゴルファー側も「そういうものだから」と、払って当たり前の感覚が浸透しているそうだ。
また、別の関西のゴルフ場では、プレーはセルフ・キャディ付きの選択制で、セルフの場合は既定のキャンセル料を払えばいいが、キャディ付きの予約で期限を過ぎてキャンセルするとプレー料金を全額徴収するという。この場合、プレー日の振替やセルフへの変更もNG。それでも「ちゃんと払っていただいている」という。4人中1人キャンセルの場合は1人分のプレーフィを100%徴収、残りの3人は3バッグになるので割り増し料金を払う。
関西のゴルフ場に聞いていて感じたのはキャンセルに関する規定もその説明もとても明確に準備されているということ。公式サイトでもキャンセル規定を見つけやすく、記述も細部にわたってきっちり書かれているところが多い。
「もちろんキャンセルの連絡があったお客様にはその理由や事情をうかがいますし、内容によっては期限を切ってのキャンセルでも徴収を免除することもあります」と、聞き取りやその後の対応にもぬかりがない。
実際にどのくらい違うのか。ゴルフ場数で東西ナンバーワンの2大ゴルフタウン、千葉県市原市と兵庫県三木市の全ゴルフ場のキャンセル料規定を調べてみると、市原市内ではまだキャンセル料規定がないゴルフ場が32コース中14コース。半数近くがまだキャンセル料を取っていなかった。三木市内で規定がないのは25コース中、廣野GC、三木GCの2コースだけだった(各コースのキャンセル料規定の詳細は記事最後に記載)。
■キャンセル料規定導入のきっかけはPGM
PGMのキャンセル料請求の取り組みは業界の転機になり、アコーディアなど他の大手チェーンも追随している。導入の経緯をPGMに聞いた。
「もともとゴルフ場ではキャンセル料の請求を行っていましたが、バブル崩壊以降、競争激化や利用者減少を背景に『キャンセル料を取らないこと』が一般化し、業界全体で慣習的に形骸化していきました。PGMでも規定自体は設けていたものの、常時運用していたのはごく一部のゴルフ場に限られていたんです」
しかし、コロナ禍でゴルフを始める人が増えて週末を中心に予約が取りづらくなった。仮押さえや直前キャンセル、無断キャンセルも増加した。
「実際にプレーを希望されるお客様が公平に予約できる環境を整えることを目的に、キャンセル料規定の運用を本格的に開始しました」
キャンセル料の回収方法は「Payn」というシステムを導入した。
「すべてスマホ上で完結できる点が大きいと思います。予約時にキャンセル料が認知されるよう努めており、Web予約の場合のプラン案内に明記、電話予約であれば確認メール内にキャンセル料の詳細を明記する等の対応を行っています。大半はお支払いいただいていますし、お支払いいただけないお客さまへは継続的な督促を行っています」
■払う側もカンタン・ラクがいい
PGMが導入したのがPaynというシステム。すでに体験済みの人もいると思うが、このシステムを使っているゴルフ場はキャンセル料の請求通知をショートメールやEメール、郵送などで任意の顧客に簡単に送ることができる。
決済方法は、以前は払う側にも負担が大きかった。銀行振込といわれても手間がかかるうえに手数料もかかる。それがこのシステムだとクレジットカードや電子マネー、PayPayやApple Pay、Google Pay、WeChat Payなど身近にある決済手段全部を使えるようになっている。
Payn株式会社の矢崎氏は「当社が開発した独自システムを使っています。宿泊施設や航空会社などと違い、ゴルフ場のキャンセル料は近年、認知度が高まってきたところだと思います」という。
未払い者には規定通り請求が行き、払い忘れがないように自動リマインドもされる。日本語だけでなく14言語に対応しているので、インバウンドゴルファーも例外はない。
キャンセル料の導入にはいい面もある。
「今までキャンセルのピークタイムがだいたいプレー日の1週間前ぐらいだったのが2週間以上前になってきています。また、“またがけ予約”や“とりあえず予約”が減り、予約枠を他のゴルファーにも提供できるようになるという効果が生まれています。『いつ電話してもなかなか予約が取れない』ゴルフ場がもっと減ってくるかもしれません」
最後に、ゴルフ場経営に詳しい事情通のA氏からも一言もらった。
「昔はメンバーが責任を持って予約していたのでキャンセル料の必要性は低かったのですが、現在はネット予約の普及でドタキャンが増加しているのも事実。また、ゴルフ場の値引き競争や直前割引の増加も影響していると思います。事実、キャンセル料の導入に踏み切ったゴルフ場にはそこを理由に挙げるところも多いんです。入っていた予約を近隣ゴルフ場の極端な値引きでごっそり持っていかれる。その防衛策としてやむを得ずキャンセル料を取り入れるところも少なからずある。ゴルフ場のマナーが問われていると思います。キャンセル料をいただくからには、ゴルフ場側もそれなりの義務を果たさなくては。予約システムなどをきちんと整えたうえでやるべきではないかと思います」
キャンセル料の規定は変わることもある。ホテルや航空券の予約同様、公式サイトなどで事前のチェックをお忘れなく。
