なんとか、しのいでしのいで11位でフィニッシュ。自力でシードをつかみ取った瞬間は、喜びよりも安どが先に来た。「良く辛抱できたなと思いますね。最後まで。めちゃくちゃホッとしました」。すぐさま母に報告したところ「良かったね。お疲れ様」との声をもらった。息子の初シード獲得にしては意外と淡々としたように感じるが、「多分途中経過とか見て分かっていたんだと思います」ともちろん一番気にかけていた。
シード獲得につながった“辛抱”。これは19年のファイナルQTでの教訓が非常に生きた。元々入り込みやすい性格のケンシロウだが、このときは「ラフな気持ちでやってみよう」とあえて集中しすぎないように心がけた。「今までは集中しすぎて良くない方向にいくこともあった。でも、適当にじゃないですが、ラフにやったら結果がついてきてくれた。じゃあ、もうちょっと続けてみようと思いましたね」。心構え1つで、気持ちの切り替えや我慢がより効くようになった。これがシーズンで一番成長した部分だった。
とはいえ、まだまだだと感じることも多かった。「シードは獲れたんですが、勝てるのかと言われたらまだ勝てるような準備ができていないなと感じました」。よりレベルの高い環境で頂点を目指すなかで周囲との差は如実に出た。
それは高校の先輩・木下稜介、そして総合力を示すメルセデス・ベンツトータルポイントランキングで1位となった大槻智春と同組でラウンドした「ANAオープン」のムービングデーにより鮮明となる。
「2人はやっぱり3日目にビッグスコアを出して一気に上位に行ける。その差は何だろうと思ったら、いいスコアを出すにはパッティングを入れ切らないといけない。パッティングは僕の課題なのですが、木下先輩はしっかり入っていたし、大槻さんはショットメーカーだけどトータル的に仕上がっている。予選落ちが無くなったタイミングでグッと伸ばしきれる力が必要かなと思いました。これは気持ちの部分が大きい。そっちが技術を引っ張っていく感じですかね」
