尾崎直道、塩谷育代ら5名が新たに殿堂入り
散骨の場所に着くと、各艇が列をつくって大きな円形を描き、水に溶ける白い紙に包まれた遺灰を、円の中心に向かって次々に海へと投げ入れた。洋上での散骨は、強風に備えてこうした形がとられる。それはヨットマンだからこそできる、厳かだがとても温かみのある野辺送りの儀式だった。
ヨットハーバーに戻るとクラブハウス内に、岩田氏を偲ぶ席が設けられた。そこで石原氏が口にした弔辞は先に行ってしまった友人への毒をちょっぴり含んでいながら、故人への愛情あふれるものだった。
湘南高校で岩田氏の1級上だった石原氏だが「放蕩が過ぎて留年し、同級になった」(知人の証言)。「たまたまサッカーの試合で人が足りなくなったので(岩田氏に)応援を頼んだけど、まったく戦力にならなかった」と当時を振り返り、参列者の笑いを誘った。その後はヨット仲間が忘年会などで親睦を深めることを目的とした「湘南マフィア」を結成。岩田氏は取材で海外と日本を往復する生活を送りながらも合間を縫って共同オーナーで所持する「マウピティ号」を定期的にヨットレースにも参加させていた。石原氏も政界に進出し多忙な日々を送っていたが、お互い時間をつくってヨットだけでなくテニスやゴルフを楽しんでもいた。
2012年3月6日、東京プリンスホテルで岩田氏が上梓した「マスターズ」の出版記念パーティーにも、石原氏は当然のことながら出席し祝辞を述べた。その本の帯には「日本のゴルフ評論のマスターの岩田ガンちゃんの手によるマスターズの完璧な辞典だ。石原慎太郎」というメッセージが載るはずだったが、あろうことか、諸事情からこの日のパーティーに書籍は間に合わなかった。
「本のない出版記念パーティーなんて初めてだよ」の言葉を聞きながら、脇で苦笑する岩田氏とのコントラストが会場の笑いを誘い、一気にムードを和やかなものにした。二人が天国で再会し、早速ゴルフやテニス、ヨットに興じているような気がしてならない。 合掌 (日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川 朗)
