気持ちよくプレーしているとき、突然足がつったら
「マン振りをして、ヒザ下や足首などに力を入れすぎたことで、過剰な負荷がかかり、足裏がつったりすることはあります。とはいえ具体的にゴルフ場でこむら返りが起こりやすいシチュエーションというのは特にはありません。ただし夏場なら、熱中症の症状のひとつとしてこむら返りが起こることがあり、冬は寒さによる血流障害も原因となります。また普段から運動不足な人が、運動(ゴルフ)をすることによって、こむら返りを引き起こすこともあるので、まずは普段から体を動かすことをこころ心がけてください」。
起こりやすいシチュエーションがないのといわれるだけに、思いがけないタイミングで動けなくなってしまうのがこむら返りの特徴ともいえる。いざ、ゴルフ場で足をつってしまったとき、どうしたらいいのだろう。
「まず熱中症が原因と疑われる場合は、熱中症の対応をしてください。全身の状態に問題はなく、ふくらはぎにこむら返りの痛みだけが出たときは、カカトの角度を90度にしてふくらはぎをゆっくりと伸ばしてください。また痛みが通り過ぎるまで安静にしているだけでもかまいません。消炎鎮痛剤の塗り薬や湿布が有効であるというエビデンスはありませんが、経験上、効果があったのであれば使用するのもいいと思います」。
こむら返りに備えるとすれば、アキレス腱を伸ばすといった準備運動をしっかり行うこと。また熱中症への対策も兼ねて水分をこまめに摂取すること。さらにミネラルを多く含む食事を摂ることなどが考えられる。カルシウムが豊富な牛乳、チーズ、ヨーグルト、小魚、マグネシウムを多く含む海藻、ナッツ類、魚などを意識して食べるのもよいかもしれません。さらに竹下先生がつけ加えてくれたのは、
「芍薬甘草湯という漢方薬がこむら返りに効くと言われています。足がつりやすい人はかかりつけ医に相談してみてください。イカやタコに含まれるタウリンという物質が肝硬変の患者さんのこむら返りの防止によいという古い研究がありますが、健康な人への効果はわかりません。あとコレステロールを抑える内服薬や、肝臓の薬の副作用でこむら返りが起こることもあります。頻繁にこむら返りをする人で、こうした薬を服用しているのであれば、必ず医師に相談してみてください」。
「ゴルフは朝早くから、同伴者にも気をつかいつつ、1日屋外で過ごすこともあり、ついつい無理をしがちなスポーツでもあります。こむら返りだけに限らず、ご自身の日頃の運動強度を振り返って、無理のないプレースタイルでゴルフを楽しんでください。たとえば、暑い時期に歩きのスループレーをするとか、早朝から1.5ラウンドまわるといったことは、普段からしっかり体を鍛えていなければ、通常のラウンドとは比べものにならいほど体に負担がかかるものです」。
プレー当日の朝、目覚めたとき首を寝違えていたら
「朝起きたら、首の後ろや首から肩にかけて痛みが生じるのが寝違えです。その原因は睡眠中の不自然な姿勢による筋肉の一部の血流不足、前日に重いモノを持ったりして酷使された筋肉の痙攣、首の筋肉や関節の炎症などが原因と考えられていますが、実際のところ、定説はありません」。
そんな原因がはっきりとしない寝違え。スタートまでの時間も限られている中で、ゴルフ場に着くまでの間に、具合もよくなっているはずと見切り発車してしまいがち。竹下先生はドクターという立場から、プレーすることは薦めないというが、こう解説してくれた。
「痛みがひどかったり、手足に力が入りにくかったり、しびれが出たりしたら、単なる寝違えではないかもしれません。その日のプレーはあきらめて整形外科で受診してください。強い痛みではない場合、痛む方向には首を動かさないようにして様子をみるのもいいでしょう。たとえばゴルフ場までクルマで向かうとき、きちんといつも通りの安全運転ができないようならプレーは断念してください。痛みが徐々に緩和していくようならば、プレーできるかもしれません。ただしスタートしたあと、症状が悪化したり、手足のしびれなどほかの症状が現れるようなら、躊躇せずにプレーを中止してください」。
寝違えに気づいたあと、自宅を出るまでには多少の時間はある。幸いにも痛みが治まりつつあるとき、その対処法としてどんな準備をしておけばいいのだろう。
「湿布や鎮痛剤を使うのはいいと思います。温湿布、冷湿布はどちらでもかまいません。痛みが和らいで心地よく感じるほうを選んでください。鎮痛剤は安全に使用できる飲み慣れた薬を服用しましょう。ストレッチやマッサージを試みるのもよいですが、あくまでつらく感じない程度に。無理は禁物です」。
原因がはっきりしない寝違えだけに予防策というのも難しいのだが、普段から首を動かしたり、まわしたりするなどの運動を心がけておくのがよいとのことだ。
これまで4回にわたりラウンド中に起こりがちな体のトラブルについて、対処法や予防法を紹介してきた。自らもゴルフが趣味である竹下先生は最後にこうつけ加えてくれた。
「ゴルファーであれば、ゴルフ場でプレーするのはなにより楽しいものです。ですがゴルフと健康を考えるとき、もっとも大切なのは不安があるときにプレーを中止する勇気と、同伴者の中止を受け入れる寛容な心です」。
ちょっと耳の痛い話ではあるが、ゴルフを心から楽しめるのは健康な体があってこそ。心に留めておきたいフレーズだ。
教えてくれたのは
東海大学医学部付属病院医師。医学博士、日本内科学会総合内科専門医。1993年、慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院内科研修医、北里研究所病院総合内科部長などを経て、2018年から現職。趣味はゴルフとおいしいものを食べること。
