今回は、ゴルフボールに凹みがある不思議についてのお話です。
ゴルフをしなくとも、ゴルフボールは多くの人が知っています。表面に凹みがたくさんついているボールは、まさにゴルフを象徴するものです。あの凸凹はどうしてあるのでしょう? 結論から書くと、あの凹みは300個〜400個ついていて、ボールを遠くまで飛ばすために機能します。中身は同じまま、表面をツルツルにしたボールは、凹みがあるものに比べて半分しか飛ばないのです。
初期のゴルフボールは、フェザーボールと呼ばれる職人技で作ったものでした。濡らした羽毛を動物の皮で作った表皮の中にギュウギュウに詰め込んで、野球の公式ボールのように縫い合わせたものです。このフェザーボールは、職人によってバラツキがあるもののボールとしてはかなり優秀でしたが、大量に作れなかったこともあって、フェザーボールは高価でした。大金持ちと貴族たちしかゴルフをしなかったのは、ボールが高かったという理由もあったようです。
ガッティが広がっていくきっかけは『傷』でした。ゴムのボールは、打っていて傷めば、再び型に入れて温めれば新品に戻ります。それはプラスのはずでしたが、新しくしたボールより、傷だらけのボールのほうが飛ぶということにゴルファーたちは気がついたのです。
凸凹をつければ飛ぶのだとわかったゴルファーは、金型の内側に無数の凹みをつけました。出来上がったボールはたくさんの出っ張りがあるつぶつぶのボールになりました。形状が似ていることから「木イチゴ(ブランプル)」と呼ばれました。
その後、改良が加えられて、凹みのほうがより耐久性もあり、安定してボール飛ぶことから現在の凹み「ディンプル」につながっていきます。ちなみに、ディンプルは「えくぼ」という意味です。偶然の発見がゴルフボールを驚異的に飛ぶようにしたのです。
このディンプルの進化はもっと続くのですけど…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages