<三井住友VISA太平洋マスターズ 事前情報◇7日◇太平洋クラブ 御殿場コース(静岡県)◇7262ヤード・パー70>
「入りました。大きいです」。そう喜ぶのは25歳の安森一貴。現在、1096万1279円を稼ぎ、賞金ランキング62位につけている。65位以内の賞金シード獲得の安全圏に入るまでは残り3試合でおよそ100万円を稼がなくてはならない状況で、今日、大阪から会場の静岡に移動中に、ウェイティング1番目だった安森に出場権が下りてきたことが電話で伝えられた。
そもそも、「三井住友VISA太平洋マスターズ」はQT(予選会)からツアーに出場する選手にとって出場は狭き門。
基本的に大会は『過去5シーズンの賞金王』、『前年度のトーナメント優勝者』、『前年度の賞金ランキング上位65名(賞金シード)』…と出場優先順位が高い方から出場枠が埋められていき、最後にQTランキングの高い順に枠が下りてくる。そのQTランキングは、9月の「フジサンケイクラシック」終了後に、今シーズンの獲得賞金順に“リランキング”が行われ、安森はシーズン開始時の12位から、より優先順位の高い5位まで順位を上げている。
しかし、今大会や翌週の「ダンロップフェニックス」は出場人数が一気に少なくなるため、QTから這い上がってきた選手には、なかなか出場枠が下りてこない。この終盤の2試合に出場できるかできないかは、シード当落線上の選手たちにとって死活問題なのだ。
リランキング後の最初のトーナメント、9月の「ANAオープン」は出場枠120名に対して、リランキング47位の阿部裕樹まで出場権が下りてきていた。しかし、前週の「マイナビABCチャンピオンシップ」では出場枠99名に対してリランキング10位まで、今大会では出場枠87名に対して現時点でリランキング5位までしか下りてきていない。
50回目の記念大会だった昨年は、QT選手にとって、もっと過酷な状況だった。なんと、リランキング1位だった岩崎亜久竜に出場権が下りてこなかったのだ。岩崎は昨年大会の開幕前には賞金ランキング6位につけていたのに、だ。結果的に岩崎は主催者推薦で昨年大会に出場し、9位タイに入っている。翌週に続く「ダンロップフェニックス」は、84名と少ない出場枠だったが、リランキング10位まで出場枠が下りてきた。つまり、今大会はその年に活躍したQT選手が、最も出るのが難しい試合と言ってもいい。
「普通に3試合頑張れば行けるかなと思います」。安森はダンロップとボール契約を結んでおり、すでに次週の「ダンロップフェニックス」の出場権を確保している。その翌週の「カシオワールドオープン」と合わせて、3試合で予選を通過すれば、賞金シードのラインに達する見込み。「まずはシードを獲ることが優先で、チャンスがあれば上に行きたいです」とツアー初優勝のチャンスもうかがう。
しかし、安森にとって不利な条件もある。深夜から朝にかけてコースが暴風雨に見舞われ、散乱した落ち葉を取り除いたりする復旧作業のため、火曜日の練習ラウンドができなかったのだ(コースチェックでボールを打たずに見て歩くことは可能)。あす水曜日のプロアマに出場しない安森ら多くの選手は、ぶっつけ本番でコースに臨むことになる。「学生時代に一度回ったことがある」という記憶をたどりながら、安森は初日に備える。(文・下村耕平)