<ニトリレディス 最終日◇27日◇小樽カントリー倶楽部(北海道)◇6695ヤード・パー72>
勝利の行方は三つ巴のプレーオフにもつれこんだが、舞台となった17番パー3のティショットを順に打ち終えたときには、申ジエ(韓国)が優勢のようにも見えた。一度はスタートした最終ラウンドが中止となり、プレーオフが始まるまで5時間が経過。そのなかで、「狙い通りには打てました」と5番ユーティリティで放った打球は、ピン右上5メートルについた。
菊地絵理香は手前の花道にショートし、岩井明愛は左手前のバンカーに落として、アゴが近くで目玉という難しいライ。ジエが3人で唯一、グリーンを捉えていた。
ふたりは寄せきれず、決めれば勝利となるジエのバーディパット。大きく曲がるフックラインに乗せた一打は、わずかにカップの右を抜けるとそのまま止まらず、2メートルもオーバーした。この“まさか”には思わず苦笑い。菊地がパーとしたことにより、通算29勝目はスルリと手を抜けた。
「練習グリーンが重かったので、それを思い出して打ったら、とても速かったのでびっくりしました」。最終決戦のまえに、雷雨で変化したコースコンディションを確かめようと、練習グリーンで球を転がした。しかし「ロールをかけてたみたい」。クラブハウスに帰ってくるやいなや、ジエはキャディにそう話していたが、プレーオフ前にコース回復のために超特急で行われていたメンテナンスに対応することができなかった。
「ベテランたちの優勝はうれしい。本当におめでとうと言いたいです」と、同級生・菊地の優勝を祝福したジエ。永久シードに王手をかけることは叶わなかったが、2位タイとしたことでメルセデス・ランキングは後続に300ポイントほどの差をつけて首位をひた走っている。
国内ツアーはおよそ2カ月ぶりの出場だったが、またもなお、“元世界一”の肩書に違わぬ強さを見せつけた1週間。「(プレーオフは)ギャラリーさんもいなくて寂しかったので、来週の試合からメジャーまで、ギャラリーさんの前でまた優勝したいです」と締めくくり、笑顔で勝利を誓った。(文・笠井あかり)