国内男女ツアーは2023年のシーズンが終了。男子は中島啓太が賞金王を戴冠し、女子は山下美夢有が2年連続で女王の座についた。そのなかでは、今年も“初優勝”、“復活V”などの見出しが踊り、印象的なシーンの数々が人々の心を打った。そこで選手たちが流した『涙』にスポットライトを当て、シーズンを振り返ってみよう。
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「日本オープン」で石川遼が見せたのは敗戦の涙。イーグルを獲らないと追いつけない最終18番パー5で、残り205ヤードのセカンドショットは6番アイアンでグリーンを狙った。しかし、ツマ先下がり、左足下がりのフェードが出やすい状況からドローをかけにいったスイングは、まさかの“ダフり”でグリーンに届かず。『石川遼なら追いつけるかもしれない』という雰囲気もあっただけに、本当に悔しい一打となった。
結局、最終ホールはパー。「本当にいいゴルフができたっていう…それだけですかね」。涙ぐみながらそう声を絞り出した。
それでも1年を通してみると、このナショナルオープンでの4日間60台を並べての単独2位が今季のベストフィニッシュ。パー3以外の全ホールでドライバーを握り、「ドライバーで打つのが怖くなって、全部刻むことも自分のなかで多少なりともあった。(その中で)自分の力を信じてやることができた。どの試合でも変わらないと思います」と、2020年から取り組んできたスイング改造の成果を噛みしめる。
この4年間は試行錯誤を繰り返しながら、握り方、バックスイングの上げ方、トップのポジション、切り返しのタイミング、インパクトに向かっていく足の使い方まで、すべてが変わった。新しいスイング軌道を体に染みこませるために、石川の代名詞だったドライバーをほとんど握らずに戦った試合や、フェードを封印していた時期もある。
最終日の2番と7番ではドライバーを曲げて序盤で優勝戦線から脱落しかけた。しかし、今年の石川には修正力がある。その後に3つのバーディを重ねて踏みとどまった。「今までやってきたことを駆使して、立て直すことができましたし、やりきった感もありながら…」。スーッと呼吸を置いて「まだまだだなというところも感じます」。会心のゴルフでなくても、ラッキーがなくても、上位で終える。それは石川が目指していたゴルフの形でもある。ただ優勝には届かなかった。
この翌週に行われた日本開催の米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」では、日本勢最上位の4位タイで終えた。米ツアーでは通算11度目のトップ10。そこでも「正直、まだまだだなと思います」と同じ言葉を口にしている。アプローチで「もったいないミス」がありながら、米ツアーのフィールドでも上位に入れたが、目指す終着点ではない。敗戦の先には「自分が上手くなってPGAツアーでプレーすること」を思い描く。
23年シーズンは未勝利で賞金ランキングは2年連続10位に終わった。9月に韓国で行われた日韓亜3ツアー共催の「Shinhan Donghae Open」と、ZOZOチャンピオンシップ4 位の資格で出場した11月のメキシコ開催の米ツアー「ワールドワイド・テクノロジー選手権」で体調を崩さなければ…とも思ってしまうが、それは来年の楽しみにとっておこう。(文・下村耕平)