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【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】五輪コーチ辞退の宮里藍の英断とそこから見えてくるもの
【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】五輪コーチ辞退の宮里藍の英断とそこから見えてくるもの
所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net
配信日時: 2018年7月10日 06時58分
宮里藍が、東京五輪の女子担当コーチを辞退した。就任を要請した日本ゴルフ協会(JGA)が、辞退されたことを発表。「引退したばかりでコーチング経験がなく、今回はまだ難しいと判断するに至った」というコメントも公開している。辞退した宮里の判断は、実に懸命だと思う。プレーヤーとしての実績が、そのままコーチとして機能するわけではないことをきちんとわかっているからだ。
【関連写真】自身の冠大会で乾杯の音頭をとる宮里藍
ゴルフに限らず、日本ではいまだに名選手=名コーチのような時代錯誤の考え方が根強く生きている。そうでない場合も、元・名選手のネームバリューを利用するために、監督やコーチにしたがる傾向が強い。野球やサッカーの代表チームに“○○ジャパン”などと、監督の名前をつける報じ方など、明らかにまちがっている。プレーヤーからより良いパフォーマンスを引き出すのが監督でありコーチなのだから。
もちろん、競技のことをより深く理解し、プレッシャーのかかる場面でより良いパフォーマンスをする方法がわかっているのはまちがいないし、名コーチになれる元・名選手だっている。だが、コーチングのイロハの「イ」ともいえる『指導する相手=現役プレーヤーは、自分と同じではない』ということがわからない限り、決して名コーチにはなれないだろう。限られた者だけに自分の技を伝える名師匠にはなれるかも知れないが…。
JGAから宮里藍に正式に五輪コーチ就任要請が行われたのは、今年3月のこと。だが、そのずいぶん前から、話は出ていた。ゴルフのナショナルフェデレーションであるJGAは、2016年リオ五輪後の同年10月に日本プロゴルフ協会会長倉本昌弘の強化委員長、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長小林浩美の同副委員長、丸山茂樹のヘッドコーチのそれぞれ留任を決めた。翌17年、宮里がシーズン限りでの現役引退を発表するとすぐに、倉本強化委員長が引退後の宮里にコーチ就任を依頼することを口にしている。
強化委員長の言葉だけに、すぐにあちこちのメディアに『宮里藍にコーチ就任要請へ』の見出しが躍る。だが、強化委員会で正式に要請が決まったのが、宮里がすべての競技を終えた17年10月のこと。その前にJGAから「コーチ正式要請の一部報道があるが、機関決定されたものではなく本人並びに関係者に正式な要請はしていない」というマヌケなリリースがわざわざ出されていた。このあたりから雲行きが怪しい気配が漂い始める。結局、宮里はコーチ就任を辞退した。
そもそも、リオで女子コーチがいなかったのは「(LPGAの)小林さんから出てこない」(倉本)からだったが、宮里に辞退された今、東京大会はどうするのだろうか。
五輪ゴルフ競技は団体戦でなく、個人戦。その上、すでにそれぞれコーチがいたり、自分の戦い方を持っているプロゴルファーを4年に1度の五輪のために“いじる”わけにはいかない。だったら「コーチ」は何をするのか。東京という“ホーム”開催の有利さを利用し、より戦いやすい環境を整えること。大舞台でのプレーの仕方に慣れさせること。ナショナルフェデレーション(JGA)に不足している部分を補うことなど、仕事はいくらでもある。プロの組織の長である倉本と小林は、そのために入っている。コーチの仕事ができる人間は、必ずしも“名選手”に限らない。役割ごとに違う人間が担う方法だってある。
ビッグネームになればなるほど「利用される」ことは増える。今回の件も、宮里藍という名前を利用したいだけだったように映る。これを鮮やかに蹴った宮里の英断には拍手を送りたい。宮里の辞退コメントを読み直し、コーチの役割と適任者を改めて考える必要があるだろう。女子のコーチが必ずしも女子である必要もないのだが、もし、女子のコーチは「女子プロから」と考えているのなら、小林浩美会長の責任は大きい。東京五輪まであと2年余り。メダル至上主義になるつもりはないが、地元開催の五輪というゴルフの普及には最大のチャンスを生かすために、何をするべきか。根本的なことから考えれば、おのずと答えは出るはずだ。(文・小川淳子)
【関連写真】自身の冠大会で乾杯の音頭をとる宮里藍
ゴルフに限らず、日本ではいまだに名選手=名コーチのような時代錯誤の考え方が根強く生きている。そうでない場合も、元・名選手のネームバリューを利用するために、監督やコーチにしたがる傾向が強い。野球やサッカーの代表チームに“○○ジャパン”などと、監督の名前をつける報じ方など、明らかにまちがっている。プレーヤーからより良いパフォーマンスを引き出すのが監督でありコーチなのだから。
もちろん、競技のことをより深く理解し、プレッシャーのかかる場面でより良いパフォーマンスをする方法がわかっているのはまちがいないし、名コーチになれる元・名選手だっている。だが、コーチングのイロハの「イ」ともいえる『指導する相手=現役プレーヤーは、自分と同じではない』ということがわからない限り、決して名コーチにはなれないだろう。限られた者だけに自分の技を伝える名師匠にはなれるかも知れないが…。
JGAから宮里藍に正式に五輪コーチ就任要請が行われたのは、今年3月のこと。だが、そのずいぶん前から、話は出ていた。ゴルフのナショナルフェデレーションであるJGAは、2016年リオ五輪後の同年10月に日本プロゴルフ協会会長倉本昌弘の強化委員長、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長小林浩美の同副委員長、丸山茂樹のヘッドコーチのそれぞれ留任を決めた。翌17年、宮里がシーズン限りでの現役引退を発表するとすぐに、倉本強化委員長が引退後の宮里にコーチ就任を依頼することを口にしている。
強化委員長の言葉だけに、すぐにあちこちのメディアに『宮里藍にコーチ就任要請へ』の見出しが躍る。だが、強化委員会で正式に要請が決まったのが、宮里がすべての競技を終えた17年10月のこと。その前にJGAから「コーチ正式要請の一部報道があるが、機関決定されたものではなく本人並びに関係者に正式な要請はしていない」というマヌケなリリースがわざわざ出されていた。このあたりから雲行きが怪しい気配が漂い始める。結局、宮里はコーチ就任を辞退した。
そもそも、リオで女子コーチがいなかったのは「(LPGAの)小林さんから出てこない」(倉本)からだったが、宮里に辞退された今、東京大会はどうするのだろうか。
五輪ゴルフ競技は団体戦でなく、個人戦。その上、すでにそれぞれコーチがいたり、自分の戦い方を持っているプロゴルファーを4年に1度の五輪のために“いじる”わけにはいかない。だったら「コーチ」は何をするのか。東京という“ホーム”開催の有利さを利用し、より戦いやすい環境を整えること。大舞台でのプレーの仕方に慣れさせること。ナショナルフェデレーション(JGA)に不足している部分を補うことなど、仕事はいくらでもある。プロの組織の長である倉本と小林は、そのために入っている。コーチの仕事ができる人間は、必ずしも“名選手”に限らない。役割ごとに違う人間が担う方法だってある。
ビッグネームになればなるほど「利用される」ことは増える。今回の件も、宮里藍という名前を利用したいだけだったように映る。これを鮮やかに蹴った宮里の英断には拍手を送りたい。宮里の辞退コメントを読み直し、コーチの役割と適任者を改めて考える必要があるだろう。女子のコーチが必ずしも女子である必要もないのだが、もし、女子のコーチは「女子プロから」と考えているのなら、小林浩美会長の責任は大きい。東京五輪まであと2年余り。メダル至上主義になるつもりはないが、地元開催の五輪というゴルフの普及には最大のチャンスを生かすために、何をするべきか。根本的なことから考えれば、おのずと答えは出るはずだ。(文・小川淳子)