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打打打坐 第61回【ゴルフウィドウの今昔】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

2021年06月18日

亭主元気で留守が良い……

 
夫がゴルフに夢中になって、家で独りぼっちで過ごす妻のことをゴルフウィドウと呼びます。ウィドウは未亡人のことで、ゴルフのせいで未亡人のようだと同情するニュアンスと、ゴルフにかまけている男性への非難のニュアンスが含まれています。

昭和時代。社長夫人はゴルフウィドウ、というと、同情よりもお世辞的な要素が入っている雰囲気がありました。キンチョーの『タンスにゴン』のCMで使われた「亭主元気で留守が良い」という合言葉は、1986年(昭和61年)の流行語になりました。これは、昭和の終わり頃にゴルフウィドウ事情の変化があった証明と言えます。女性が本音を隠さないでも良い空気が広がり始めたのです。

昭和の終わりに来るバブル期に、日本のゴルフ人口はピークになりますが、このときの女性ゴルファーの人口より現在の女性ゴルファーの人口のほうが多いという統計データがあります。最近では当たり前のシーンである夫婦や恋人同士が仲良くゴルフをしているシーンは、人口がピークだったバブル期でも珍しいシーンでした。ましてや、女性だけの組やコンペなどは見たことがない、という人のほうが多かったと思います。

社用族の交際費で成り立っていた昭和のゴルフは、男性中心の閉鎖的な側面がありました。

ゴルフウィドウの逆襲

昭和の終わりに来たバブル期は、日本のゴルフを良くも悪くも大きく変えました。最大のプラスポイントは、大衆化が促進されたことです。新入女子社員がゴルフをするなんて、少し前なら漫画や映画の中だけの話でしたが、現実になりました。残念ながら、彼女たちはバブル崩壊でゴルフをやめてしまう例が多かったのですが、令和になってゴルフを再開させる一つの流れが生まれつつあります。

女子社員だけではありません。ゴルフウィドウの代表例のように扱われた社長夫人たちやそれに類する女性たちも、ゴルフを嗜むようになりました。平日の昼間に時間を作れる彼女たちは、練習場のレッスンに通い、メキメキと腕前を上げていったのです。

僕の知り合いだけで11人も、この時期に、全く同じ理由でゴルフをやめるという事件が起きました。ゴルフを指導していたはずだった妻が、あっという間に上達して、スコアで負けてしまうようになったのです。多くの夫は、その現実を受け止められませんでした。ベストスコア更新だと喜んでいる妻を祝福できずに、「オレはゴルフをやめる!」とクラブ一式を知り合いに譲ってしまうという何とも滑稽なシーンが多発したのです。男らしさと、情けなさが、表裏一体なのは、今も昔も変わりません。

この話には続きがあって、11人の内、10人は妻に内緒でゴルフを再開しました。会社にクラブ一式とキャディーバッグを置くようにして、宅急便でゴルフコースに送るようにしたのです。ヤマト運輸がゴルフ宅急便を開始したのは、1984年(昭和59年)ですから、時代とリンクをしていました。メンバーになっているゴルフコースに専用のロッカーを年間契約で借りて、手ぶらでゴルフに行けるようにすることが流行ったのも、バブル期の特徴的な現象でした。そう簡単にゴルフはやめられない、というお話です。

男尊女卑の慣習は根強く、ゴルフコースでも女性は肩身の狭い思いをする時代が続きました。女子のロッカールームとお風呂場は狭く、トイレも少ないというインフラ問題も、用具が圧倒的に少ないというハード問題も、平成を経て改善されつつも、昔話と笑えるほどには改善されてはいません。

ステキ女子にゴルフを

仕事とは無関係に純粋な趣味としてゴルフを楽しむ人たちが増えたのは、21世紀になってしばらくしてからで、最近のことです。趣味だからこそ、柵なく、自由にゴルフが楽しめるようになったことで、正常なゴルフに近づいた、と歓迎すべきことです。

ゴルフは特定の人たちの所有物ではなく、老若男女の差別なく楽しめるもので、十人十色のゴルファーの数だけ楽しさが用意されています。

女性ゴルファーが増えていることを個人的には大歓迎していますが、「女はプレーが遅いから、最近は本当に困ったものだ」という偏見を持った男性も、まだまだたくさんいます。女性ゴルファーに負けると、混乱してしまう情けない人が多いような気がします。

酸いも甘いも噛み分けた上で、凄いなぁ、とリスペクトしている女性ゴルファーがいます。彼女は一緒にプレーする男性を見極めて、ゴルフをするのです。この国でゴルフをする以上、それがベターなのだと笑っていますが、女性に負けたら混乱してしまう男性の前では本気のゴルフをしないのです。

我慢している分、全力を出せるときの彼女は解放されてプロ顔負けのゴルフをします。僕はグロスで負けたことが何度もあります。彼女のハウツーが唯一の正解だとは言いませんが、女だからという偏見から脱せない男性に、彼女の爪の垢を煎じて飲んで欲しいです。

彼女だけではなく、他にもたくさんのステキ女子なゴルファーが増えてきたことを誇りに思います。

ステキ女子とは、漫画からドラマや映画にもなった『ホタルノヒカリ』の中で、干物女に対し、理想的な女性を表すものとして使われ、流行した言葉です。容姿・スタイルが良く、上品な女性という大雑把な説明もありますし、「きれい」に「輝き」ながら、「かしこく」「かせぐ」女性という定義もあります。

ゴルファーの資質として最も大事なものは心配りだとルールブックにも明記されていますが、ステキ女子なゴルファーはゴルフの神様に愛されるだけではなく、全てのゴルファーにも愛されると思うのです。

キビキビと体育会系のゴルフを展開しながら、見惚れてしまうようなファッションの女性ゴルファーだけの組でプレーしているシーンを、最近、よくコースで見るようになりました。僕が考えるステキ女子なゴルファーの時代がやって来たのだと、黙って付いていきたくなります。

幸運なことに、僕の妻も、ステキ女子なゴルファーの一人です。彼女たちが、不愉快なことがなく、我慢を強いられることもなく、ゴルフを楽しめるようにするのは、オールドゴルファーの責務だと僕は考えています。

ゴルフのせいで独りぼっちにさせられるゴルフウィドウは、もういないのかもしれません。彼女たちも、クラブとボールを持って、気軽にゴルフが出来る時代になったからです。

女だから、と言う前に、男として、もしくは、ゴルファーとして、やるべきことができているのか? ゴルフを好きだという自覚がある人間であればこそ、常に、自分に問いかけて、戒めたいと思うのです。ステキなゴルファーになる権利は、全ての人に平等にあります。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。

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