メルセデス・ランキングとは? 導入の背景や歴代女王を紹介
国内女子ツアーの頂点に立つ者が「賞金女王」から「年間女王」に変わり、シード権争いもメルセデス・ランキングが指標となって、2024年で3年目を迎えます。メルセデス・ランキングは従来の賞金ランキングより公平性の高いポイント制なのですが、獲得した賞金額というわかりやすい制度ではないので、少し複雑に感じるかもしれません。そこで、メルセデス・ランキングについて、わかりやすく紹介します。ツアー観戦がもっと面白くなるはずです。
配信日時:2024年2月9日 05時30分
1.メルセデス・ランキングとは?
メルセデス・ランキングとは国内女子ツアーの各競技、及び米国女子(USLPGA)ツアーのメジャー競技での順位をポイントに換算し、年間を通じて総合的な活躍度を評価するランキングです。
各年度の国内女子ツアーが終了した時点で、1位の選手には以下が与えられます。
・4年間のシード権
・年間最優秀選手賞(JLPGA Mercedes-Benz Player of the Year)
上位50位までの選手には、以下が与えられます。
・翌年度のシード権
51位~55位の選手には、以下が与えられます。
・翌年度のJLPGAツアーで行われる、第1回目のリランキング(成績に準じて出場優先順位を組み替える試合)の出場資格
なお、ランキング名の「メルセデス」とは、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のオフィシャルパートナーで、JLPGAの活動を包括的にサポートしているメルセデス・ベンツ日本株式会社の名が冠されています。
2.メルセデス・ランキングの導入背景
メルセデス・ランキングが導入された背景には、賞金ランキングに公平性が欠ける点があったことが挙げられます。
賞金額は試合によって大きく異なります。例えば賞金総額が7000万円の試合より2億円の試合で活躍した選手のほうがより多額の賞金を得て、賞金女王争いやシード権争いに有利に働きます。そのため、高額賞金が得られる試合での大どんでん返しもたびたび起こっていました。
なかには、賞金額が国内メジャー大会を上回る試合もあります。つまり、選手に「メジャーより、賞金額が高い試合に出場したほうが得」と判断されれば、公式戦の“格”を下げることにもなりかねない状況だったのです。
このような状況を是正するために導入されたのが、順位をポイント化することで選手の実力がわかりやすく、公平性の高いメルセデス・ランキングです。創設は2012年ですが、賞金ランキングから一気にメルセデス・ランキングへ変えるのではなく、段階的に移行する期間を設けていました。
そのため、毎シーズン賞金女王と年間女王のダブル女王が誕生しており、賞金女王=年間女王ではないケースも生じていました。たとえば2020-21年シーズンの賞金女王は稲見萌寧で、2位が古江彩佳です。しかし、メルセデス・ランキングでは古江彩佳が1位で年間女王となり。2位は稲見萌寧でした。
こうした過渡期を経て、22年、メルセデス・ランキングに一本化されました。国内女子ツアーの頂点に君臨する選手が賞金女王から年間女王になり、シード権争いも賞金ランキングではなく、メルセデス・ランキングの順位が対象になったのです。
3.メルセデス・ランキングの計算方法
JLPGAツアーの各競技で決勝ラウンドに進出した選手に、順位に応じたポイントが加算されます。実際には70位までのポイントが定められていますが、ここでは10位までを表で紹介します。
【ポイント配分テーブル】
順位 | 3日間競技 | 4日間競技 | 国内公式競技 | USメジャー競技 |
---|---|---|---|---|
1位 | 200 | 300 | 400 | 800 |
2位 | 120 | 180 | 240 | 480 |
3位 | 90 | 135 | 180 | 360 |
4位 | 70 | 105 | 140 | 280 |
5位 | 60 | 90 | 120 | 240 |
6位 | 55 | 82.5 | 110 | 220 |
7位 | 50 | 75 | 100 | 200 |
8位 | 47 | 70.5 | 94 | 188 |
9位 | 44 | 66 | 88 | 176 |
10位 | 41 | 61.5 | 82 | 164 |
公式競技を除く4日間競技のポイントは、3日間競技の1.5倍、公式競技のポイントは3日間競技の2倍です。ちなみに、公式競技とは「日本女子プロゴルフ選手権大会」「LPGAツアーチャンピオンシップ」「LPGAウィメンズチャンピオンシップ(サロンパスカップ)」「日本女子オープンゴルフ選手権」の4試合のことを指します。
米国女子ツアーのメジャー大会での順位も、ポイントに加算されます。そのため、国内女子ツアーに出場ではなく米国女子ツアーのメジャー競技に挑戦する選手にも、年間女王となるチャンスがあるのです。ただし、LPGAツアーのシード選手であること、前半出場権保持者であることなどの制約はあります。
なお、決勝ラウンド進出者が70名以上の場合、70位以下のポイントは一律同ポイントとなります。
4.メルセデス・ランキング歴代年間女王
メルセデス・ランキングは、創設された2012年から集計されています。以下がその一覧です。
【メルセデス・ランキング歴代年間女王一覧】
シーズン | ポイント | 選手名 |
---|---|---|
2012年 | 571.5 | 全美貞(韓国) |
2013年 | 556.5 | 横峯さくら |
2014年 | 549.5 | アン・ ソンジュ(韓国) |
2015年 | 769.5 | イ・ ボミ(韓国) |
2016年 | 623 | イ・ ボミ(韓国) |
2017年 | 500.5 | 鈴木愛 |
2018年 | 598.5 | 申ジエ(韓国) |
2019年 | 555.5 | 渋野日向子 |
2020-21年 | 3,845.16 | 古江彩佳 |
2022年 | 3,441.28 | 山下美夢有 |
2023年 | 3,117.19 | 山下美夢有 |
12年に年間女王の称号を手にした全美貞は同年、賞金ランキングでも1位となり、賞金&年間女王となりました。
しかし、創設当時からしばらくは従来同様、賞金ランキングによる賞金女王争いがメインで、メルセデス・ランキングNO.1の座をかけた年間女王争いは存在感の薄いものでした。
その後、シード権付与の基準に賞金ランクとメルセデス・ランキングを併用した20-21年シーズンを経て、メルセデス・ランキングの本当の幕開けとなった22年、山下美夢有が初代年間女王として、輝かしいスポットライトを浴びたのです。
5.まとめ
選手の本当の力量がランキングに反映されやすいメルセデス・ランキングは、まさに実力勝負の世界。選手にとって高額賞金はもちろん大きなモチベーションになりますが、選手の力量が直接ランキングに反映されやすいメルセデス・ランキングは、まさに実力を表すランキングです。国内ツアーを留守にしていても年間女王争いに加われるため、海外への挑戦意欲も増すことでしょう。
メルセデス・ランキングはALBA Netでも更新していますので、ぜひチェックしてみてください。国内ツアー、米国ツアー問わず、選手たちの活躍を見守っていきましょう。