【記者の目】SLEルール施行後10年、なぜか増える平均300ヤードヒッター。世界基準はどうなってる?
【記者の目】SLEルール施行後10年、なぜか増える平均300ヤードヒッター。世界基準はどうなってる?
配信日時: 2018年9月13日 06時06分
2017年は世界中のツアーで平均飛距離の大幅な伸びを記録した。では、2018年も終盤に近づく中、今どうなっているのだろうか? 既報のように、ウェブドットコムツアー(米国下部)の飛ばし王、キャメロン・チャンプの平均342ヤードといった途轍もないデータもあるが、まずは【平均300ヤード以上】といった基準で男子ツアーを見てみたい。
■平均300ヤード以上が“当たり前”の世界の男子ツアー
○米国男子 2016年…27人 2017年…40人 2018年…61人
◎米国下部 2016年…48人 2017年…87人 2018年…101人
◎欧州男子 2017年…46人 2018年…97人
▲日本男子 2016年…2人 2017年…2人 2018年…9人
なんと、今季の米国下部ツアーでは、平均300ヤード以上を記録した人数が148人中101人。その人数は3年前の倍以上で、実に出場する3人に2人以上が平均300ヤード以上の飛距離を持つ状況になっていた。また、PGAツアー(米国男子)でも194人中61人が記録。こちらも3年前より人数が倍以上。
欧州男子ツアーは、昨年よりも倍以上の人数を記録(254人中97人)。ただし、欧州と日本男子に関しては、試合出場数の少ない選手のデータもスタッツに記録されるため、試合出場数を平準化すればもう少し人数は減るはず。こう見ると、日本男子も2人から9人に増えてはいるものの、母数の少なさが目につく結果となっている。
■平均280ヤード以上が微増の米国シニア
・米シニア 2016年…26人 2017年…26人 2018年…30人
米国シニアツアーでは、記録の残る65人中、30人が平均280ヤード以上を記録している。毎年さほどドライビングディスタンスに変化のない同ツアーだが、それでも微増傾向が見て取れる。最新ドライバーやシャフト、ボールを使用しても、“微増”にしかならないのは、ハードなトレーニングとスイング改造に難があるからなのだろうか…。
■平均250ヤード以上が“当たり前”の米国女子ツアー
○米国女子 2016年…96人 2017年…96人 2018年…105人
▲日本女子 2017年…6人 2018年…7人
今季の米国女子ツアーでは、平均250ヤード以上の人数が、165人中105人。3人に2人が平均250ヤードを越え、昨季よりも9人増えている。この平均250ヤード以上という数字を日本の女子ツアーと比較すると、こちらも日本男子同様、寂しい結果となった。
もちろん、飛距離が全てだと言うつもりはない。だが、明らかに世界の潮流は、男女ともにディスタンスゲーム化が進んでいると言えるだろう。世界を目指すならば、ある一定の飛距離をクリアした上で、それ以上の技術の勝負をしなければならないのが現状だ。日本ツアーは男女ともに世界の潮流から大きく遅れていると言わざるを得ない。
■松山英樹、畑岡奈紗……、この時代に世界と伍する価値
「2018ディスタンスレポート」が来年出るなら、急激に伸びた「2017」をさらに上回る結果が予想できる。そして、R&AやUSGAにとって心中穏やかではないだろう。ゴルフの伝統を重んじ、ルールを決める同団体にとって、ツアープロの飛距離増は看過できない問題だ。
フェースのスプリング効果を制限する「SLEルール」が施行されて10年目のシーズン。高反発クラブを禁止してからの8年間は、したり顔だったR&AとUSGAからすれば「なぜだ!」と叫びたいところだろう。ボールもクラブも反発性能を厳しくルールで縛った上でも伸び続けるツアープロの飛距離…。ある意味、痛快ですらある。
先日ダスティン・ジョンソンが、ジャック・ニクラスが当時使っていたパーシモンドライバーで、キャリー290ヤードを放った。壊れないように軽く振った結果だという。パーシモンのCT値は現代の最新クラブより低いはずだが…。そう、ギアをルールで規制しても、プロの努力は規制できないのだ。
昨季からの飛距離アップの要因について、「クラブやボールの恩恵だ」「シャフトの軽量化だ」「いや、弾道計測器の恩恵だ」と言う人もいれば、「トレーニングの成果だ」、「スイング研究が進んだからだ」と言う人もいる。
もはや、どれが原因かなど判別不能。それら全てが影響した結果であり、間違いなく選手と周囲の関係者の努力の賜物。この流れを止めるには“飛ばないボール”を導入するしかないだろう。R&AやUSGAも、選手の努力を規制できるはずがないのだから。そして、このディスタンスゲーム時代に世界と伍して戦う松山英樹、畑岡奈紗の価値の高さを改めて感じるのである。
Text/Mikiro Nagaoka
■平均300ヤード以上が“当たり前”の世界の男子ツアー
○米国男子 2016年…27人 2017年…40人 2018年…61人
◎米国下部 2016年…48人 2017年…87人 2018年…101人
◎欧州男子 2017年…46人 2018年…97人
▲日本男子 2016年…2人 2017年…2人 2018年…9人
なんと、今季の米国下部ツアーでは、平均300ヤード以上を記録した人数が148人中101人。その人数は3年前の倍以上で、実に出場する3人に2人以上が平均300ヤード以上の飛距離を持つ状況になっていた。また、PGAツアー(米国男子)でも194人中61人が記録。こちらも3年前より人数が倍以上。
欧州男子ツアーは、昨年よりも倍以上の人数を記録(254人中97人)。ただし、欧州と日本男子に関しては、試合出場数の少ない選手のデータもスタッツに記録されるため、試合出場数を平準化すればもう少し人数は減るはず。こう見ると、日本男子も2人から9人に増えてはいるものの、母数の少なさが目につく結果となっている。
■平均280ヤード以上が微増の米国シニア
・米シニア 2016年…26人 2017年…26人 2018年…30人
米国シニアツアーでは、記録の残る65人中、30人が平均280ヤード以上を記録している。毎年さほどドライビングディスタンスに変化のない同ツアーだが、それでも微増傾向が見て取れる。最新ドライバーやシャフト、ボールを使用しても、“微増”にしかならないのは、ハードなトレーニングとスイング改造に難があるからなのだろうか…。
■平均250ヤード以上が“当たり前”の米国女子ツアー
○米国女子 2016年…96人 2017年…96人 2018年…105人
▲日本女子 2017年…6人 2018年…7人
今季の米国女子ツアーでは、平均250ヤード以上の人数が、165人中105人。3人に2人が平均250ヤードを越え、昨季よりも9人増えている。この平均250ヤード以上という数字を日本の女子ツアーと比較すると、こちらも日本男子同様、寂しい結果となった。
もちろん、飛距離が全てだと言うつもりはない。だが、明らかに世界の潮流は、男女ともにディスタンスゲーム化が進んでいると言えるだろう。世界を目指すならば、ある一定の飛距離をクリアした上で、それ以上の技術の勝負をしなければならないのが現状だ。日本ツアーは男女ともに世界の潮流から大きく遅れていると言わざるを得ない。
■松山英樹、畑岡奈紗……、この時代に世界と伍する価値
「2018ディスタンスレポート」が来年出るなら、急激に伸びた「2017」をさらに上回る結果が予想できる。そして、R&AやUSGAにとって心中穏やかではないだろう。ゴルフの伝統を重んじ、ルールを決める同団体にとって、ツアープロの飛距離増は看過できない問題だ。
フェースのスプリング効果を制限する「SLEルール」が施行されて10年目のシーズン。高反発クラブを禁止してからの8年間は、したり顔だったR&AとUSGAからすれば「なぜだ!」と叫びたいところだろう。ボールもクラブも反発性能を厳しくルールで縛った上でも伸び続けるツアープロの飛距離…。ある意味、痛快ですらある。
先日ダスティン・ジョンソンが、ジャック・ニクラスが当時使っていたパーシモンドライバーで、キャリー290ヤードを放った。壊れないように軽く振った結果だという。パーシモンのCT値は現代の最新クラブより低いはずだが…。そう、ギアをルールで規制しても、プロの努力は規制できないのだ。
昨季からの飛距離アップの要因について、「クラブやボールの恩恵だ」「シャフトの軽量化だ」「いや、弾道計測器の恩恵だ」と言う人もいれば、「トレーニングの成果だ」、「スイング研究が進んだからだ」と言う人もいる。
もはや、どれが原因かなど判別不能。それら全てが影響した結果であり、間違いなく選手と周囲の関係者の努力の賜物。この流れを止めるには“飛ばないボール”を導入するしかないだろう。R&AやUSGAも、選手の努力を規制できるはずがないのだから。そして、このディスタンスゲーム時代に世界と伍して戦う松山英樹、畑岡奈紗の価値の高さを改めて感じるのである。
Text/Mikiro Nagaoka