全米オープン3日目、トーマスが大爆発!
「丸山くん、270ヤード以上をスプーンで毎回乗るか乗らないかをやらなきゃいけないなんて、もう、考えただけで疲れちゃうよな」(青木功)
「667ヤードを2オンしてイーグルですよ!? もう、パー5が700ヤード必要になる時代が目の前に見えていますね。ボク、この時代に生まれなくて良かったぁ〜。(トーマスだけではなく、PGAツアー全体の飛距離増に)いやぁ、すごい時代になりました。ひと昔前のテレビゲームの世界ですよ」(丸山茂樹)
「丸山さん、一般アマチュアはどうしたらいいんですかね……」(戸張捷)
2人のレジェンドがこう素直な感想を漏らすのも無理はない。トーマスの667ヤードのイーグルはマグレでもなんでもないのだ。青木功がコメントを漏らしたのは松山英樹が14番(288ヤード・パー4)で3Wのティショットでショートしたことを嘆いたもの。このホールでトーマスは同じ3Wでグリーン奥に付け、バーディを奪っている。
「3Wで300ヤード近くを普通に狙えるんですね」。丸山のコメント通り、これがトーマスの普通の感覚なのだ。
1Wは44.25㌅の短尺。3Wもロフト15度。痩身の178cmでなぜ飛ぶ!?
この日の667ヤードのイーグルをギアからひも解こうにも、なかなか無理がある。というのも、男子プロだと3Wのロフトは13.5度や13度のものを使用する選手も多い中、トーマスのロフトは15度。タイトリストのウッドは適正スピンで打ちやすい、きっちりキャリーを出せるタイプで、他社のようにやみくもに低スピンを狙う設計でもない。
また、使用ボールがもし『Pro V1』なら『Pro V1x』よりも低スピンなため、距離が出るのも分かるのだが、トーマスの使用球は後者の方だ。17年モデルのクラブはR&AのSLEルール改訂でインパクトエリア外の反発が良くなっていることを考えても、明らかにギアから飛距離を説明するには無理がある。
攻撃的なプレースタイルと、ジャンプアップ&アドレナリンが飛距離の源!?
これは、彼特有のジャンプアップによるものだと思われる。PGAツアーウォッチャーで、元A級ティーチングプロのトシ平田氏もこういう。
「ジャスティン・トーマスやジョン・ラームというのは、若手ならではのプレー面が“子供”ですね。感情をそのまま出してしまうスタイルで、乗り出したら手がつけられない半面、我慢比べのような忍耐力にかけるところがある。トーマスの飛距離の源は、両足カカトが離れるくらいのジャンプアップにあります。ウッドなどの長い番手では激しくジャンプアップして、その他のコントロールする番手ではジャンプアップせずに打ちます」(トシ平田)
⇒Toshi HIRATA★究極のレッスン第2回/ジャンプアップするとなぜ飛ぶ?(床反力打法の真実)
スイング中にカカトが浮くほどのジャンプアップをするということは、強烈なアッパーブローを導く要素にもなり得る。そのため、ヘッドの動く方向とボールの飛び出すベクトルが一致するため、インパクト効率が著しく高くなるため、距離効率が3位なのではないだろうか。
「ああいう感情のままにプレーするタイプは、ゾーンに入るというか、ピンしか見えない状態になると強い。乗り出したら手がつけられない。アドレナリンの影響も、もちろんあると思います」(トシ平田)
確かに、トーマスのこれまでの勝ち方は、20アンダーをはるかに越える、ぶっちぎりの一人旅が多かった。アドレナリンにより人外の飛距離を叩き出し、ピンしか見えずに攻めまくるスタイル。忍耐力を試されるメジャーにおいて、このスタイルが最終日も通用してしまうのか。明日はどうなるのか、目が離せない。
Text/Mikiro Nagaoka