実録‐‐ヤマハゴルフ、大型契約の裏にあったもの
2017年、ヤマハゴルフが大きく動いた。 藤田寛之、谷口徹、野村敏京、大江香織という既存の契約プロに加え、大山志保、有村智恵、今平周吾、ユン・チェヨンらを獲得。 近年にない大型移籍の裏には何があったのか。 当時、ゴルフHS事業推進部マーケティンググループ グループリーダーだった吉田信樹の証言。
配信日時: 2017年2月27日 11時00分
「われわれが有村プロに注目したのは、2016年4月に熊本地震があり、彼女が復興への協力も含めて日本に戻ってプレーするという意向を聞いたときですね」
ヤマハゴルフが抱えるブランドの一つ・inpresは、“昔飛んでいた飛距離を取り戻してもらいたい”というコンセプトのもとに2003年に立ち上がり、そして現在はその飛距離性能を、合理的にゴルフを楽しむ「スマートゴルファー」へ提供している。日本での復活にかける有村の姿が、ターゲットゴルファーのマインドにぴったりマッチすると考えた。
最初のテストは6月初旬、東京都内の練習場で行われた。
「いきなりボールを打ってもらうのではなく、いかにinpresのブランド戦略と有村プロの方向性がマッチしているかをじっくり話しました。これに対して有村プロからは、初めてこんなプレゼンを受けましたという言葉をいただいたのです。正直、その日のテスト自体は可もなく不可もない状態に近かったかもしれませんが、有村プロとともに歩んでいきたいという熱意は伝わったと感じました」
その後、彼女の要望を選手スタッフと開発スタッフがスピード対応しながらコーステストを数回重ね、最終的にマネジメント会社から「契約」の返事をもらったのは、有村がキャンプのため渡米した後の1月末のことだった。
「プロの場合、クラブを替えることには少なからず抵抗があります。それでも決断していただいた理由は、クラブに対する要望に迅速に対応できたことと、ブランドプレゼンを含む熱意にあったと信じています。米国キャンプ中に最終のクラブテストを行いましたが、実際に試合でinpresを使うことはなくRMXかもしれない。それでもわれわれの戦略と有村プロの再起ロードは一緒だと考えていますし、日本で優勝を飾るようになったらinpresのブランドイメージから次に進んでいただければとも考えています」
さらにもう一人、女子プロで大型選手がヤマハゴルフの一員となった。韓国では美人ゴルファーとして人気を誇り、昨年のQTを突破して今年から日本女子ツアーに参戦するユン・チェヨン(29歳)だ。
「彼女の場合、韓国の販売店と契約していたのがきっかけです。絶対に日本でも契約したほうがいいというアドバイスや、2年連続でヤマハレディースに出場という縁もありました。昨年のヤマハレディースは最終日最終組。実力、ルックスを兼ね備え、今年の日本女子ツアーで話題の一人のなりますよ」
こうして2017年のヤマハゴルフに、新しく3人の女子プロが加わることになった。