アジアゴルフ紀行
タイで見つけたスゴい人! お坊さんでプロゴルファー兼日本人向けプロテストのオーガナイザーは、プロの試合も手がける
ご実家は浄土宗の由緒あるお寺で、長男であるからして普通の流れだったらその後継。ところが人生なんて、やはり何が起きるかわからないのである。
配信日時:2024年3月12日 08時29分
中村映禅さんは、バンコクで活躍するゴルフのティーチングプロであり、現在はTSPGA(タイシニアプロゴルフ協会)のトーナメントプロでもある。そして、映禅さんにはもう一つの肩書きがある。それは僧侶、つまりお坊さん。ご実家は浄土宗の由緒あるお寺で、長男であるからして普通の流れだったらその後継。ところが人生なんて、やはり何が起きるかわからないのである。
映禅さんとタイの最初の出会いは25年前のこと。僧侶の研修旅行でタイを訪れたのだが、それまでは特にこの国に思い入れがあったわけではない。ところが来てみると未曾有のゴルフ大国。高校時代からゴルフをやっていた映禅さんの心は大きく揺さぶられた。以来度々タイを訪れていたのだが、大きな転機が35歳の時に訪れたのだ。僧侶としての修行を終え、タイでQT(クォリファイングトーナメント/予選会)を受ける機会があってそれを見事通過。こうなるとますますゴルフを諦めることができなくなり、ついにご両親に「少しの間、仏門を休ませて欲しい」と直談判。それが許されて、タイを拠点にしたアジアンツアー参戦などと映禅さんの夢は広がっていった。
そうしてプレーヤーとして走り始めようとしていた時、思いがけないことが起きた。それは立松里奈というスーパージュニアとの出会いだ。映禅さんはその子を一目見て「世界一のジュニアに育ててみたくなったんです。日本にいる時から“中村はコーチの方が向いているよ”とよく言われていました。それがすごく嫌だったんですが、やっぱりコーチ魂に火がついたというわけです」。結果、本当に彼女を世界一のジュニアにしたからすごい(2016年IMGA世界ジュニア優勝)。
そして2023年、さらに大きな転機が訪れた。「TSPGAとタイアップして、日本人がタイでシニアプロテストを受けるためのオーガナイザーになれたんです。僕自身も50歳と節目を迎える年でしたから、それもきっと何かの縁。必死に動きました。その結果、“ZEN SENIOR CHAMPIONSHIP 2023”も初開催。僕もシニアプロとしてデビューして、最初の大会では2位に入れたので、まだまだいけるな!と手応えのようなものもつかめました」。
2024年2月には3回目となるTSPGAのシニアプロテストが開催され、テストの後には日本からも錚々たるシニアプロが参加するトーナメントも行われる。僧侶とプロゴルファーという異色の“二足のわらじ”を履く映禅さんは、最後にもう一つの夢を語ってくれた。「いつかこのタイのどこかに日本式のお寺を建てるのが長年の夢。それは人生とゴルフとタイを繋ぐ集大成のようなもの、期待していてください」。
Profile
1973年、浄土宗の寺、奈良県西迎院の長男として生まれる。京都佛教大学卒業後に浄土宗僧侶の資格とPGAティーチングプロの資格を取得。 2008年にはゴルフレッスンの場としてバンコクへ本格的に移住。独自のスイング理論(ZENメソッド)とコーチング理論で、初心者とジュニアの育成に注力。世界ジュニアチャンピオンを創出後、「Zen Golfer’s Factory」を2013年に設立。2019年にはLegacy Golf Club内に選手育成からプロティーチングまで対応できる「Zen Golfer’s Academy」も開設。2023年にはタイシニアプロテストのオーガナイズを開始し、「ZEN SENIOR CHAMPIONSHIP」も開催。2024年2月には「SUNWARD SENIOR CHAMPIONSHIP ZEN CUP 2024」の開催を実現させた。
<SUNWARD SENIOR CHAMPIONSHIP ZEN CUP 2024の結果>
2月21日〜23日にかけて行われたタイシニアプロテストでは、日本人の佐野学さんが見事合格。また、同日程のテストに不合格だった中村敦さんは実技再テスト枠からの敗者復活戦で合格に返り咲いた。
そして、28日〜3月1日には、「SUNWARD SENIOR CHAMPIONSHIP ZEN CUP 2024」が開催された。塚田好宣、藤田寛之、倉本昌弘、平塚哲二、桑原克典、横田真一、横尾要、加瀬秀樹、甲斐範昭、奥田靖己、芹澤信雄など錚々たるプロがタイに集結。あのプラヤド・マークセンをはじめとした地元のプロと共に戦いに挑んだ。同トーナメントには、今回のプロテストに合格した二人の日本人シニアも出場して、素晴らしい体験を果たした。
トーナメントの結果は、優勝がタイのタマヌーン・スリロット(−16)、2位がタイのウドン・ディオンディーチャー(-10)、日本勢は5位に藤田寛之(−5)と塚田好宣(-5)、10位に倉本昌弘(−3)、平塚哲二(-3)、桑原克典(−3)が入った。
プロテストに合格した佐野学さんと中村敦さんはトーナメントへ出場するという夢を叶えたわけだが、中村敦さんは最終成績+8で44位に入り賞金も獲得。これからシニアプロを目指す人たちへ大きな「希望」と「勇気」を与えてくれた。
次回の第4回タイシニアプロテストは8月20日(火)から3日間で実施予定。興味のある人は、ぜひ「Zen Golfer’s Factory」に問い合わせしてほしい。
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