やさしいクラブって何だ!?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はやさしいクラブとは何か、という本質的なお話。
配信日時:2023年11月22日 03時11分
みなさん、やさしいクラブという言葉を聞くと、どんなクラブをイメージしますか? 10人に聞いたら10人同じ答えが返ってくるわけではありません。加齢で体力が衰えてきたからといって、万人に合う〝やさしい〟は存在しないと思ってください。
人間の恋愛を想像してください。「あの人やさしいから」という理由でお付き合いをすることは、よくあると思います。しかし、実際にお付き合いを始めると、自分と合わないこともありますよね。QPは恋愛に関しては、経験豊富ではありませんが、何度かそんな苦い思いをしたことがあります(涙)。
結局、やさしいという表現がぼやっとしていて、曖昧なんですよね。それは人生もゴルフクラブも同じです。
たとえば、ピンのドライバーもマジェスティのドライバーも、みんな〝やさしい〟と表現されますが、その質は全然違うものです。その違いは、設計の仕方にあります。
マジェスティは、アマチュアの悩みで圧倒的に多いスライスを止めるために、フェースが返るようにするにはどうしたらいいのかと、フェースが返りやすいことにやさしさを求めています。一方、ピンが求めるやさしさは、アマチュアはサイドスピンが多いから、慣性モーメントを高めて前に前に突き抜けるようにして、曲げ幅を抑えるようという考えです。ピンだけでなく慣性モーメントの高いクラブは、スライスもフックも両方の球筋の曲がり幅を抑える狙いであり、ミスヒットにも強くなります。
さらに、ゼクシオが代表的ですが、アマチュアはキャリーが出ない低弾道のため飛距離が出ずに悩んでいる人が多い。そこで楽にボールが上がってキャリーが出せるような設計をしています。ボールが上がることを〝やさしい〟としています。
ドライバーの場合、大きく分けると、この3つのが〝やさしい〟の定義といえます。同じやさしいでもそれぞれ性格が違うんですよ。3つの定義を簡単にいうとつかまるドライバー、球が上がりやすいドライバー、ミスヒットに強いドライバーと分けられます。自分の求めるやさしさを間違えると、かえってゴルフが難しくなります。
例えば、明治の大砲のように体重が右に残るスライサーの方が、やさしいクラブを使いたいといってボールが上がりやすいゼクシオなどを選ぶと、余計にボールが上がって飛距離ロスしてしまう。また、もともとつかまりが強いフック系の方が、マジェスティを使うと、フックではなくチーピンしか出なくなることもあります。
最近のドライバーは、それぞれ方向性を定めてつくっているので、どういうやさしさかを見極めるのが大切です。スライスに悩んでいる方はフェースが返りやすいやさしさを求め、弾道を高くしたい方は上がりやすいやさしさを求めてください。
また、最近は慣性モーメントの高いドライバーが増えています。ミスヒットに強く、両方の曲がりのスピン量を抑える効果がありますが、一般論として、つかまる方向にはもっていきにくいものです。やはり自分のスイングでつかまえることができる人に適しています。
人それぞれ、同じスライスでも曲がり幅やつかまり具合いは違います。自分のスイングや球質を理解して、どんなやさしいクラブが合うかを探してみてください。人間関係もゴルフクラブもしっかりと見つめ合って、相乗効果で長いお付き合いができるのがベストですね。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
QPのギアマニュアル