打打打坐 第31回【ゴルフシューズは語る】 | ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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打打打坐 第31回【ゴルフシューズは語る】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

2020年11月13日

ゴルフシューズの今昔

 
スタート直前。ティーの脇にとめたカートから降りながら、片足ずつ、ワイヤーを閉めるボタンをロックして、ダイヤルを回します。いつものスタートのルーチンですが、唐突に、シューズについて思い起こしました。

『僕が最後に紐のゴルフシューズを履いてゴルフをしたのは…… いつのことだろう?』

紐のシューズを使用していた頃は、ロッカーでシューズを履き替えて、紐を締めるのが、ゴルフがスタートするスイッチでした。いつの間にか、その儀式は、スタート直前にボタンをロックする方法に変わりましたが、足下からゴルフが始まるルーチンはオススメです。

2013年に、僕は十数年ぶりに、ゴルフシューズを3足も購入しました。全て紐のシューズでした。その年の春に発売されたゴルフシューズが、痛めている膝にとても良くて、マークダウンしてから予備にということで2足買い足して、3足になったのです。

実は、今でも、その内の2足は履くことがあります。ゴルフコースでの取材時やイベントなどでプレーしないときに使用します。長持ちなわけではなく、単純に、その2足はコースデビューせず、履いた回数が少なく、未だに新品のような状態だからなのです。

2014年の春に出たそのシューズの後継機種は、ワイヤーシステムを採用していましたが、より快適で、こちらがエースシューズになってしまいました。予備のシューズは、サブシューズとして活躍を始めたのです。それ以降、2年間履いたシューズが一つだけありますが、それ以外、ゴルフシューズは毎年新調しています。

もっと振り返ってみれば、ゴルフデビューした昭和53年(1978年)頃は、本革のゴルフシューズを履いてゴルフをすることが多くのゴルファーの憧れでした。この頃の本革のシューズは、高額で、一生モノとされていました。ソールまで革を重ねて作られたシューズは、革が傷むと、交換修理に出すことが可能だったのです。アッパー交換、ソール交換をしていけば、死ぬまで履けるというシューズは、まさにブランドの象徴であり、ゴルファーのプライドも満たしました。

歩きのゴルフしかしたことがないゴルファーが9割を越えていた時代でしたから、本革のシューズの足に馴染むことで生まれる歩きやすさや疲れにくさという機能は、人工皮革のシューズでは補えないものだったという事情もあったのです。

僕は、初ラウンドから、本革のシューズを与えられていて、その機能性の高さを当たり前だと思いながら、21世紀になるまで、人工皮革のシューズを履いたことがありませんでした。

ゴルフシューズのソールも変化しました。

第二次世界大戦後に、戦車の厚い装甲を打ち抜くために開発した硬い金属の使い道の選択肢の一つだったのが、ゴルフシューズのソールに棘状の金属スパイクを付けるということでした。ネジ式で交換できるスパイク鋲は、米国から世界中に広まり、20世紀末までゴルフシューズのスタンダードになりました。

機能優先ではなく、素材の使い道として普及した金属スパイクには、芝生を痛めやすかったり、クラブハウスの絨毯の寿命を異常に短くするなどの欠点がありました。20世紀末に、次世代のシューズとして、一時的に、ゴム底で鋲が交換できないスパイクレスシューズが流行しましたが、まだ少し時代が早かったのか、金属製のスパイクの弱点を補う機能を持った樹脂製で交換可能なスパイクが装着されたソフトスパイクシューズが、ゴルフシューズのスタンダードになりながら21世紀になったのです。

現在は、大手の各ゴルフメーカーは、フラッグシップモデルをスパイクレスシューズにしています。素材や形状などの開発が進み、ソフトスパイクの機能を上回るようになったことと、カートに乗ってプレーする際に、ゴム底のシューズが圧倒的に楽だったりすることも普及の理由のようです。

2020年の春から、僕もスパイクレスのシューズを愛用していて、大いに満足しています。

ゴルファーは足元を見られる

江戸時代。旅人の足下を見て、疲れ具合を見抜き、宿場や駕籠かきが法外な値段を要求することがあったから、相手の弱みにつけこむことを“足元を見られる”というようになったそうです。

現在。ゴルファーのゴルフシューズを見て、損得が発生することはありませんが、ドレスコードが厳格なゴルフコースに行けば、クラブハウスの入り口で、スニーカーやサンダルなどの履き物での入場を拒まれることはあります。スパイクレスのシューズが流行したせいで、ゴルフシューズでの来場は御法度にしているゴルフコースもあります。

シューズは多弁です。靴なんて履ければ良いからと、きれいにするところまで気が回らない人は余裕がない人間で、履き物をいつもきれいしていると余裕がある人間だという判断基準があります。営業の部署にいた頃に、上司は口癖のように、清潔感の基本は足元だ、と言っていました。好印象は、下からということなのかもしれません。

ちなみに、家からゴルフシューズを履いて来ることを禁じているのは、コース内の芝生に外からの雑菌などを持ち込まれないための防衛策なのだそうです。履き替えることを強制して、ロッカー代を稼ごうとしているセコい決まりだと怒っている人がいますが、そんな発想が出来ることも、同じぐらいセコいような気がして滑稽です。

少し話が逸れますが、16歳のときに、人生が変わるぐらいの大恋愛をしましたが、そのきっかけは、彼女が学校の下駄箱の前で上履きに履き替えている僕にいった一言でした。

「君のローファーは、いっつも、ピカピカだね」

理由は長くなるの割愛しますが、僕は当時、毎朝、ローファーを磨いてから登校していました。運動靴しか履かなかった中学生から高校生になった証である革靴を磨くのが好きでした。だから、友人たちの足元が気になっていましたが、誰1人として、僕のローファーがピカピカだと気が付かないことに、ほんの少し不満を持っていたのです。

『わたしは見ているよ。知っているよ』という人間がいたことにドキッとして、そのまま彼女のことをもっと知りたい、という気持ちになりました。

現代人は多忙だから、足元に気を配ってなんていられない、という意見もあります。否定はしません。でも、僕の先輩で面白い人がいます。

ゴルフの行き帰りには、舶来の本革製のドライビングシューズ(車を運転しやすいように踵やソールなどに工夫がある靴)を履いて、車の運転を楽しんで、ゴルフシューズもお気に入りの物でプレーすることで、足元でもゴルフを楽しんでいるというのです。

ドライビングシューズは、ゴルフの時以外は履かないので、無駄かもしれないないけれど、家の玄関で、そのシューズを履く瞬間からゴルフが始まるのだ、という先輩は、笑顔で、ピカピカ輝いて見えるのです。

この先輩は、大きな企業の役員をしていますが、普段はオシャレどころか、あまり服装に気を遣っていないように見えます。だから、面白いのです。「ゴルフの時は、別人なのが好ましい」というのも、その先輩の言葉です。

足元にも、ゴルフであれば、いくつもの物語があり、それらを個別に発信して楽しむことが可能なのです。

ゴルフシューズは15本目のクラブになる

僕は3ホールだけ裸足でゴルフをしたいことがあります。(厳密には靴下は履いていました)

20世紀末にあったスパイクレスシューズのブームの最中、スパイクレスシューズをエースシューズにしていたのですが、ある試合の出場条件の中に『スパイクシューズ以外でのプレーはできません』というものがあったのです。(当時の僕は、バリバリの競技ゴルファーでした)

それまで履いていた本革のシューズは、欲しいという人がいて、売ってしまったので手元にありませんでした。臨時のシューズだから安い物で良いだろうと、安価な本革のシューズを買って、足に慣らすためにプライベートなラウンドでデビューさせたのです。今までなら、赤くなる程度で済んでいたはずなのに、踵が裂けてしまって、出血が酷いとわかったのは残り3ホールでした。

シューズを脱いで、応急処置をしましたが、改めてシューズを履くのは無理でした。シューズをバッグにぶら下げて、裸足でのプレーが始まったのです。ビックリしたのは、ボールが飛ばないことと、方向も安定しないことでした。でも、芝生が想像以上にチクチクすることや、足が芝生の中に埋もれるように沈むことなど、知らなかったことを知って、けっこう楽しめたのです。

その経験から、ゴルフシューズはゴルファーを支える重要なアイテムだと考えるようになりました。

そこまでの意識をしていなくとも、ゴルファーの多くは、ゴルフシューズに何らかのこだわりを持っています。僕は、白いシューズしか履きません。最初に与えられたシューズが白かったこともありますが、黒や茶色のシューズだと、グリーン上でパットするときに、違和感があって集中できないのです。ボールの位置や、振り幅にも影響するような気がします。

更新されるこだわりもあります。長年、ゴルフシューズはある程度の重量があったほうが良いと考えていました。アドレスが安定するし、歩くのにも疲れにくいと感じていたからです。

しかし、今年、新しく発売されたスパイクレスシューズは、軒並みかなりの軽量なのです。騙されたと思って履いてみると、これが百聞は一見にしかず、だったのです。
アドレスが不安定になることはなく、歩きにくくなることもなく、プレー後の疲れは半減しました。ゴルフシューズは重いほうが良いというこだわりは、軽くてもその人に合っていれば良い、と更新されました。

様々な事情があって、現在、僕は2足のスパイクレスシューズを使い分けて履いています。一つのシューズは、裸足でゴルフをしているような感覚で、本当に楽です。疲れ知らずのラウンドができます。また、斜面でのグリップ力も、昔のスパイクシューズのように強力です。非常に高性能なシューズです。

もう一つのシューズは、履き心地は最高で、歩きやすいのですが、先程のシューズよりプレー後の疲労感があります。しかし、飛距離が少し出るのです。ショットの精度も、ほんの少しですが上がるのです。スイング中に足を安定させてくれるようです。

若い頃の僕であれば、何も迷わずに、後者を選んだと思いますが、2020年の僕は、ケースバイケースでの使い分けを選択しました。それは、ゴルフシューズが、15本目のクラブになると知っているからです。

ゴルフという旅の道連れであるクラブのセッティングが重要なのは書くまでもありません。旅に合わせて、荷物を出し入れするのは、旅慣れている人であれば当たり前のことです。2足のエースシューズ体制でゴルフをするのは初めてですが、なかなか快適です。

スパイクレスシューズは、鋲の交換が出来ないので、ソールが減ってしまったら寿命です。使い方によりますが、50ラウンドぐらいで交換という説もありますし、100ラウンドでも大丈夫という説もあります。2足体制だと、寿命が延びるという効果も期待できます。

2020年は、このまま終えることができれば、記録的に平均スコアが良い1年になりそうです。色々と理由を分析していますが、その中に一つに、ゴルフシューズの影響があると考えています。

15本目のクラブをどうするのか? どう使うのか? 決めるのは自分自身です。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。

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