打打打坐 第30回【ブレザーでゴルフを楽しもう】
打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。
配信日時: 2020年11月6日 06時00分
そもそもブレザーって何?
夏場を除くと、ドレスコードが厳しいゴルフコースだとブレザーを着用しなければクラブハウスに入れないという決まりがあります。
「そんなの日本独自の決まりで、欧米では聞いたことがないよ」と海外の事情に詳しいゴルファーが苦言を呈することがありますが、欧米でも少数ですが、ブレザーの着用を推奨しているゴルフコースは存在します。現在の日本でも、ブレザー着用をマストにしているコースはごく少数になりました。
昭和の終わりからバブル期にかけてピークになった『どこでも名門コースを目指せ運動』に踊らされて、ブレザー着用を強制するコースが乱立した時代もありました。この頃、その理由とされていたのが、ゴルフは元々、ブレザーを着てプレーをしていた伝統があるから、というものでした。これは、誤解というか、間違いです。
確かに、ゴルフの黎明期にプレーしている姿が書かれた絵などを見ると、ゴルファーたちは上着を着てプレーしていますが、これは単純に、スポーツが大衆に広く普及する前には、動きやすい軽装でプレーをするという習慣も服装も存在しなかったということと、スコットランドはかなり寒い地方で、屋外で上着を脱ぐということもなかったからなのです。
ちなみに、同じ時期にプレーされていたテニスも、同様に上着を着てプレーしています。そもそも、よく見ればわかりますが、彼らが着ている上着はブレザーではありません。
ブレザーの発祥には諸説ありますが、スポーツジャケットに分類されるシングルタイプのブレザーは、19世紀にケンブリッジ大学の女子ボート部員が揃いで着ていた赤い防寒ジャケットが、徐々に他の部活に広まって、世界中に広がっていったという説が有力です。
どこのボート部なのかがハッキリわかるように、派手な色やストライブ柄を採用して広まった名残りで、現在もメンバージャケットのように仲間を認識するものはカラーがハッキリしていて、胸に揃いのエンブレムを付けるのが伝統になっています。
ブレザーの目的が、仲間同士を認め合うものだとすれば、ある意味でブレーザーはユニフォームのようなものです。本当に名門の集まりであれば、強制すべきは、メンバーがメンバーだけが着ることを許された揃いのブレザーを着るということだけで、ビジターに強制するのは理屈に合いません。
最近は見なくなりましたが、ブレザー着用のピークだった時代に、そのコースの売店に行くと胸に付けるためのコースの紋章が刺繍されたエンブレムが数万円で売っていたものでした。誰でもお金さえ払えば、メンバーのフリができてしまうなんて…… 滑稽を通り越して、少し怖い話です。
「そんなの日本独自の決まりで、欧米では聞いたことがないよ」と海外の事情に詳しいゴルファーが苦言を呈することがありますが、欧米でも少数ですが、ブレザーの着用を推奨しているゴルフコースは存在します。現在の日本でも、ブレザー着用をマストにしているコースはごく少数になりました。
昭和の終わりからバブル期にかけてピークになった『どこでも名門コースを目指せ運動』に踊らされて、ブレザー着用を強制するコースが乱立した時代もありました。この頃、その理由とされていたのが、ゴルフは元々、ブレザーを着てプレーをしていた伝統があるから、というものでした。これは、誤解というか、間違いです。
確かに、ゴルフの黎明期にプレーしている姿が書かれた絵などを見ると、ゴルファーたちは上着を着てプレーしていますが、これは単純に、スポーツが大衆に広く普及する前には、動きやすい軽装でプレーをするという習慣も服装も存在しなかったということと、スコットランドはかなり寒い地方で、屋外で上着を脱ぐということもなかったからなのです。
ちなみに、同じ時期にプレーされていたテニスも、同様に上着を着てプレーしています。そもそも、よく見ればわかりますが、彼らが着ている上着はブレザーではありません。
ブレザーの発祥には諸説ありますが、スポーツジャケットに分類されるシングルタイプのブレザーは、19世紀にケンブリッジ大学の女子ボート部員が揃いで着ていた赤い防寒ジャケットが、徐々に他の部活に広まって、世界中に広がっていったという説が有力です。
どこのボート部なのかがハッキリわかるように、派手な色やストライブ柄を採用して広まった名残りで、現在もメンバージャケットのように仲間を認識するものはカラーがハッキリしていて、胸に揃いのエンブレムを付けるのが伝統になっています。
ブレザーの目的が、仲間同士を認め合うものだとすれば、ある意味でブレーザーはユニフォームのようなものです。本当に名門の集まりであれば、強制すべきは、メンバーがメンバーだけが着ることを許された揃いのブレザーを着るということだけで、ビジターに強制するのは理屈に合いません。
最近は見なくなりましたが、ブレザー着用のピークだった時代に、そのコースの売店に行くと胸に付けるためのコースの紋章が刺繍されたエンブレムが数万円で売っていたものでした。誰でもお金さえ払えば、メンバーのフリができてしまうなんて…… 滑稽を通り越して、少し怖い話です。
改めてブレザーを意識してみる
2020年、秋。史上初めてマスターズが11月に開催されます。マスターズといえば、象徴的なシーンの一つは、優勝者に前年の優勝者が緑色のブレザーを着せるセレモニーです。
あの緑色のブレザーは、最近ではグリーンジャケットと呼びますが、昔は、グリーンコートと呼んでいたそうです。マスターズを開催している米国のゴルフ界が誇る究極のプライベートコース『オーガスタナショナルGC』のメンバーの証が、グリーンジャケットなのです。コース内でプレーしている以外の時間は、メンバーにはブレザー着用義務があるそうです。
マスターズ優勝者に贈られるグリーンジャケットは、特別メンバーとして迎えられた証で、チャンピオンだけのロッカールームに、自分のロッカーが与えられて、原則として生涯、マスターズに招待されます。
マスターズに6回優勝した(最多優勝記録)ジャック・ニクラウスによれば、何回優勝しても、与えられるグリーンジャケットは1着だけなのだそうです。ニクラウスの場合、初優勝の時に表彰用に用意されたグリーンジャケットに合うサイズがなく、その日、来場していなかったメンバーのものを借りてセレモニーをしたのですが、どういう訳か、その後、そのまま、そのジャケットがニクラウス用になってしまって、21世紀になってからやっと自分専用のジャケットに交換してもらったそうです。
もう一つ、グリーンジャケットには決まりがあって、原則として、コース外に持ち出しが禁止になっています。SNSの時代になってから優勝したある選手が、グリーンジャケットを来たまま帰宅して、メディアの取材でも着用していたところ、マスターズ委員会から厳重注意をされ、至急返却するように要請されたことが話題になりました。
ブレザーとゴルフの関係という意味で、面白い事実もあります。ゴルフの黎明期にゴルフを支えた人々の肖像が残っていますが、ほとんどの人がお決まりの斜め横を向いたポーズをしています。そして、燕尾服のような形の真っ赤なジャケットを着用しているのです。
都市伝説好きの人にはたまりませんが、この赤いジャケットは秘密結社として有名な『フリーメイソン』のメンバーとしての証です。肖像画に残されたゴルファーたちは、記録もちゃんと残っていますが、結社のメンバーでした。ゴルフには、不思議な数字が色々ありますが、18ホールという半端な数を正式なものとするという慣習は、フリーメイソンの数的なこだわりが反映しているという説は、今や定説の一つです。
仲間の証として、ブレザーを意識してみると、意固地になってブレザー着用に嫌悪感を持たなくとも済むような気がします。
あの緑色のブレザーは、最近ではグリーンジャケットと呼びますが、昔は、グリーンコートと呼んでいたそうです。マスターズを開催している米国のゴルフ界が誇る究極のプライベートコース『オーガスタナショナルGC』のメンバーの証が、グリーンジャケットなのです。コース内でプレーしている以外の時間は、メンバーにはブレザー着用義務があるそうです。
マスターズ優勝者に贈られるグリーンジャケットは、特別メンバーとして迎えられた証で、チャンピオンだけのロッカールームに、自分のロッカーが与えられて、原則として生涯、マスターズに招待されます。
マスターズに6回優勝した(最多優勝記録)ジャック・ニクラウスによれば、何回優勝しても、与えられるグリーンジャケットは1着だけなのだそうです。ニクラウスの場合、初優勝の時に表彰用に用意されたグリーンジャケットに合うサイズがなく、その日、来場していなかったメンバーのものを借りてセレモニーをしたのですが、どういう訳か、その後、そのまま、そのジャケットがニクラウス用になってしまって、21世紀になってからやっと自分専用のジャケットに交換してもらったそうです。
もう一つ、グリーンジャケットには決まりがあって、原則として、コース外に持ち出しが禁止になっています。SNSの時代になってから優勝したある選手が、グリーンジャケットを来たまま帰宅して、メディアの取材でも着用していたところ、マスターズ委員会から厳重注意をされ、至急返却するように要請されたことが話題になりました。
ブレザーとゴルフの関係という意味で、面白い事実もあります。ゴルフの黎明期にゴルフを支えた人々の肖像が残っていますが、ほとんどの人がお決まりの斜め横を向いたポーズをしています。そして、燕尾服のような形の真っ赤なジャケットを着用しているのです。
都市伝説好きの人にはたまりませんが、この赤いジャケットは秘密結社として有名な『フリーメイソン』のメンバーとしての証です。肖像画に残されたゴルファーたちは、記録もちゃんと残っていますが、結社のメンバーでした。ゴルフには、不思議な数字が色々ありますが、18ホールという半端な数を正式なものとするという慣習は、フリーメイソンの数的なこだわりが反映しているという説は、今や定説の一つです。
仲間の証として、ブレザーを意識してみると、意固地になってブレザー着用に嫌悪感を持たなくとも済むような気がします。
ブレザーもゴルフの内だと楽しむ
一般的なブレザーの定義は、金属製のボタンとエンブレムが付いているジャケットということになるようです。学生の制服として採用されているものを見れば、一目瞭然です。
ゴルファーに優しい衣料メーカーとして僕も愛用しているユニクロでも、ゴルフコースに着ていける安価なブレザーを売っています。
昭和の頃、ブレザーは着た人が並ぶと、生地や仕立てなどで、上物と安物が明確に出てしまうという特徴がありました。上物のブレザーを、着慣れている雰囲気を出して、さり気なく着こなすのが、真のゴルファーである、と教わりました。テーラーに行って、十数万円もかけて、ゴルフ用にブレーザーを作るのは珍しくありませんでした。ゴルフが本当の意味で現在のように大衆化する前のお話です。
とはいっても、面白いことに、多くの人が、着慣れない雰囲気丸出しなのに、胸を張って滑稽なブレザーを着ていたのが現実だったのです。ゴルフコースは、ある意味で、とても残酷な場所でした。
令和になって、ゴルフコースに行くと時は、ドレスコードにかかわらずに、ブレザーを着て行くというゴルファーは、1%ぐらいは残っているような気がします。備えあれば憂いなし。ブレザーでゴルフのスイッチを入れるゴルファーは、それだけでデキるゴルファーであるとわかるような気がするのは、僕もオールドゴルファーだからなのでしょうか。
最近では、エンブレムをつけないブレザーのほうが制服っぽくなくて、大人の雰囲気があると考えるゴルファーが増えてきたと言います。こういうことに正解はないのだと思います。スタンダードと遊びの両方を使い分けられるのが、理想的なのだと考えます。
本当は、大人で高齢なゴルファーほど、ブレザー使いが上手くあって欲しいのですが、同世代を見渡すと少し残念な気がします。
逆に、ゴルフ歴が浅い若いゴルファーが、見事にブレザーを使っているシーンを見かけることが増えています。ゴルフ用のコスプレ感覚なのかもしれませんが、スタンダードに自信がないオヤジたちを見下すようにして、ブレザーをカッコ良く楽しんでいる若者は頼もしいです。その時間だけ、自分を変身させることができるのもゴルフの魅力だと、ブレザーは教えてくれているのです。
令和の時代のゴルフでは、コースを選べば、生涯、ブレザーを着用せずにゴルフをし続けることも可能です。
最近の僕は、ブレザーを着てコースに行くことは年に数回しかありません。ドレスコードやTPOで着用しますが、勝負ブレザーを着るときは、気合いが入ったゴルフをしたいときです。最後の一転がりを支えるのは、自慢の金ボタンだ、というブレザーを持っていることは、ゴルファーとして幸運なことなのだと実感しています。
やってみれば簡単なのに、やらない怠慢をゴルフの神様は見逃しません。なによりも、ブレザーを使えないゴルフは、もったいないことだ、と思ってしまうのです。
ゴルファーに優しい衣料メーカーとして僕も愛用しているユニクロでも、ゴルフコースに着ていける安価なブレザーを売っています。
昭和の頃、ブレザーは着た人が並ぶと、生地や仕立てなどで、上物と安物が明確に出てしまうという特徴がありました。上物のブレザーを、着慣れている雰囲気を出して、さり気なく着こなすのが、真のゴルファーである、と教わりました。テーラーに行って、十数万円もかけて、ゴルフ用にブレーザーを作るのは珍しくありませんでした。ゴルフが本当の意味で現在のように大衆化する前のお話です。
とはいっても、面白いことに、多くの人が、着慣れない雰囲気丸出しなのに、胸を張って滑稽なブレザーを着ていたのが現実だったのです。ゴルフコースは、ある意味で、とても残酷な場所でした。
令和になって、ゴルフコースに行くと時は、ドレスコードにかかわらずに、ブレザーを着て行くというゴルファーは、1%ぐらいは残っているような気がします。備えあれば憂いなし。ブレザーでゴルフのスイッチを入れるゴルファーは、それだけでデキるゴルファーであるとわかるような気がするのは、僕もオールドゴルファーだからなのでしょうか。
最近では、エンブレムをつけないブレザーのほうが制服っぽくなくて、大人の雰囲気があると考えるゴルファーが増えてきたと言います。こういうことに正解はないのだと思います。スタンダードと遊びの両方を使い分けられるのが、理想的なのだと考えます。
本当は、大人で高齢なゴルファーほど、ブレザー使いが上手くあって欲しいのですが、同世代を見渡すと少し残念な気がします。
逆に、ゴルフ歴が浅い若いゴルファーが、見事にブレザーを使っているシーンを見かけることが増えています。ゴルフ用のコスプレ感覚なのかもしれませんが、スタンダードに自信がないオヤジたちを見下すようにして、ブレザーをカッコ良く楽しんでいる若者は頼もしいです。その時間だけ、自分を変身させることができるのもゴルフの魅力だと、ブレザーは教えてくれているのです。
令和の時代のゴルフでは、コースを選べば、生涯、ブレザーを着用せずにゴルフをし続けることも可能です。
最近の僕は、ブレザーを着てコースに行くことは年に数回しかありません。ドレスコードやTPOで着用しますが、勝負ブレザーを着るときは、気合いが入ったゴルフをしたいときです。最後の一転がりを支えるのは、自慢の金ボタンだ、というブレザーを持っていることは、ゴルファーとして幸運なことなのだと実感しています。
やってみれば簡単なのに、やらない怠慢をゴルフの神様は見逃しません。なによりも、ブレザーを使えないゴルフは、もったいないことだ、と思ってしまうのです。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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