打打打坐 第22回【ドライバーを育てる】 | ロマン派ゴルフ作家篠原の “今日も打打打坐”

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打打打坐 第22回【ドライバーを育てる】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

2020年09月11日

国内メーカーを応援している?

 
21世紀になって日本のゴルフ用具市場で最も変わった部分は、外国ブランドのクラブが増えたことです。それまでは国産のクラブメーカーは一流品で、外国ブランドのクラブは製造精度などで劣っているというのが常識でした。劣る部分を我慢して舶来好きの人たちが使う特殊なものが外国ブランドのクラブだったのです。

例えば、その頃カタログにクラブのロフトなどのスペックを載せている外国ブランドは皆無でした。理由はその数値通りに製造することが難しかったことで、製造上の誤差が2度ぐらいはあるのが当たり前だったのです。日本のメーカーであれば、トップブランドであれば0.5度未満の誤差を誇っていましたし、適当なメーカーであっても2度も誤差があるものは不良品扱いだったのです。

僕は時々国内メーカーに肩入れする具合が激しいと言われます。特定のメーカーを応援してしまうのは誰にでもあることですが、指摘されるたびに、自分がショップにいた頃、日本のクラブが世界一だと断言できたことを思いだしてしまうのです。

もう30年も前ですが、20代の数年間僕は某公共機関の職員で日本に赴任していた米国人と意気投合して、年に3、4回は一緒にラウンドをしていました。彼は40代でしたがかつて全米アマの地区予選を突破したこともあるという猛者で、攻撃的で潔いゴルフをするナイスガイでした。彼は驚くほど博学でゴルフ以外のことをたくさん教わりました。

「日本人はどうして自国の良いものに誇りを持たないのか? 本当に不思議だ」

そういう彼は、ゴルフウェアはラルフ ローレンで、普段着やスーツはブルックスブラザーズを着ることにこだわっていました。いずれも母国である米国が誇るブランドです。ゴルフ用具もすべてタイトリストでした。勝負に負けるたびに「自分が日本製のクラブを使っていたら負けなかった」と言ってニヤリとお茶目に笑うのです。

日本の自動車、時計、家電、筆記用語、そして、ゴルフクラブは、間違いなく日本製が世界一なのに、日本人は外車を好み、ヨーロッパの時計を自慢気に腕にしている、と嘆くのです。

欧米の一流のブランドショップや、ホテルなどは、お客様を一瞬で見抜く教育を徹底され、外国のブランドで身を固めた日本人を価値がわからないおいしい客だと見定めると、何度も教えてくれました。彼に言われて、腕時計や万年筆などを日本製の優秀なものにして、海外に行ったときに、指導通りに使ってみたところ、確かに、客としての扱いが良くなって、オイシイ思いをすることが色々あったのです。

タイトリストにこだわり続けた彼が、赴任期間が終わって、日本を離れるときに日本のメーカーのクラブに買い換えました。

「日本の美学をリスペクトし、実践していたのに、最後の最後に…… 無念だ」

最後に握手をしたときに彼が言ったのです。僕は密かに、彼はスパイだったのだと思っています。根拠も証拠も一切ありませんけれど……

国産のゴルフメーカーの弱体化は、あの頃の勢いを知っている人間からすると歯痒いものです。肩入れしていると指摘されると、本音では「それがなにか?」と思います。インプレッションの評価には、手心を加えるようなバカをしていない自信があるので、表面的には優しく微笑んで、首を傾げるようにしているのです。

プロのこだわりの光と影

2020年秋。コロナ禍で延期したり、縮小したりで、バタバタしていましたが、秋の新製品のクラブが各メーカーより発表されています。どれも力作揃いでゴルファーたちをワクワクさせています。

ホットなニュースが駆け巡ったのは9月の上旬です。太平洋を越えた米ツアーは夏に再開され、メジャートーナメントの全米プロも無観客ではありましたが大いに盛り上がり、早くも今シーズンのプレーオフシーズンの最後の3試合に突入していました。日本人で唯一参戦している松山英樹プロが契約先であるスリクソンの新しいドライバーを実戦投入した、というニュースは、380ヤード以上もボールを飛ばしたホールもあるという注目ポイントもあって、世界中に広まったのです。

松山プロは、使用クラブに妥協をせず、自分に合った良いものでなければ契約先のものでも使用しないことで有名です。ドライバーは、デビュー直後と、数年前にスリクソンブランドのものを一時的に使用しただけで、他は海外ブランドのものを使用しているという状態が続いていました。

松山プロが試合で使用したことで、新しいスリクソンのドライバーは、どうやら凄いらしい、ということになって、大騒ぎになりました。予定を前倒しして、新製品発表がありました。発売は10月中旬です。色々な人たちから、新しいドライバーについて、僕の所にも問い合わせがありました。国内ブランドに肩入れしているから、他の人より情報を知っていると思われたからです。

一人のゴルファーとして、米ツアーの中継を真夜中にライブで何度もチェックしました。松山プロ専用のカメラが現地に入っているので、スタート前の練習風景も中継されるからです。数本のドライバーを打ち比べるシーンが映りました。全てのヘッドが、例の新しいドライバーであることを確認して、心底、ホッとすると言うことを繰り返しました。

外国ブランドが優秀で、国内ブランドはイマイチだと考える人が増えた理由は複数ありますが、世界最高峰のツアーである米ツアーで妥協しないプレーヤーたちが選ぶものが優秀なのだと信じる人たちがいることや、契約しているプレーヤーの活躍が実績になっていくという蓄積が大きいと言われています。

スリクソンの新しいドライバーで、松山プロはトーナメントには勝てませんでしたが、日本ツアーや他のツアーでは、いきなり勝利ドライバーになりました。凄いニュースです。ゴルフクラブには、物語が必ずついているという宿命があります。誰が、どんなタイミングで使ってくれて、そんな結果が出たのか…… ゴルフの神様のシナリオは、時に優しく、時に残酷です。

ドライバーを信じるために

「ドライバーは育ててナンボじゃい!」という考え方があります。何百球も打ち込んで、手足のように使いこなすのが良いというわけです。

その反対に、最初にコースで打ったラウンドでダメだったドライバーは、何をしても上手く機能するようにならないという考え方もあります。

ドライバーという用具は、不思議なもので、打ち手を選ぶ傾向があります。だから、打ち込むことで、自分を合わせるように歩み寄るハウツーと、深追いせずに、別の出逢いに期待するハウツーがあるのだと思います。

いずれにしても、ドライバーを信頼できなければ、ゴルフの楽しさは半減してしまいます。

松山英樹プロにはいくつもの都市伝説のような噂があります。用具へのこだわりの強さについても、いくつかのエピソードがあります。新しい用具も、なかなか試打をしてもらえないようで、アドレスだけして、実際には1球も打ってもらえなかったということも少なくないというものも、その1つです。

そのエピソードから、松山プロは、ドライバーを深い追いせずに、別の出逢いに期待するタイプのなのだと確信していました。
しかし、今回のことで中継を何日も注意深く見ていて、それが間違いだったことに気が付きました。

松山プロと長年キャディーとしてツアーを戦っていた進藤大典氏が中継の解説をしていたのですが、「練習場で狙い通りに行くドライバーを選んでいるわけではなく、実際のコースでの結果のみを重視していて、練習場とコースでは全く違うことが多かったので不思議でした」という旨のコメントをしたのです。

松山プロは、ドライバーを育てるタイプのゴルファーのようです。でも、それは練習場では完結しないのです。これがリアルだと思いました。

練習場では上手く打てるのに、本番のコースでは同じように打てないというのは、打ち込みがドライバーを育てることに結びついていない悪い例なのです。コースでのドライバーの成功体験を増やして、太い信頼の絆を紡ぐのがドライバーの育て方なのでしょう。

2020年秋。新たなドライバーを育ててみようと密かに思っています。噂の国内ブランドのドライバーにするか、海外ブランドで注目を集めているドライバーにするか? 悩んだり、迷ったりしながら、期待を膨らますのも、ゴルフの楽しさです。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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