episode 7 【あの子とゴルフの魅力】 | 特命上司Aのアンソロジー『ゴルフよ、永遠なれ!』

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episode 7 【あの子とゴルフの魅力】

社内ゴルフコンペ参加者の平均年齢が50歳を超えたことに気が付いた役員から「若い参加者を増やせ!ただし、コンプライアンスには十分に注意せよ」という特命を帯びた上司A。一切の強要なしに若い部下たちをグリーンに誘うことは可能なのか? 上司Aの挑戦は始まった……

2020年07月30日

上司Aは、夕方になってコミュニケーションルームに女子社員Cに呼び出された。約束の時間に行ってみると、彼女とも一人の女子社員が待っていた。

受付をしている派遣社員Fを紹介された。社内イベントで初級者入門レッスンを受けて、ギャラリーを最も集めたと話題になっていたのが彼女だった。

上司Aは、自分の会社の受付が派遣社員だと知らなかったが、互いの自己紹介を終えて、女子社員Cがその部分も含めて説明をしてくれた。

受付は8人のチームで交代制になっていて、6人が派遣社員で構成されている。総務部が彼女たちの派遣先なのだが、残り2名は秘書課の担当になっていることもあって、更衣室、ロッカー、休憩場所、デスクなどは秘書課とほぼ共通なのだという。女子社員Cは秘書課なので、普段から顔を合わせている内に、自然と仲良しになって、ゴルフに興味があることも知っていたから、イベントに誘ったのだという。

受付を派遣社員にしている理由は、何となく想像がついた。若くてきれいな女子社員を、そういう理由で採用するのは難しい時代になっている。派遣に頼ったほうが楽なのだ。上司Aが入社した頃は、受付は会社の顔で、ミス○○が毎年入れ替わりで入社していた。数年で寿退社してしまう。モテモテな花形部署だったのだ。時代は変わるものである。

派遣社員Fと女子社員Cの特命にかかわる説明は以下のような内容だった。

◆派遣社員Fは、イベントの後、社員割引を使ってレッスンに通っている
◆飛ばし命の社員Dもどういう訳か一緒に同じレッスンに通っている
◆レッスンは週2。90分。1回4000円。
◆レッスン代は30%オフで2800円。その内15%は会社が負担。
◆会社帰りの習い物感覚のレッスンは楽しい


上司Aはインドアレッスンを受けたことがなかったので、イメージが湧かなかったのだが、習い物感覚と聞いて、大いに納得した。あのイベント以降、役員だけではなく、社員もインドアレッスンに行っていることは知っていたが、思った以上に盛況なようだ。

「あの…… 派遣社員も社内ゴルフコンペに出場できるんですか?」

聞かれて、上司Aはきょとんとしてしまった。全く考えたことがなかったからだ。

「確認しておくけど、出たい人は出られるようにするから安心して」

前例はないだろうが、大きな問題ではないはずだった。変な規則よりも、積極的な姿勢が嬉しかったので、どうにかするかしないと即断したのだ。

女子社員Cが、ここからが、本題です、と改まって言った。派遣社員Fは、3週間後、初心者レッスンのコースを卒業するので、ゴルフコースデビューを考えていた。女子社員Cも含めて、レッスンのオプションという王道から、女子会みたいなぶっ飛んだものも含めて、色々と考えていたら、話がどばーっと広がって、こんな話になったのだという。

◆当然だが、早くコースに行ってみたい
◆インドアレッスンの場合、当てるのに集中して飛距離が出ないことが多く、不安がある
◆飛ばし屋だけど同じくコースデビューしたい社員Bも一緒にできたら一石二鳥
◆ゴルフコースの雰囲気とゴルフの楽しさだけを抽出して体験できれば最高
◆社員Eと相談して、スクランブルのチーム戦を計画している
◆私たちのチームは、女子社員Cと社員Dと派遣社員Fと…… 上司A
◆超上手い上司Aとまあまあ上手い女子社員Cとデビュー2名というチームのバランスは良し
◆社員Bは40代のチーム、社員Eは30代のサークル代表的な2チームの4チームの団体戦
◆開催は3週間後の土曜日で、詳細は改めて社員Eからメールが来る


上司Aは寝耳に水の話だった。どうやら自分以外は、みんな知っていて、盛り上がっていることは確実なようだった。女子社員Cは。上司Aが断るという選択肢を持っていないと思っているようだった。とはいえ、スクランブル競技に興味があったし、みんなの盛り上がりを考えると、自分も一緒に乗るのが正解だと上司Aは決断していた。

「基本的には、Fちゃんとゴルフがしたい!デビューに付き合えるなんて最高だ!秘書課のCも来るのもオマケとしては悪くない、という感覚なのだと思います」

「Cさん。いつもそんなことばかり言って、そんなことはないですよ」

女子二人のやり取りを聞きながら、なるほどと思うところがあった。いつの時代も男子は単純なのだ。

「じゃあ、僕が一番得をしているということになるね」

上司Aがこの話を断るという選択肢がないというのは、無意識かもしれないが、彼女たちの自信の裏付けだ。特命を達成する上で、知らず知らずに頼りになる援軍を得たような気がした。

自分も特命をクリアするために前進していると思っていたが、想像もしていなかった展開になっていることが、上司Aは嬉しかった。ゴルフで仲間が増えて、止められない熱い気持ちを共有できることは素晴らしいことだ。この流れに乗っていくことに、何の不安もなかった。

今回の金言

 
(写真・Getty Images)
「ゴルフの上達に近道はない
 there is no royal road Golf.」
(スコットランドの古いことわざ)


昭和の時代は、トラック一杯のボールを練習場で打ってからでなければ、コースに出る資格はないというセオリーがあった。具体的には、1万球ぐらいは打ってからじゃなければ一人前の初心者ではないという未熟なベテランみたいな奇妙な不文律に縛られていたのだ。

令和の時代になって、律儀に練習を積んでコースデビューする人たちもいるが、それは限られたごく一部の特殊な例になりつつある。

ビックリすることに、全く練習せず、自分のクラブを持たず、コースデビューする人たちも出現している。ゴルフの神様のイタズラのようで奇妙なのだが、練習をたっぷりとした人よりも、いきなりコースデビューのほうが、その後のゴルフを継続する率が高いという説もある。

コースデビューせずに、何年もインドアの練習場だけに通っている人もいる。球を打つという意味では、コースもインドアのマットの上も差がないからだと言われると、言葉に詰まる。ゴルフに行くといえば、コースでラウンドすることである。練習場に行くことをゴルフに行くと表現する人もいるとはいえ、ゴルフはただボールを打つだけではないことを知らずに続けているというのは、悪い夢を見ているようだ。

いずれにしても、多様な人だちが、ゴルフをする時代になったのである。

上司Aは意図せずに社員たちと団体戦に参加することになった。それは、特命にとって、とんでもない近道になるのか? それとも、困難な上に、遠回りなるのか?

上司Aは、基本的には慎重な性格だったが、いわゆるゾーンに入ったような『イケイケ』な状態でブレーキを踏むことを愚行だと断言できる思いっ切りも知っていたし、成功体験もあった。特命の運命は加速して進み出した。

上司Aは、とりあえず、突き進むことに決めたのだ。

【著者紹介】四野 立直 (しの りいち)

バブル入社組作家。ゴルフの歴史やうんちく好きで、スクラッチプレーヤーだったこともある腕前。東京都在住。
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