永久シードにつながった“13打”の悪夢 スコアを聞かれ「すみません、わかりません」【名勝負ものがたり】 | 名勝負ものがたり

ゴルフのポータルサイトALBA.Net TOP > ツアー情報 > ツアー関連コラム > 記事

永久シードにつながった“13打”の悪夢 スコアを聞かれ「すみません、わかりません」【名勝負ものがたり】

歳月が流れても、語り継がれる戦いがある。役者や舞台、筋書きはもちろんのこと、芝や空の色、風の音に至るまで鮮やかな記憶。かたずをのんで見守る人々の息づかいや、その後の喝采まで含めた名勝負の数々の舞台裏が、関わった人の証言で、よみがえる。

2021年10月07日

 
この敗戦が翌年の初優勝、さらに永久シードへとつながる
ツアー通算41勝の永久シード選手、森口祐子には、手の中につかみかけた初優勝を、自ら手放した22歳の苦い思い出がある。1977年ミヤギテレビ杯。2打差単独首位に立ち、残りは2ホール。そんな場面で、悪夢は起きた。

秋の深まる9月末の宮城県。松島チサンCCで、初優勝目前の森口は自信と緊張の中、プレーしていた。2日間、36ホールのミヤギテレビ杯女子オープン。初日を田村算代(算は旧字体)に1打差の2位でプレーし、迎えた最終日の大詰めで、自分が単独首位に立っていることを知った。

「吉持(増田)姿子さんと同じ組だったのは覚えています。16番でスコアボードを確認して2打差で首位なのがわかった。みんなグリーンを外して時間がかかっていたから、何度もボードを見てすごくドキドキしていました。2.5メートルのパーパットが残っていたんですけど『これを入れたら2ストロークリードなんだな。あと2ホールだし、勝てる?』と思ったかもしれません。今思えば、勝てるなんて思ったらだめですね。あの時は自信があったのかもしれないけど」と、苦笑する47年前のその瞬間。思えばこの時、地獄の釜のフタは開いたのかもしれない。

パーパットを沈めて向かった17番は、軽く右にドッグレッグしたパー4だ。ティショットを右に打ち、つま先下がりのライの第2打に臨んだ。「私の少し後ろから、吉持さんが先にグリーンオン。それを見て私も『(グリーンに)乗るもんだ』と思って打ちました。だって、吉持さんより前にボールはあるし、この日は調子もよかったから」。だが、クラブのソールに当たったボールは、右の真下に落ちて、ブッシュの中。最悪の状況だ。

「ボールは探せたけど、グリーン方向に打とうとすればするほど(崖の上までが)遠くなる。でも、私はグリーン方向を狙ってしまった」。ブッシュからの3打目は、再び崖を転がり落ちる。OB。この時キャディに声をかけられたことを覚えている。

「きれいなハウスキャディさんでした。『森口さん、落ち着いて』と、上から言われた。『大丈夫。私、落ち着いているから』と答えたんですけど、たぶん全く落ち着いてなかったんでしょうね。次も同じことをしてしまったのだから」。5打目をOBにしたあたりで、頭が真っ白になった。7打目もOB。優勝争いどころではない。

9打目でようやく、グリーン方向ではなく出すことを考えた。横に出して、打った10打目もグリーンに乗らない。「そのあとはよく覚えていません」と、いうホールのスコアは『13』だった。

実は、このスコアも、自分で数えていたわけではない。次の18番のティグランド(当時)で、マーカーの吉持(増田)に「いくつ?」と聞かれ「すみません。わかりません」と答えた。「『じゃ、数えてあげるね』と言って指を折って数えてくれたのを見ているだけだったのをよく覚えています。でも、18番が残っているからプレーしなくちゃいけなくて…。その頃は、ボードも手で入れ替えていたから、17番の結果がまだ反映されていない。私がトップのままで、グリーン周りから声が聞こえてきました。『優勝するのはあの娘だよ』って。心の中で『違うの、違うの。私じゃないの』って言っていました」。

呆然としたままホールアウトして、クラブハウスの2階に上がった。すると、居合わせた先輩から「祐ちゃんおめでとう」と声をかけられる。これに対して「違うんです」と言った瞬間、ぼろぼろと涙がこぼれおちた。

魔の『13』の原因はどこにあったのか。「とにかく(第2打の)ライがわかっていなかった。吉持さんが乗ったから、私もグリーンに乗るもんだと思って打っているからです」。プロ入り2年目。師匠の井上誠次からは「絶対勝てるぞ」と言われて自信を持ち始めたタイミングでの出来事だった。この試合、結局森口はトータル9オーバーで15位タイに終わり、岡田美智子が優勝している。

森口はこの失敗を決して無駄にしなかった。むしろ、大きな糧にした。練習の仕方を変えたのだ。優勝争いの緊張した場面と同じような状況を作り出すことを考えた。「あの心境を経験したのは大きかったですね。突然のバクバク感を経験しないと乗り越えられないと思った」。編み出したのは、ダッシュしてからパットの練習をすることだった。気持ちからくる緊張とは違うが、とにかくドキドキする状況で打つことに慣れようとしたのだ。奪取してパッティング、ダッシュしてパッティング。所属していた岐阜関CCでは、不思議な練習風景が繰り返されることになった。

もちろん、プレーが終わるまで決して心のスキを作らないことも学んだ。前向きにこれを乗り越えようとしたのだ。その結果が、翌78年、ワールドレディスでの初優勝につながった。

「私の(ツアー通算)41勝は、あの『13』があったからだと思っています」と振り返る強烈な失敗談。どんな優勝の記憶よりも強く心に残る“優勝前夜”の悪夢こそが、永久シードへのターニングポイントだった。(文・小川淳子)
1

おすすめコンテンツ

現地直送! 国内女子ツアー撮れたてフォト
どこよりも早く! 女子プロの笑顔はライブフォトでチェック
松山英樹が出場! 米男子ツアーのリーダーボード
米男子ツアー「ザ・CJカップ@サミット」が現地時間14日(木)に開幕。スコアやスタート時間をチェック。
川村昌弘出場! 欧州男子ツアーのリーダーボード
川村昌弘が「スペインオープン」に出場。リーダーボードはコチラ。
男子ツアーLIVEフォトはコチラ
石川遼らが盛り上げる! 男子ツアーの熱戦をLIVEフォトでチェックしよう。
【初心者応援企画】1万円前後で買える中古ドライバー5選
ゴルフパートナーの店長が、1万円くらいで買えて、やさしく真っすぐ飛ばせる中古ドライバーを5本選んで紹介!
教えて!女子プロ先生
渋野日向子、有村智恵、香妻琴乃ら人気女子プロが、伸び悩むゴルファーのためにワンポイントレッスン
チャンスは生かす! 増枠予選会からの挑戦
女子ツアー新たな制度「増枠予選会」を突破した選手が、そのチャンスを生かそうと懸命なプレーを見せている。
木更津アウトレット おすすめゴルフショップ12選!
三井アウトレットパーク木更津の特徴とそのおすすめのゴルフショップのランキング
【迷っていたらコレをチェック】ゴルフシューズアドバイザーがオススメするシューズ5選!
快適でストレスの少ないラウンドをサポートしてくれるシューズはこちら。
スコアメイクの必需品ゴルフ用“レーザー距離計”は信頼で選ぶか? コスパで選ぶか?
ハイエンド機からコスパ重視のモデルまでをコースで徹底テスト!
見るべきゴルフ系YouTubeは
ゴルフの世界もYouTubeは必須の情報源。そこで人気ゴルフYouTubeチャンネル仕掛け人におすすめを聞いた。
トークショーや新作ギア発表会
フォトギャラリー
写真好きの方に朗報! トーナメント写真から女子プロの秘蔵フォトまで集めました。  
渋野日向子ら人気選手の女子プロ写真館をチェック!
渋野日向子ら人気選手の女子プロ写真館。ALBA.Netでしか見られない特選フォトをチェック!
世界トッププロの連続写真を徹底解説!【超一流のスイング術】
松山にタイガーにマキロイ! 超一流たちのスイングを井上透氏が徹底解説!
何でもアンケート
あんなことやこんなこと、周りのゴルファーはどう思ってる?アンケートに答えてプレゼントをゲットしよう!
気になる隣のゴルファー事情
何でもアンケートを結果をもとに、アマチュアゴルファーの最新トレンドが丸わかり!
こんな時どうする!?
戸張捷のルール&マナー
こんな時どうする!? プレー中のトラブル処理法を戸張さんが分かりやすく解説!