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打打打坐 第74回【接待ゴルフって何だ?】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

2021年09月17日

昭和の接待ゴルフは絶滅寸前

 
昭和の時代。この国のゴルファーの大半が社用族でした。嘘のような話ですが、接待ゴルフは、ある意味で、社用族ゴルファーの究極の腕前でもありました。その流儀やハウツーが、マニュアル化されている企業も当たり前のようにあり、そこに個性もあったりして、なかなか面白い文化だったのです。

まず、初心者は担当者であっても迷惑を掛ける可能性があるので、接待ゴルフに参加は出来ません。しかし、スーツを着て、当日はコースに来場し、クラブハウスで接待のお手伝いをするのです。コースの雰囲気や、しきたりを覚え、スタートや最終ホールでゴルフをしている様子も見て、将来の参考にするという意味もありましたが、いわゆる接待コースに行くと、コースのスタッフ以外にスーツの人たちがいるシーンは、令和では、ほぼ見ることはありません。

接待ゴルフ要員は、営業職としてエリートというか、花形でした。目の色を変えて、必死にゴルフの上達を目指すサラリーマンがたくさんいたのも、昭和時代のゴルフシーンだったのです。ゴルフのレベルアップは、自分の趣味としての喜びでもあると同時に、接待ゴルフ要員というレギュラーを勝ち取るために努力する価値があるものであり、アマチュアというより、ある種のプロフェッショナルを感じさせる名人もたくさんいました。

一切の負担をクライアントに感じさせないのが、接待ゴルフの基本です。自宅までの送り迎えから始まり、朝食の手配、売店での消耗品の補充、プレー中の心配り、プレー代の支払い、お土産の手配、必要に応じて、そのまま夜の街で打ち上げや、接待麻雀への第2ラウンドの準備など、クライアントが至れり尽くせりになるようにするものでした。

僕はショップにいる頃、大量に何かを購入してもらうことを条件に、企業の接待ゴルフに呼ばれたりすることが良くありました。プロゴルファーを同伴して、必要に応じてレッスンをするという付加サービスを好むクライアントもいたからです。容姿が良く、愛嬌がある女子プロは大人気で、ツアーに出なくとも、その収入だけでシード選手並みの金額になるというプロがゴロゴロいました。

僕の場合も、空気を読んで、スコアが良いほうがクライアントが喜ぶのか、良い勝負をしたほうが喜ぶのかでスイッチを入れ替えて、用具のアドバイスや、新製品の情報や、業界の裏話をするという太鼓持ちをしていました。上手くいけば、その後、太い得意客になってくれることもあるので、けっこう必死でやっていました。

その頃のゴルフコースの売店は、現在とは比較に奈良にならないほど、ゴルフショップとしてラインアップが充実していました。前半のハーフで、不調だったクライアントに、最新のドライバーやアイアンを売店で購入して、後半のハーフで入れ替えて使ってもらうという力業の接待を可能にするためです。

僕の場合も、車に最新の用具を密かに持参して、前半のハーフで話を出して、興味を持ってもらったら、購入してもらって後半のハーフで使ってもらったり、試打用のクラブを試してもらって、店に来てもらうというようなことをよくしていました。支払は接待する企業がしてくれるので、WinWinだったのです。

接待される側も、バカではないので、同伴した担当者の隠しようがない性格を確認したり、企業としての本気度を確認したりする機会として、接待ゴルフを利用していました。互いにお仕事でありながらも、最終的には、楽しかったから、また、よろしく、という感じに、本心でなってもらうことが目的だったのです。

双方に良い関係で、ある程度の仕事が内定しているからの接待ゴルフが普通でした。ドラマや漫画のような新規取引のためにやっと約束できた接待ゴルフというイメージを持っている人がいますが、未来の利益が約束できない接待ゴルフは基本的にはありませんでした。

令和になって3年ですが、今でも接待ゴルフをしているという複数の企業に確認してみましたが、ゴルフ代を負担したり、せいぜい、お土産を準備したりする範囲が、現在の接待ゴルフだという回答でした。あくまでも、ゴルフを通して、互いに親交を深めるということが目的だということでした。

至れり尽くせりという接待ゴルフは、絶滅寸前ですが、個人的には現在の接待ゴルフの概念のほうが健全だと思います。

本気で負けるのがコツ

「昔は、取引先にワザと負けないと、相手の機嫌が悪くなるから、下手なゴルフをするのに苦労したよ」

と祖父から聞きました、という若いゴルファーがいました。彼のおじいさまの名誉のために、否定はせずに、緩く肯定しました。彼もそう遠くない将来に、真相を知ると思ったからです。

こういう話は、接待ゴルフ全盛期の昭和時代にも、よく耳にしましたが、9割以上は、大叩きしたことや自らの未熟なゴルフへの言い訳なのです。

確かに、スコアが悪いと不機嫌になる人はいますが、それは現在でも同じです。そういう人の前では、同伴者が出来ることはないのです。そういう人に限って、ワザと失敗して、負けようとしたりすることを良しとはしないものです。

「馬鹿にするんじゃない!」

わざとらしく大叩きをした接待する側の人に、クライアントが怒鳴っているのを、僕は何度も見たことがあります。ゴルフの不調で苦しんでいる人にとって、下手な同情ほどイライラするものはないからです。マナーとしても、失敗したストロークには、沈黙のエールを送ることが奨励されていることでもわかります。

だからこそ、見破られないようにストロークを浪費するテクニックが必要だったという伝説がありますが、ゴルフをある程度、経験すればわかりますが、それは夢幻の世界で、現実にはあり得ないのです。百歩譲って、あったとすれば、それは単純に、その人の実力のレベルが低いだけのことです。

僕の知る限り、一流の企業人ほど、真剣勝負でゴルフをすることを好みますし、接待ゴルフであっても、ゴルフの精神を逸脱しないことを良しとしているものなのです。悪いイメージしかない昭和時代の接待ゴルフも、粋でスマートな格好良さを引き立たせるケースと、無粋でお下劣さを露呈するケースに、ハッキリと区別されていました。実は、ゴルフの怖さが出るものだったのです。

接待する心は尊いかもね

ゴルファーとして、大切なのは心配りだとルールブックの前文に書かれています。考え方によっては、接待する心は、同じベクトル上にあると言えます。

独り善がりで、迷惑を掛けていることにも気がつけないようなゴルフをしている人よりも、接待ゴルフに邁進していたオールドゴルファーのほうが、何十倍も正当なゴルファーです。

僕が令和の接待ゴルフで連想するのは、マッチングアプリ的な仕組みで、女性とゴルフをしている男子たちです。女性は女王様的に振る舞うほど様になって、男子たちは下僕のように必死なご機嫌取りをしているように見えるのです。

実際、男子たちは、レンタカーでの送り迎えから始まって、キャディさんのようなお仕事もしながらゴルフをしているのです。余裕があれば、まだ、見ていられますが、正直な話、中級者とも言えない腕前なので、アップアップしています。それでも、本人は必死になって、ゴルフをエスコートしているつもりなのです。

道化師のようなゴルフには、男子の青春の悲哀を感じますが、よくよく見てみると、立派な大人の男性だったりして、こちらが戸惑うのです。

個人的な興味で、フロントで精算するところを観察したことがありますが、彼らは彼女たちのゴルフ代までは負担していませんでした。若い世代は、女性だからおごってもらったりすることを良しとしない文化があって、デートでも割り勘が当たり前だとも聞きますので、不思議な光景ではないのかもしれません。でも、自分の分は自分で払うシーンを見て、ホッとしたりしたのです。そこまでは接待しないことに……

新型コロナウィルスが流行りだした昨年から、お一人様でプレーできるゴルフコースが増えました。この流れで、空いている枠に一人で参加できる人をマッチングする仕組みを導入しているコースもあります。当日の朝、初対面同士でゴルフをするというわけです。一見、接待ゴルフと対極にあるはずの仕組みが、女性と一緒にゴルフを楽しむためのツールとしても機能しているということは、人間のサガが剥き出しになるゴルフらしいと感心してしまいます。

ゴルファーとして、最低なのは、アイツとは二度とゴルフをしたくない、というレッテルを貼られて、独りぼっちになってしまうことです。残念ですが、腕前には無関係に、こういう残酷な現実は、ゴルフ黎明期から現在まで起き続けています。

そのために、ゴルフの先人たちは、エチケットというマナーを残してくれたのです。現在では、ルールブックを見ても、その項目はありませんが、消えたのではなく、分散しながらルールの中に溶け込んでいます。同伴者と気持ち良くプレーすることは、最終的には、その前後の組を含めた、その日に来場している全てのゴルファーに影響します。

過剰な接待ゴルフは、もう復活することはないと思いますが、心配りが身についたゴルフをして、いつも一緒にゴルフがしたいゴルファーになりたいものです。

それは、本気で決断さえすれば、狙い通りにドライバーを打つよりも、数倍も簡単に実行できるようになることを忘れてはなりません。簡単だからこそ、スルーすることが軽蔑されるという現実に震えるのが、ゴルフの神髄なのです。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
 
 

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