打打打坐 第36回【雨〇〇、晴れ〇〇】

打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。

2020年12月18日

ゴルフは、お天気に勝てない

 
ゴルフは自然との闘いだ、と、格好つけてよく言いますが……
実際には、雪などの気象条件の前では、ゴルフは戦うことすら出来ません。

祖父は秋田県の出身で、県人会の幹部などもしていたことがありました。親友と呼べる人が、僕の知っている限り数名いましたが、その中でも特に仲が良かったのが『秋田杉のおじいちゃん』でした。秋田杉のおじいちゃんというのは、僕が勝手にそう呼んでいただけでしたが、秋田杉を扱う会社を経営していて、現在のように秋田杉を全国的に有名にした立役者の1人だったようです。

冬になると秋田は雪に閉ざされ、ゴルフが出来なくなります。秋田杉のおじいちゃんは、東京にマンションを持っていて、冬になると東京に出てきて、そこに滞在して、大好きなゴルフをするのです。祖父の運転手代わりにゴルフに連れて行ってもらっていた僕は、秋田杉のおじいちゃんと一緒にゴルフをする季節になると、冬になったんだなぁ、と感じるようになったのです。

僕は秋田杉のおじいちゃんに可愛がってもらいました。ゴルファーとしての、立ち振る舞いをたくさん教わりました。75歳のときに最初のエージシュートを達成して、その後も数え切れないほど記録を伸ばした秋田杉のおじいちゃんは、今振り返ると、ゴルフの腕も相当なモノだったのです。

雪国では、冬になるとゴルフコースはクローズしてしまいます。雪の上ではゴルフが出来ないからです。雪国のゴルファーは、春を待ちながら、インドアの練習場に行ったりして冬籠もりをするのですが、中には、雪のないエリアまで遠征する強者もいるというわけです。

秋田杉のおじいちゃんの口癖が「オレは、究極の晴れ男だ!」でした。雲一つない晴天の下でゴルフをしたイメージしかありませんので、ある意味で、本当だったのだと思いますが、真冬の関東は晴天率が高いので、その辺りの事情が真相なのかもしれません。

日本の年間平均降水日数は約100日

暮らしていると、当たり前になってしまって、意識していませんが、日本は雨が多い国です。年間平均降水日数は約100日で、主要35ヶ国中の13位ですが、平均年間雨量は、平均の2倍なのです。つまり、約3日に1日の割合で雨が降り、雨が降るときには雨量が多いということなのです。だから、傘の保有数では日本は世界一です。

雨が多いと、ゴルフコースの売り上げが激減します。これは昔からですが、以前は2割から3割のダウンだったものが、現在では半減以下になってしまうと耳にします。雨天決行が原則だったゴルフが過去のものになってしまって、雨天中止がゴルファーの常識になりつつあるのが、その原因です。

日常生活では忘れていた『てるてる坊主』を大の大人が作ったりするのも、ゴルフあるある話です。雨が多いからこそ、空を見上げて、お天気が良いように、と祈るところから、この国のゴルフは始まるのです。

秋田杉のおじいちゃんではありませんが、晴れ男と自称するゴルファーがいます。晴れ女もいます。

楽しみにしていた約束のゴルフの日の朝。良いお天気と溢れんばかりのメンバーの笑顔はセットです。晴れ〇〇の自慢気な顔が愛おしいのです。

逆に、雨男、雨女もいます。僕の知り合いに、ゴルフが大好きなのに、6回でやめてしまった人がいます。この人は、ゴルフデビューから3回連続で一日中土砂降りの雨のラウンドで、その後の3回も雨交じりのラウンドという恐怖の雨男だったのです。

僕はその内の3回をご一緒しました。「天気が良い日に、ゴルフをしてみたいよ」と嘆いていた雨男は、周りの人に迷惑がかかる、という冗談のような理由でゴルフをやめてしまいました。

しかし、雨の中でゴルフコースに駆けつけたメンバーと顔を見合わせながら、互いに、こんなお天気なのに、オレたちってバカだね、と苦笑いし合う一体感は、プライスレスで感動的だったりもするのです。

晴れ〇〇や雨〇〇という迷信なんてくだらない、と笑い飛ばすのもゴルフです。それでも、ゴルフをすればするほど、迷信を信じるしかない神様のイタズラを経験するのも事実です。日本のゴルファーにとって、お天気は重要なゴルフの一部なのです。

真冬でもゴルフが出来る幸せ

数年前に、ゴルフをしない人から言われました。

「ゴルファーって、重症になると、例外なく変態になりますよね」

否定はしませんでした。フラれても、フラれても、諦めきれずに追いかけ続けるストーカーの要素もあり、足蹴にされたり、鞭で打たれるような仕打ちをされたりしても、ときには気持ち良さそうにしているのがゴルファーです。ゴルフは耐えるゲームなのだと話しても、理解してはくれませんでした。

例えば、最近ではあまりありませんが、一昔前までは、ゴルフを予定している日に台風が来るという天気予報だとワクワクしました。雨天は嫌なのですけれど、嵐の中でなければ、見たり、プレーしたりできない未体験のゴルフが待っている、と考えてしまうのです。とんでもない強風の中でのゴルフも同様ですし、皆既日食の日は、その日に有休を取ってゴルフをしたこともありました。特別な体験をしたいというのは、変態の入り口です。

真冬のゴルフでも、朝の気温が、マイナス1℃は当たり前で、マイナス5度より低くないと本格的だとは思えなくなってきています。こうなってくると、重度の変態です。

こういう変態な喜びは、密かに、自分だけで楽しむのが正解です。他の人を巻き込むと、迷惑極まりないからです。経験したい範囲や度合いは、人それぞれなのです。雪国ではなく、真冬でもゴルフが出来ることは幸せだと感謝するぐらいが、ちょうど良いわけで、意図的に挑戦するのは、やりすぎなのです。

「絶対違うのに、オレのことを雨男と言うんだよ」

怒り狂って、電話をしてきた先輩がいました。僕も何十回もゴルフにご一緒していますが、そんな印象は一切ありませんでした。よく聞いてみると、先輩と別のBさんと僕の三人が来ると雨が降るという話だったようです。

正直に告白すると、僕は、その組み合わせで雨が降るということに、薄々気が付いていました。過去にご一緒したコンペや、プライベートなラウンドで、半数ぐらいが雨だった記憶があったのです。何度目からかは忘れましたが、少なくとも5年ぐらい前には意識していました。

先輩とBさんが参加するコンペに誘われて、僕も参加予定していたのに、3日前のコースのピンポイント天気予報が降水確率60%だったことが、一昨年にもありました。このときは、コンペそのものが延期になって、結果として、有志で、そのコースに行くことになったのですが、Bさんは欠場でした。雨予報が嘘のような青空の下で、ゴルフを楽しみながら、密かに、Bさんが来なかったことに感謝したのです。

先輩を雨男呼ばわりした後輩の悪口を一通り聞いて、電話を終えました。先輩には『雨コンビ』の話はしませんでした。これからも、僕が注意すれば、被害は最小限になると思ったからです。

ゴルフの日のお天気は、日頃の行いで決まるなんて言いますが、『雨コンビ』のそれぞれに、呪われるほどの悪行があるとは思えません。なんともいえない組み合わせが生む悲劇に過ぎないのです。

雨〇〇や晴れ〇〇は、自称するのが正解です。特に、雨○○は、他人に言われて、気分が良いものではありません。

ゴルフは自然と戦うゲームだという台詞は、負けず嫌いの変態ゴルファーも少なからず存在するので、安易に使うことには賛成できません。でも、知らず知らずのうちに、大なり小なり、僕らは自然と戯れながらゴルフをしています。戦うのではなく、戯れるぐらいのゴルフが、ほとんどのケースで正解なのです。

【著者紹介】篠原嗣典

ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
 
 

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