打打打坐 第11回【ドライバーでスコアは出せるか?】
打打打坐(ちょうちょうだざ)とは、打ちまくって瞑想の境地に入るという造語。コースで打たなければわからないと試打ラウンドだけで年間50ラウンド以上しているロマン派ゴルフ作家が、瞑想、妄想、迷走…… 徒然なるままにゴルフを想い、語るというお話。
配信日時: 2020年6月26日 06時00分
ドライバー自慢の色々
ドライバーが命だというゴルファーはたくさんいます。練習場で、ドライバーばかりを練習している潜在的なドライバーマニアは、むしろ、多数派のようにも見えます。
ゴルフ談義をしていると、ドライバー自慢の人の声の大きさは“あるある”の領域で、様々なドライバー自慢がいます。基本的には、聞き役に徹して、相づちだけを繰り返すようにしています。大人しく聞くようになったのには、きっかけがあります。
十数年前のことですが、僕らのゴルフ仲間に入りたいと希望する人がいたのです。
「僕の自慢は、ドライバーで4年間、1回もOBを打っていないことです」
この人のドライバー自慢でした。
それは、それとして、凄いことなのですが、この人のドライバーは、とにかく飛ばないのです。飛距離は180ヤードに届いていませんでした。飛ぶ人なら、ミドルアイアンでも打てる距離です。OBを打たないことの価値が違うと思ったのです。僕は未熟でした。何も考えずに、そのままを口にしたのです。
その次の集まりの時に、スタートホールが谷越えのパー4で、谷はOBでした。明らかに緊張した雰囲気で、ぎこちなく構えたその人のドライバーショットは、谷底のOBに一直線に消えていきました。4年間の記録が終わった瞬間でした。そのラウンドを最後に、その人は僕らの前から姿を消しました。
猛烈に後悔しました。ゴルフの楽しみ方は、ゴルファーの数だけ用意されているものだと、当時から書いたり、言ったりしていた自分が、薄っぺらで無責任な人間に思えて凹みました。
それから、ドライバー自慢は大人しく聞いて、相づちをうつだけにしようと決めたのです。ドライバー自慢は、無邪気で、罪がないものです。空想や願望が入ってしまって、膨れている話もありますが、それですら、元気いっぱいの子供を見ているようなつもりで聞けば、そんなに退屈でもないのです。
ゴルフ談義をしていると、ドライバー自慢の人の声の大きさは“あるある”の領域で、様々なドライバー自慢がいます。基本的には、聞き役に徹して、相づちだけを繰り返すようにしています。大人しく聞くようになったのには、きっかけがあります。
十数年前のことですが、僕らのゴルフ仲間に入りたいと希望する人がいたのです。
「僕の自慢は、ドライバーで4年間、1回もOBを打っていないことです」
この人のドライバー自慢でした。
それは、それとして、凄いことなのですが、この人のドライバーは、とにかく飛ばないのです。飛距離は180ヤードに届いていませんでした。飛ぶ人なら、ミドルアイアンでも打てる距離です。OBを打たないことの価値が違うと思ったのです。僕は未熟でした。何も考えずに、そのままを口にしたのです。
その次の集まりの時に、スタートホールが谷越えのパー4で、谷はOBでした。明らかに緊張した雰囲気で、ぎこちなく構えたその人のドライバーショットは、谷底のOBに一直線に消えていきました。4年間の記録が終わった瞬間でした。そのラウンドを最後に、その人は僕らの前から姿を消しました。
猛烈に後悔しました。ゴルフの楽しみ方は、ゴルファーの数だけ用意されているものだと、当時から書いたり、言ったりしていた自分が、薄っぺらで無責任な人間に思えて凹みました。
それから、ドライバー自慢は大人しく聞いて、相づちをうつだけにしようと決めたのです。ドライバー自慢は、無邪気で、罪がないものです。空想や願望が入ってしまって、膨れている話もありますが、それですら、元気いっぱいの子供を見ているようなつもりで聞けば、そんなに退屈でもないのです。
ドライバーでバーディーを
ドライバーショットが、良い当たりで、フェアウェイの真ん中に飛んでいったときに「よっしゃー! バーディーが見えた〜!」と、はしゃぐ人がいます。半分本気で、半分は冗談で、喜びを爆発させつつ、周囲を和ませるハウツーとしては上級です。
多くの場合は、次打で大失敗して、更に周囲を和ませるという決まり切ったパターンになります。それもゴルフでは、仲間と楽しむならプライスレスな瞬間です。
ドライバーショットで、バーディーをとれるとしたら、パー4のワンオンが最も確実です。しかし、それを狙える資格がある人はごく一部ですし、パー4でワンオンしても、そこから3パットのパー、ということも“あるある”です。
冗談を真面目に突き詰めるのは、無粋ですが、ドライバーのナイスショットでゴルフ台無しにしてしまうゴルファーがたくさんいることが、もったいないので、ついつい、書きたくなりました。
素晴らしいドライバーショットの後、ショットが乱れたり、3パットしたり、色々とミスをしがちなのは、配分を間違えているからなのです。
ゴルフは、メンタルを試されるゲームですが、メンタルにはスタミナがあります。それも、全体だけではなく、毎ホールごとに、ホール内のメンタル的スタミナがあるのです。例えば、パー4のホール、ドライバー、2打目、寄せ、パットの4つのショットの分類があるとして、100%を25%ずつの4つで良いのでしょうか?
ピンに近づくほど、メンタルのスタミナは消費されます。つまり、後半にたくさん残しておくのがセオリーなのです。ドライバーで使うメンタル的スタミナは最小限にすることが、強いゴルフをするコツになります。
確実に次打を打てるところに運べば、ドライバーのお仕事は終わりです。多くの人のバッグの中の14本で、構造上最も易しいクラブはドライバーなのです。メンタルを削らなくとも、ちゃんと打てるように、お膳立てできているのです。
多くの場合は、次打で大失敗して、更に周囲を和ませるという決まり切ったパターンになります。それもゴルフでは、仲間と楽しむならプライスレスな瞬間です。
ドライバーショットで、バーディーをとれるとしたら、パー4のワンオンが最も確実です。しかし、それを狙える資格がある人はごく一部ですし、パー4でワンオンしても、そこから3パットのパー、ということも“あるある”です。
冗談を真面目に突き詰めるのは、無粋ですが、ドライバーのナイスショットでゴルフ台無しにしてしまうゴルファーがたくさんいることが、もったいないので、ついつい、書きたくなりました。
素晴らしいドライバーショットの後、ショットが乱れたり、3パットしたり、色々とミスをしがちなのは、配分を間違えているからなのです。
ゴルフは、メンタルを試されるゲームですが、メンタルにはスタミナがあります。それも、全体だけではなく、毎ホールごとに、ホール内のメンタル的スタミナがあるのです。例えば、パー4のホール、ドライバー、2打目、寄せ、パットの4つのショットの分類があるとして、100%を25%ずつの4つで良いのでしょうか?
ピンに近づくほど、メンタルのスタミナは消費されます。つまり、後半にたくさん残しておくのがセオリーなのです。ドライバーで使うメンタル的スタミナは最小限にすることが、強いゴルフをするコツになります。
確実に次打を打てるところに運べば、ドライバーのお仕事は終わりです。多くの人のバッグの中の14本で、構造上最も易しいクラブはドライバーなのです。メンタルを削らなくとも、ちゃんと打てるように、お膳立てできているのです。
ドライバーはドラマの土台を支える
ゴルフは連続ドラマみたいなものでもあります。
ドライバーは、初回から序盤の回を担当しているのです。基本設定がしっかりしていなければ、初回を見てもらえないダメドラマになってしまいます。基本設定がしっかりしていても、次への期待や楽しみがなければ次回を見てもらえません。
ドライバーをぶっ飛ばして、フェアウェイの真ん中に打てたことは、バーディーという王道のハッピーエンドに向かっていくドラマの序盤としては最高の展開だといえます。
本当にバーディーになるかどうかは、引き継いだ中盤の盛り上がり、そして何より、最終回が大切なのです。積み重ねも大事ですけど、それを無駄にせずに、ちゃんとラストシーンが盛り上がるかが勝負なのです。
初回だけでハッピーエンドになるようなドラマは、面白くありませんし、そもそも、存在しないのです。
ゴルフは、複数の主役が交代しながら紡ぐドラマです。ドライバーが飛距離を稼ぎ、アイアンでグリーンに乗せて、パターでホールアウトさせる。主役の役割は明確に決まっています。一つのホールは、シーズン1みたいなもので、シーズン18まであるシリーズドラマとしての完成度がラウンドのスコアになっていくものだと考えれば、ドラマが好きか嫌いかは別として、ゴルフが簡単になってくるかもしれません。
ドライバーで無理をして、次に繋がらない結果になれば、ドラマはぶち壊しです。ドライバーは、一見、華々しいクラブですが、実は、土台を支える地味な役割を担っています。強いゴルフをするゴルファーは、ドライバーで無理をしても、多くの場合で実を結ばないことを知っていて、ポイントは確実性にあると考えているものです。
頭ではわかっていても、1センチでも先に飛ばしたいという願望を完全に抑えるのは難しいのがゴルフです。初回から全力投球で、中盤回もリスクを無視して狙い続けて、最終回には疲労困憊で惜しいゴルフを繰り返すのも間違いと言い切れません。
ゴルフの魅力の一つは、面白さや楽しみ方が数え切れないほど用意されていることです。その結果、全く同じゴルフをしているのに、Aさんには楽しく、Bさんには苦痛だったりもします。世の中には、幸福は存在せずに、不幸だけがあるという説があります。それでも、幸福に見える人がいるのは、自分に合った不幸を選択できたからなのだそうです。ゴルフにおいて、ドライバーというギアの役割を考えるときに、いつもその説を思いだしてしまうのです。
ドライバーでスコアは出せるか? という問いには、ハイレベルで安定したスコアを出すためには、ドライバーの安定は不可欠です、と答えるのが模範解答です。
ドライバーは、初回から序盤の回を担当しているのです。基本設定がしっかりしていなければ、初回を見てもらえないダメドラマになってしまいます。基本設定がしっかりしていても、次への期待や楽しみがなければ次回を見てもらえません。
ドライバーをぶっ飛ばして、フェアウェイの真ん中に打てたことは、バーディーという王道のハッピーエンドに向かっていくドラマの序盤としては最高の展開だといえます。
本当にバーディーになるかどうかは、引き継いだ中盤の盛り上がり、そして何より、最終回が大切なのです。積み重ねも大事ですけど、それを無駄にせずに、ちゃんとラストシーンが盛り上がるかが勝負なのです。
初回だけでハッピーエンドになるようなドラマは、面白くありませんし、そもそも、存在しないのです。
ゴルフは、複数の主役が交代しながら紡ぐドラマです。ドライバーが飛距離を稼ぎ、アイアンでグリーンに乗せて、パターでホールアウトさせる。主役の役割は明確に決まっています。一つのホールは、シーズン1みたいなもので、シーズン18まであるシリーズドラマとしての完成度がラウンドのスコアになっていくものだと考えれば、ドラマが好きか嫌いかは別として、ゴルフが簡単になってくるかもしれません。
ドライバーで無理をして、次に繋がらない結果になれば、ドラマはぶち壊しです。ドライバーは、一見、華々しいクラブですが、実は、土台を支える地味な役割を担っています。強いゴルフをするゴルファーは、ドライバーで無理をしても、多くの場合で実を結ばないことを知っていて、ポイントは確実性にあると考えているものです。
頭ではわかっていても、1センチでも先に飛ばしたいという願望を完全に抑えるのは難しいのがゴルフです。初回から全力投球で、中盤回もリスクを無視して狙い続けて、最終回には疲労困憊で惜しいゴルフを繰り返すのも間違いと言い切れません。
ゴルフの魅力の一つは、面白さや楽しみ方が数え切れないほど用意されていることです。その結果、全く同じゴルフをしているのに、Aさんには楽しく、Bさんには苦痛だったりもします。世の中には、幸福は存在せずに、不幸だけがあるという説があります。それでも、幸福に見える人がいるのは、自分に合った不幸を選択できたからなのだそうです。ゴルフにおいて、ドライバーというギアの役割を考えるときに、いつもその説を思いだしてしまうのです。
ドライバーでスコアは出せるか? という問いには、ハイレベルで安定したスコアを出すためには、ドライバーの安定は不可欠です、と答えるのが模範解答です。
【著者紹介】篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家・ゴルフギアライター。ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、現在はゴルフエッセイストとして活躍中。
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