クラブの進化と、インパクトで強く“叩く”行為の後始末【記者の目】
クラブの進化と、インパクトで強く“叩く”行為の後始末【記者の目】
配信日時: 2019年9月26日 02時27分
写真は、数十年前のクラブを試打するローリー・マキロイだ。欧州男子ツアー「アルフレッド・ダンヒル・リンクス選手権」の練習日の1シーンで、30歳のマキロイにとって、当時のクラブを新鮮に感じただろうか。現代ゴルファーには、こんなクラブを手にするマキロイの姿自体が、新鮮に映る。そして、改めて昔のクラブと現代クラブの違いに思いを馳せてしまう。
昔から下手な筆者には、“インパクトで強く叩く”というフィーリング、本能というか“悪癖”がある。そして、もう死語としたい、オサラバしたい言葉でもある。マキロイが昔のパーシモンを打つ姿に心がざわつき、下手な自分のこじらせた感情と向き合わざる得なかった。
ドライバーが43インチ前後、中身の詰まった球持ちのいいパーシモンに、潰れるボール……、それはそれは現代とは比較にならないほど“球持ち”の良かった当時のクラブ。操作性の極めていい小ぶりなヘッドに、短いシャフト、反発の低いもの同士の組み合わせ。インパクトで操作できたが故に“叩けた”し、叩かなければ飛ばせなかったのかもしれない。
いや、それは下手な筆者の誤解だろう。数十年前から、名手は流れるような美しいスイングから、強く叩いて見えない選手も多くいた。当たり前だが、インパクトで強く叩いて良いことなどない。成功すれば“叩けた”快感だけは残るが、ほとんどが後始末に追われるだけ。球は曲がり、ミスヒットが増えるだけでなく、ショートアイアンは奥や左に外れて雪だるま式にスコアが増えていく。アプローチ、パットでも“パンチ”という不意な加速癖に悩まされるのだ……。(筆者だけかもしれないが)
「ミスに強い現代クラブなら、叩いても曲がらないのではないか」。そんな淡い期待がいつも上達を阻害してきた。昔よりもクラブは遥かに軽くて長い。重心距離も長くなり、重心深度はより深く、左右慣性モーメントも大きく引き上がっている。ミスに強いのだから、叩いても大丈夫そうな気もする……、が、最新クラブのほとんどがその甘さを否定した。そもそもクラブの進化自体が“インパクトで叩けない”方向になっている。クラブが求める動きとケンカしていいことは一つもなかった。
プロならともかく、急加速・急出力で、インパクトの一瞬をコントロールし切ることなど、どんな時代でもナンセンス。そして、インパクトゾーンで動きづらい挙動を手に入れ、ヘッドの反発性が引き上がったクラブは、“叩かれる”ことなど求めていない。
必要なのは、急出力による一瞬の力強い打撃ではなく、安定した動きの中での【スピードアップ】だけなのだ。しならない金属バットで動く球を刹那で捉え、強く腕で叩く快感を野球で身につけた筆者。頭では分かっていても、本能が邪魔をする。ゴルフとは、なんと切なくも残酷な競技なのだろう……。得意な叩き癖が苦しみの元となり続ける。
現代クラブは叩けなくていい、叩くと後始末が増えるだけ。流麗なスイングで飛ばす、マキロイ“先生”の姿を見るにつけ、その想いを強くする。嗚呼、本能を遮断したい……。
Text/Mikiro Nagaoka
昔から下手な筆者には、“インパクトで強く叩く”というフィーリング、本能というか“悪癖”がある。そして、もう死語としたい、オサラバしたい言葉でもある。マキロイが昔のパーシモンを打つ姿に心がざわつき、下手な自分のこじらせた感情と向き合わざる得なかった。
ドライバーが43インチ前後、中身の詰まった球持ちのいいパーシモンに、潰れるボール……、それはそれは現代とは比較にならないほど“球持ち”の良かった当時のクラブ。操作性の極めていい小ぶりなヘッドに、短いシャフト、反発の低いもの同士の組み合わせ。インパクトで操作できたが故に“叩けた”し、叩かなければ飛ばせなかったのかもしれない。
いや、それは下手な筆者の誤解だろう。数十年前から、名手は流れるような美しいスイングから、強く叩いて見えない選手も多くいた。当たり前だが、インパクトで強く叩いて良いことなどない。成功すれば“叩けた”快感だけは残るが、ほとんどが後始末に追われるだけ。球は曲がり、ミスヒットが増えるだけでなく、ショートアイアンは奥や左に外れて雪だるま式にスコアが増えていく。アプローチ、パットでも“パンチ”という不意な加速癖に悩まされるのだ……。(筆者だけかもしれないが)
「ミスに強い現代クラブなら、叩いても曲がらないのではないか」。そんな淡い期待がいつも上達を阻害してきた。昔よりもクラブは遥かに軽くて長い。重心距離も長くなり、重心深度はより深く、左右慣性モーメントも大きく引き上がっている。ミスに強いのだから、叩いても大丈夫そうな気もする……、が、最新クラブのほとんどがその甘さを否定した。そもそもクラブの進化自体が“インパクトで叩けない”方向になっている。クラブが求める動きとケンカしていいことは一つもなかった。
プロならともかく、急加速・急出力で、インパクトの一瞬をコントロールし切ることなど、どんな時代でもナンセンス。そして、インパクトゾーンで動きづらい挙動を手に入れ、ヘッドの反発性が引き上がったクラブは、“叩かれる”ことなど求めていない。
必要なのは、急出力による一瞬の力強い打撃ではなく、安定した動きの中での【スピードアップ】だけなのだ。しならない金属バットで動く球を刹那で捉え、強く腕で叩く快感を野球で身につけた筆者。頭では分かっていても、本能が邪魔をする。ゴルフとは、なんと切なくも残酷な競技なのだろう……。得意な叩き癖が苦しみの元となり続ける。
現代クラブは叩けなくていい、叩くと後始末が増えるだけ。流麗なスイングで飛ばす、マキロイ“先生”の姿を見るにつけ、その想いを強くする。嗚呼、本能を遮断したい……。
Text/Mikiro Nagaoka