アン・ソンジュ、申ジエ、鈴木愛。スタッツから見える、今季使用ギアの通信簿【記者の目】
アン・ソンジュ、申ジエ、鈴木愛。スタッツから見える、今季使用ギアの通信簿【記者の目】
配信日時: 2018年11月27日 02時41分
2018年の国内女子ツアーが終了した。賞金女王は5勝のアン・ソンジュ。2位は4勝中メジャーが3勝の申ジエ。そして、3位は序盤で4勝するも怪我に泣いた鈴木愛である。クラブ契約フリーのワン・ツーフィニッシュとなったわけだが、2018年の賞金レースを牽引した3人は、昨季と何が良くなり、何が悪くなったのか? スタッツと関連するギアを紐解いてみたい。
■ 今季ウェッジが◎だったアン・ソンジュ、鈴木愛
まずは、賞金女王のアン・ソンジュ。昨季とスタッツを比べてみると、大幅な数字の上昇が見られたのは、ウェッジショットだった。アプローチの成否を示す【リカバリー率】が7.7%上昇し、29位から1位に向上。しかも、【サンドセーブ率】はなんと25.2%も引き上げることに成功し、こちらは83位から3位に向上。
アンは開幕戦から大きな変更として、金属の塊から精密に削り出されるカスタムパーツのモダート『MWC T55』ウェッジを投入していた。9月にはアイアンと同じミズノ『S18』ウェッジへと移行したが、「夏と秋では芝が違うので」と、状況に応じて最適なものを選び分ける作戦が奏功。
また、PING『グライド2.0』ウェッジを使い続ける鈴木愛も、アン・ソンジュほどではないが、【リカバリー率】と【サンドセーブ率】を大きく引き上げた。対して、申ジエは【リカバリー率】で昨季より2.5%ほどポイントを落としており、争う2人とはその点が大きく異なっていた。
■ FWキープ率に明暗。鈴木愛は怪我の影響か
次に、大幅な数字の向上が見られたのが、アン・ソンジュの【FWキープ率】だ。昨季より4.5%近くアップ、飛距離も約1ヤードの伸び。既報のとおり、今季5勝のドライバースペックがすべて異なり、夏前からグラファイトデザイン『ツアーAD TP』へ移行してから方向安定性を手に入れたアン。その後はヘッドを替えるものの、エースシャフトを見つけた様子。
かたや、1.7ヤード近く飛距離を伸ばした鈴木愛だが、【FWキープ率】は3%ほどダウンしてしまった。鈴木は昨季途中からドライバーのスペック変更を行っておらず、やはり怪我の影響と見るのが正解か。ただし、怪我がありながらも、飛距離は伸びているのだが…。
申ジエもまた【FWキープ率】を引き上げた一人。こちらはキャロウェイ『ローグサブゼロ』かテーラーメイド『M2』かのほぼ2択だが、46インチを越えるアン・ソンジュとは違い、最終戦では44.25インチの短尺ドライバーで飛距離にとらわれずに【FWキープ率】を高めていたのが印象的だった。
■ なんといっても、計9勝のミズノ『ミズノプロ518』!
最後に、【パーオン率】に目を移してみよう。こちらを大幅に引き上げたのは申ジエ。契約フリーでありながら、国内女子ツアーで誰よりも早く『ミズノプロ518』の良さに気づいて使用し始めたジエ。今季は最後までこのアイアンを変更することなく、昨季より3.6%引き上げ、自己最高の「75.3358」で1位に。
ちなみに、ジエは【平均パット数】が昨季よりも落ちている。そして、前述の通り、【リカバリー率】もダウンした状況の中、【平均ストローク】を引き上げることに成功したのは、この高い【パーオン率】が貢献したのは間違いない。加えて、メジャーなどの難条件の勝負どころでピンを刺しまくる集中力を発揮できるのは、使い慣れて信頼性の高いこのアイアンを替えないからだとも言える。
今季からジエと同じ『ミズノプロ518』に移行したアン・ソンジュも同様だ。ドライバーやウェッジは何度も交換をしたが、今季は開幕からアイアンだけは不変。アンは「今年から使い始めた『ミズノプロ518』ですが、本当に打った感触が良くて思った通りの球が打てる。ツアーを戦う中で、大きな支えになりました」と語る。
この2人の事例から、【クラブ契約フリーでも、使い慣れたアイアンを替えることには途轍もないリスクを伴う】ことが読み取れるだろうか。海外のトッププロも同様だが、使い慣れたアイアンをころころ替えて活躍するケースはほぼ皆無に近い。
■ 鈴木愛が【パーオン率】を引き上げたら……無敵!?
最終戦を制したジエも「今季はこの大会含めて4勝目、そのうちメジャーで3勝もすることができました。それも沢山のチャンスを作ってくれた『ミズノプロ518』のおかげです。今年1年このアイアンと戦ってきて最高の締めくくりをすることができました」と言う。
かたや、鈴木愛はどうか。ドライバーでは怪我の影響を感じさせたが、使い慣れたPING『i200』で【パーオン率】は昨季よりも0.4%向上させていた。ただし、今季【パーオン率】を引き上げる選手が多かったため、それでも昨季の11位から17位へ順位を落としていた。
ご存知の通り、アン・ソンジュや申ジエよりも【平均パット数】で上回る鈴木のこと。来季、賞金女王奪還のカギとなるのは、この【パーオン率】の向上ではないだろうか。既に【リカバリー率】も引き上げ、死角はない。気は早すぎるが、仮に今季のジエほど【パーオン率】を引き上げられたあかつきには、圧倒的な勝利数を記録しての賞金女王奪還……となる気がしてならない。
Text/Mikiro Nagaoka
■ 今季ウェッジが◎だったアン・ソンジュ、鈴木愛
まずは、賞金女王のアン・ソンジュ。昨季とスタッツを比べてみると、大幅な数字の上昇が見られたのは、ウェッジショットだった。アプローチの成否を示す【リカバリー率】が7.7%上昇し、29位から1位に向上。しかも、【サンドセーブ率】はなんと25.2%も引き上げることに成功し、こちらは83位から3位に向上。
アンは開幕戦から大きな変更として、金属の塊から精密に削り出されるカスタムパーツのモダート『MWC T55』ウェッジを投入していた。9月にはアイアンと同じミズノ『S18』ウェッジへと移行したが、「夏と秋では芝が違うので」と、状況に応じて最適なものを選び分ける作戦が奏功。
また、PING『グライド2.0』ウェッジを使い続ける鈴木愛も、アン・ソンジュほどではないが、【リカバリー率】と【サンドセーブ率】を大きく引き上げた。対して、申ジエは【リカバリー率】で昨季より2.5%ほどポイントを落としており、争う2人とはその点が大きく異なっていた。
■ FWキープ率に明暗。鈴木愛は怪我の影響か
次に、大幅な数字の向上が見られたのが、アン・ソンジュの【FWキープ率】だ。昨季より4.5%近くアップ、飛距離も約1ヤードの伸び。既報のとおり、今季5勝のドライバースペックがすべて異なり、夏前からグラファイトデザイン『ツアーAD TP』へ移行してから方向安定性を手に入れたアン。その後はヘッドを替えるものの、エースシャフトを見つけた様子。
かたや、1.7ヤード近く飛距離を伸ばした鈴木愛だが、【FWキープ率】は3%ほどダウンしてしまった。鈴木は昨季途中からドライバーのスペック変更を行っておらず、やはり怪我の影響と見るのが正解か。ただし、怪我がありながらも、飛距離は伸びているのだが…。
申ジエもまた【FWキープ率】を引き上げた一人。こちらはキャロウェイ『ローグサブゼロ』かテーラーメイド『M2』かのほぼ2択だが、46インチを越えるアン・ソンジュとは違い、最終戦では44.25インチの短尺ドライバーで飛距離にとらわれずに【FWキープ率】を高めていたのが印象的だった。
■ なんといっても、計9勝のミズノ『ミズノプロ518』!
最後に、【パーオン率】に目を移してみよう。こちらを大幅に引き上げたのは申ジエ。契約フリーでありながら、国内女子ツアーで誰よりも早く『ミズノプロ518』の良さに気づいて使用し始めたジエ。今季は最後までこのアイアンを変更することなく、昨季より3.6%引き上げ、自己最高の「75.3358」で1位に。
ちなみに、ジエは【平均パット数】が昨季よりも落ちている。そして、前述の通り、【リカバリー率】もダウンした状況の中、【平均ストローク】を引き上げることに成功したのは、この高い【パーオン率】が貢献したのは間違いない。加えて、メジャーなどの難条件の勝負どころでピンを刺しまくる集中力を発揮できるのは、使い慣れて信頼性の高いこのアイアンを替えないからだとも言える。
今季からジエと同じ『ミズノプロ518』に移行したアン・ソンジュも同様だ。ドライバーやウェッジは何度も交換をしたが、今季は開幕からアイアンだけは不変。アンは「今年から使い始めた『ミズノプロ518』ですが、本当に打った感触が良くて思った通りの球が打てる。ツアーを戦う中で、大きな支えになりました」と語る。
この2人の事例から、【クラブ契約フリーでも、使い慣れたアイアンを替えることには途轍もないリスクを伴う】ことが読み取れるだろうか。海外のトッププロも同様だが、使い慣れたアイアンをころころ替えて活躍するケースはほぼ皆無に近い。
■ 鈴木愛が【パーオン率】を引き上げたら……無敵!?
最終戦を制したジエも「今季はこの大会含めて4勝目、そのうちメジャーで3勝もすることができました。それも沢山のチャンスを作ってくれた『ミズノプロ518』のおかげです。今年1年このアイアンと戦ってきて最高の締めくくりをすることができました」と言う。
かたや、鈴木愛はどうか。ドライバーでは怪我の影響を感じさせたが、使い慣れたPING『i200』で【パーオン率】は昨季よりも0.4%向上させていた。ただし、今季【パーオン率】を引き上げる選手が多かったため、それでも昨季の11位から17位へ順位を落としていた。
ご存知の通り、アン・ソンジュや申ジエよりも【平均パット数】で上回る鈴木のこと。来季、賞金女王奪還のカギとなるのは、この【パーオン率】の向上ではないだろうか。既に【リカバリー率】も引き上げ、死角はない。気は早すぎるが、仮に今季のジエほど【パーオン率】を引き上げられたあかつきには、圧倒的な勝利数を記録しての賞金女王奪還……となる気がしてならない。
Text/Mikiro Nagaoka