“欧州年間王者”を争うモリナリ&フリートウッド、飛躍の理由は契約フリー?【記者の目】
“欧州年間王者”を争うモリナリ&フリートウッド、飛躍の理由は契約フリー?【記者の目】
配信日時: 2018年11月15日 07時13分
<DPワールドツアー選手権 事前情報◇13日◇ジュメイラGエステーツ(7,675ヤード・パー72)>
今週は、欧州男子ツアーの最終戦「DPワールドツアー選手権」が開幕し、2018年の年間王者が決定する。現在の「レース・トゥ・ドバイ」ポイントランクトップを独走するのは、36歳のフランチェスコ・モリナリ(イタリア)。2位は、昨季の年間王者トミー・フリートウッド(イングランド)。
フリートウッドが年間王者の座を保持するには、自身が優勝した上で、モリナリが6位以下となるしかない。そんな有利な状況でもモリナリは、ライダーカップで共に戦ったフリートウッドをリスペクトしている。「(今季は)私にとって夢のような信じられないシーズン。今年のすべてのことが素晴らしい思い出としてたくさん残っています。でも、中でも最高の記憶は、私たちです。フランスで彼と一緒にやったこと(フリートウッドと組んでのライダーカップの勝利)」(フランチェスコ・モリナリ)
そして、「私にとっては夢のシーズンだし、このポジションでここにいるのはいいこと。うまくいけば私はそれを閉じる(年間王者になる)ことができるでしょう」としつつも、「それは簡単ではないことを知っていますし、最善を尽くします」。年間王者がどちらになるかはさておき、仲良しの2人はなぜここ数年で急激に輝き始めたのか。直近の世界ランキングと同週の過去の年を比較してみよう。
■フランチェスコ・モリナリ
2018年11月 7位(6.6496pt)※欧州王者?
2017年11月 21位(4.0579pt)
2016年11月 37位(3.1553pt)
2015年11月 70位(2.0885pt)
■トミー・フリートウッド
2018年11月 10位(5.9785pt)
2017年11月 19位(4.4652pt)※欧州王者
2016年11月 151位(1.1485pt)
2015年11月 69位(2.0911pt)
モリナリは2016年から毎年大きく順位を上げ、今季は「全英オープン」「BMW PGA選手権」「クイッケンローンズナショナル」制覇で世界トップレベルに達した。そして、フリートウッドは、2016年の151位から昨季に飛躍。筆者は元ナイキ契約の2人が、2016年途中を境にクラブ契約フリーになったことと無関係とは思えない。
現在、来日中のブルックス・ケプカも同様だ。ケプカも、2016年終盤にテーラーメイドのドライバーを使い初めてから飛距離を大幅に伸ばしており、モリナリも2017年1月から『M2』。ここ数年の彼のドライビングスタッツを振り返ってみよう。
■フランチェスコ・モリナリ(欧州ツアースタッツ)
277.5y(2011)⇒276.55y(2012)⇒284.71y(2013)⇒282.2y(2014)⇒279.35y(2015)⇒285.98y(2016)⇒296.89(2017)⇒304.5y(2018)
身長172cmと小柄な36歳。飛躍的に飛距離を伸ばしたのが昨季だったのがおわかりだろう。(2016年も伸ばしていたが、さらに伸ばした)モリナリはもちろん、トレーニングによるパワーアップも図っている。そこで、ヘッドスピードの推移をPGAツアースタッツで確認してみよう。
2015年 49.39m/s(140位)281.6y
2016年 49.94m/s(111位)286.7y
2017年 50.17m/s(123位)291.9y ※M2使用
2018年 50.39m/s(111位)301y ※M4使用
パワーアップは図られているが、実際のヘッドスピードの伸びは、2015年と2018年では1m/sしかアップしていないことが分かる。それに対して、飛距離の伸びはPGAツアースタッツで約20ヤード、欧州ツアースタッツで約25ヤードだ。
ヘッドスピードが1m/s上がることによる飛距離アップは最大効率の理想値で6ヤードが上限と言われる。クラブビジネスから撤退した今だから言えることだが、ナイキのドライバーよりもテーラーメイドのドライバーの方が遥かにモリナリに合っていると言える。
■トミー・フリートウッド(欧州ツアースタッツ)
272.5y(2011)⇒294.57y(2012)⇒294.32y(2013)⇒293.6y(2014)⇒296.99y(2015)⇒295.2y(2016)⇒299.66(2017)⇒307y(2018)
27歳と若いフリートウッドは、プロ入りからずっとナイキ。2016年の撤退後でも、現在までナイキのアイアンは替えの効かない存在となっている。ドライバーをテーラーメイド『M3 460』に替えたのは2018年1月からで、スタッツを見るとやはり大幅に伸びていた。昨季はナイキ『ヴェイパーフライプロ』の後にタイトリスト『917D2』に移行していた。
これはトレーニング効果なのか?記録の残る範囲でPGAツアースタッツも見てみる。
2015年 52.49m/s(順位なし)298.1y
2016年 記録なし
2017年 50.99m/s(順位なし)295.2y
2018年 52.34m/s(86位)306.9y ※M3 460使用
2016年以前は出場自体が少ないため、データが満足に取れていないものの、2017年は10試合、2018年は19試合の出場で、ヘッドスピードが1.35m/sのアップに対し、11.7ヤードの伸びを記録していた。フリートウッドもモリナリ同様、テーラーメイドのドライバーの方が合っていると言える。
欧州の年間王者をここ数年で争うようになった、フリートウッドとモリナリ。いろんな共通点も違いもあるが、筆者はやはりクラブ契約フリーで飛躍したと見てしまうのだが、いかがだろうか。はたしてどちらが年間王者になるのか、まずは初日に注目したい。
Text/Mikiro Nagaoka
今週は、欧州男子ツアーの最終戦「DPワールドツアー選手権」が開幕し、2018年の年間王者が決定する。現在の「レース・トゥ・ドバイ」ポイントランクトップを独走するのは、36歳のフランチェスコ・モリナリ(イタリア)。2位は、昨季の年間王者トミー・フリートウッド(イングランド)。
フリートウッドが年間王者の座を保持するには、自身が優勝した上で、モリナリが6位以下となるしかない。そんな有利な状況でもモリナリは、ライダーカップで共に戦ったフリートウッドをリスペクトしている。「(今季は)私にとって夢のような信じられないシーズン。今年のすべてのことが素晴らしい思い出としてたくさん残っています。でも、中でも最高の記憶は、私たちです。フランスで彼と一緒にやったこと(フリートウッドと組んでのライダーカップの勝利)」(フランチェスコ・モリナリ)
そして、「私にとっては夢のシーズンだし、このポジションでここにいるのはいいこと。うまくいけば私はそれを閉じる(年間王者になる)ことができるでしょう」としつつも、「それは簡単ではないことを知っていますし、最善を尽くします」。年間王者がどちらになるかはさておき、仲良しの2人はなぜここ数年で急激に輝き始めたのか。直近の世界ランキングと同週の過去の年を比較してみよう。
■フランチェスコ・モリナリ
2018年11月 7位(6.6496pt)※欧州王者?
2017年11月 21位(4.0579pt)
2016年11月 37位(3.1553pt)
2015年11月 70位(2.0885pt)
■トミー・フリートウッド
2018年11月 10位(5.9785pt)
2017年11月 19位(4.4652pt)※欧州王者
2016年11月 151位(1.1485pt)
2015年11月 69位(2.0911pt)
モリナリは2016年から毎年大きく順位を上げ、今季は「全英オープン」「BMW PGA選手権」「クイッケンローンズナショナル」制覇で世界トップレベルに達した。そして、フリートウッドは、2016年の151位から昨季に飛躍。筆者は元ナイキ契約の2人が、2016年途中を境にクラブ契約フリーになったことと無関係とは思えない。
現在、来日中のブルックス・ケプカも同様だ。ケプカも、2016年終盤にテーラーメイドのドライバーを使い初めてから飛距離を大幅に伸ばしており、モリナリも2017年1月から『M2』。ここ数年の彼のドライビングスタッツを振り返ってみよう。
■フランチェスコ・モリナリ(欧州ツアースタッツ)
277.5y(2011)⇒276.55y(2012)⇒284.71y(2013)⇒282.2y(2014)⇒279.35y(2015)⇒285.98y(2016)⇒296.89(2017)⇒304.5y(2018)
身長172cmと小柄な36歳。飛躍的に飛距離を伸ばしたのが昨季だったのがおわかりだろう。(2016年も伸ばしていたが、さらに伸ばした)モリナリはもちろん、トレーニングによるパワーアップも図っている。そこで、ヘッドスピードの推移をPGAツアースタッツで確認してみよう。
2015年 49.39m/s(140位)281.6y
2016年 49.94m/s(111位)286.7y
2017年 50.17m/s(123位)291.9y ※M2使用
2018年 50.39m/s(111位)301y ※M4使用
パワーアップは図られているが、実際のヘッドスピードの伸びは、2015年と2018年では1m/sしかアップしていないことが分かる。それに対して、飛距離の伸びはPGAツアースタッツで約20ヤード、欧州ツアースタッツで約25ヤードだ。
ヘッドスピードが1m/s上がることによる飛距離アップは最大効率の理想値で6ヤードが上限と言われる。クラブビジネスから撤退した今だから言えることだが、ナイキのドライバーよりもテーラーメイドのドライバーの方が遥かにモリナリに合っていると言える。
■トミー・フリートウッド(欧州ツアースタッツ)
272.5y(2011)⇒294.57y(2012)⇒294.32y(2013)⇒293.6y(2014)⇒296.99y(2015)⇒295.2y(2016)⇒299.66(2017)⇒307y(2018)
27歳と若いフリートウッドは、プロ入りからずっとナイキ。2016年の撤退後でも、現在までナイキのアイアンは替えの効かない存在となっている。ドライバーをテーラーメイド『M3 460』に替えたのは2018年1月からで、スタッツを見るとやはり大幅に伸びていた。昨季はナイキ『ヴェイパーフライプロ』の後にタイトリスト『917D2』に移行していた。
これはトレーニング効果なのか?記録の残る範囲でPGAツアースタッツも見てみる。
2015年 52.49m/s(順位なし)298.1y
2016年 記録なし
2017年 50.99m/s(順位なし)295.2y
2018年 52.34m/s(86位)306.9y ※M3 460使用
2016年以前は出場自体が少ないため、データが満足に取れていないものの、2017年は10試合、2018年は19試合の出場で、ヘッドスピードが1.35m/sのアップに対し、11.7ヤードの伸びを記録していた。フリートウッドもモリナリ同様、テーラーメイドのドライバーの方が合っていると言える。
欧州の年間王者をここ数年で争うようになった、フリートウッドとモリナリ。いろんな共通点も違いもあるが、筆者はやはりクラブ契約フリーで飛躍したと見てしまうのだが、いかがだろうか。はたしてどちらが年間王者になるのか、まずは初日に注目したい。
Text/Mikiro Nagaoka