【記者の目】プロギアの了解済みで他社の1Wを投入。小平智、新『RS』と『ローグサブゼロ』の結果は?
【記者の目】プロギアの了解済みで他社の1Wを投入。小平智、新『RS』と『ローグサブゼロ』の結果は?
配信日時: 2018年8月29日 09時36分
先週行われた米国男子ツアーのプレーオフ第1戦、「ノーザン・トラスト」。小平智は残念ながら予選落ちに終わった。だが、既報のように昨年10月にエースを破損後、気持ち悪さを払拭できていないドライバーに関して、大き過ぎる試みを行っていた……。
⇒昨年10月のエース破損が尾を引く小平智。「ボクは全クラブ同じイメージで打つので…」
■まさかの『RS』と『ローグサブゼロ』の打ち比べ…■
初日に投入したのは、先月発売されたプロギア新『RS』ドライバー。ギリギリ反発の高初速エリアの広さがウリのヘッドである。そして、2日目には契約するプロギアの了解済みで、他社のドライバー、キャロウェイ『ローグサブゼロ』をテストすることにした。その結果が下記だ。
●初日……平均265.5ヤード、最長280ヤード、FWキープ10回、73ストローク
【試合後のコメント】
「(大切にしているティショットからの流れは?)良くなかったです。(先週からの改善は?)いや、ひとつもないです。(新投入のドライバーは?)今日の朝、決めました。良くないですね。良くないからこのスコアなんだと思います」
◎2日目…平均276.8ヤード、最長295ヤード、FWキープ10回、76ストローク
【試合後のコメント】
「(ティショットは切れているように見えたが?)気持ちよかったです。(今回は残念な結果。来週からボストンだが?)ドライバーとかショットの部分が今日は良かったので、そのままいって、小技とかみ合えば期待が持てると思います。(ショットの感触は良くなった?)そうですね」
ドライビングディスタンスはあくまでも計測ホールでの結果になるため、すべてを表すものとは言い難い。(FWなどを使った可能性もある)そして、小平自身、FWキープ率や飛距離といったデータ主義ではなく、重視するのはあくまでもフィーリング。単純な飛びではなく、求めるのは、あくまでも2打目との“つながり”だ。
【すべてのクラブを1つのスイングで振りたい】タイプだけに、ドライバーもその他のクラブも同じように気持ちよく振れた結果、左右の曲がりが整うことが最優先なのである。そこで、1つの疑問が生まれる。なぜ、テーラーメイドなどではなく、キャロウェイ『ローグサブゼロ』なのか?ということである。
■2つのヘッドはまったく違う重心距離!■
プロギアによれば、「昨年の10月以降、同一ヘッドで重心位置の違うものを30個以上もテストしてきました」と言う。重心距離がコンマゼロミリ違うものを複数個用意したが、結果的に小平のフィーリングにはハマらなかったとか。
では、なぜ新『RS』なのか? そして、なぜキャロウェイ『ローグサブゼロ』なのか? これまでに使ってきたモデル(RS-Fプロトタイプ)とはまったく別物のはずだ。そして他社を使うとすれば、普通に考えれば、3Wに長く使用してきたテーラーメイド製を選ぶのが自然な気がする。
この点について、市販からカスタムまで膨大なシャフト、ヘッドデータを詳細に計測し続けるPCMラボの筒康博に聞くと、興味深い答えが返ってきた。
「先週使ったのが新『RS』と『ローグサブゼロ』とのことで、2つはまったく違うのですごく驚きました。元エースとはまったく違うものを試して傾向を見ようとする意図だと思います。共通点があるとすれば、FP(フェースプログレッション)はほぼ同じ。サイズも似ていて、2つともフェースの弾き感が“ギリギリ”の高初速というのは共通しています。
違いはなんといっても重心距離でしょうね、35.9ミリの『RS』に対して40.6ミリの『ローグサブゼロ』への移行はかなりの驚きですよ、まったく違うターン感のヘッドですから。
SS(スイートスポット)高さも1.5ミリほど『ローグサブゼロ』の方が低く、シャフト軸からの深度は『RS』の方が3.7ミリ深い。『RS』の方が一般ゴルファーにとって打点ブレに強く、やさしく球を上げてつかまえやすいオートマドロー性能なのに対し、『ローグサブゼロ』はつかまりづらく、低スピンタイプです」
■小平智にハマる要素は、“短尺感”なのか?■
筒によれば、『RS』より『ローグサブゼロ』の方が低スピンで強い球になりやすいことには、SSの低さ以外にも重大な理由があるという。
「簡単に言えば、『ローグサブゼロ』は『RS』よりヘッドのつかまりは減りましたが、シャフトを使っている長さが短く感じるはずで、その分球が強く、操作性も上がります。同じ長さ、同じシャフトで組んだとしても、小平プロにとって『ローグサブゼロ』の方が0.5インチほど短尺化したように振っていて感じるはず。短尺感があれば、振り心地も『ローグサブゼロ』の方がしっかりに感じますしね」(筒)
これは、どういう理由なのか。
「ホーゼル上部からSS位置までの距離を計測すると、『ローグサブゼロ』の方が『RS』よりも10ミリ以上長いんですよ。加えて、スリーブのシャフトの接着寸も5ミリほど『RS』の方が浅い。つまり、同じ長さで組んだとすると、5ミリ先詰めされた上に半インチ近く『ローグサブゼロ』の方がシャフトを使っている長さが短いんです。同一シャフトの同フレックスで組んだ別ヘッドでも、先詰めされて半インチ近い短尺感が出れば、その分シャフトのしなり量は少なくなって短いアイアンなどとの整合性は整います。
プロゴルファーは【同じシャフト、同じフレックスを使ってさえいれば、ヘッドを替えても大丈夫】と思う人が多いと思いますが、ヘッドもシャフトも現実に個体差があるし、振り感は確実に変化します。たとえ、ゼロコンマ違うだけの似た重心位置のヘッドであったとしても、シャフトの感じ方が変われば、スイング中のフィーリングは同じにはなりません。そういう部分は細かくヘッドの違いを把握しないと見えてこない部分でもありますが…」
今週開幕するプレーオフ第2戦、「デル・テクノロジーズ選手権」。はたして小平智は『ローグサブゼロ』をそのまま使うのだろうか。それとも、また新たな別のヘッドをテストすることになるのだろうか。
Text/Mikiro Nagaoka
⇒昨年10月のエース破損が尾を引く小平智。「ボクは全クラブ同じイメージで打つので…」
■まさかの『RS』と『ローグサブゼロ』の打ち比べ…■
初日に投入したのは、先月発売されたプロギア新『RS』ドライバー。ギリギリ反発の高初速エリアの広さがウリのヘッドである。そして、2日目には契約するプロギアの了解済みで、他社のドライバー、キャロウェイ『ローグサブゼロ』をテストすることにした。その結果が下記だ。
●初日……平均265.5ヤード、最長280ヤード、FWキープ10回、73ストローク
【試合後のコメント】
「(大切にしているティショットからの流れは?)良くなかったです。(先週からの改善は?)いや、ひとつもないです。(新投入のドライバーは?)今日の朝、決めました。良くないですね。良くないからこのスコアなんだと思います」
◎2日目…平均276.8ヤード、最長295ヤード、FWキープ10回、76ストローク
【試合後のコメント】
「(ティショットは切れているように見えたが?)気持ちよかったです。(今回は残念な結果。来週からボストンだが?)ドライバーとかショットの部分が今日は良かったので、そのままいって、小技とかみ合えば期待が持てると思います。(ショットの感触は良くなった?)そうですね」
ドライビングディスタンスはあくまでも計測ホールでの結果になるため、すべてを表すものとは言い難い。(FWなどを使った可能性もある)そして、小平自身、FWキープ率や飛距離といったデータ主義ではなく、重視するのはあくまでもフィーリング。単純な飛びではなく、求めるのは、あくまでも2打目との“つながり”だ。
【すべてのクラブを1つのスイングで振りたい】タイプだけに、ドライバーもその他のクラブも同じように気持ちよく振れた結果、左右の曲がりが整うことが最優先なのである。そこで、1つの疑問が生まれる。なぜ、テーラーメイドなどではなく、キャロウェイ『ローグサブゼロ』なのか?ということである。
■2つのヘッドはまったく違う重心距離!■
プロギアによれば、「昨年の10月以降、同一ヘッドで重心位置の違うものを30個以上もテストしてきました」と言う。重心距離がコンマゼロミリ違うものを複数個用意したが、結果的に小平のフィーリングにはハマらなかったとか。
では、なぜ新『RS』なのか? そして、なぜキャロウェイ『ローグサブゼロ』なのか? これまでに使ってきたモデル(RS-Fプロトタイプ)とはまったく別物のはずだ。そして他社を使うとすれば、普通に考えれば、3Wに長く使用してきたテーラーメイド製を選ぶのが自然な気がする。
この点について、市販からカスタムまで膨大なシャフト、ヘッドデータを詳細に計測し続けるPCMラボの筒康博に聞くと、興味深い答えが返ってきた。
「先週使ったのが新『RS』と『ローグサブゼロ』とのことで、2つはまったく違うのですごく驚きました。元エースとはまったく違うものを試して傾向を見ようとする意図だと思います。共通点があるとすれば、FP(フェースプログレッション)はほぼ同じ。サイズも似ていて、2つともフェースの弾き感が“ギリギリ”の高初速というのは共通しています。
違いはなんといっても重心距離でしょうね、35.9ミリの『RS』に対して40.6ミリの『ローグサブゼロ』への移行はかなりの驚きですよ、まったく違うターン感のヘッドですから。
SS(スイートスポット)高さも1.5ミリほど『ローグサブゼロ』の方が低く、シャフト軸からの深度は『RS』の方が3.7ミリ深い。『RS』の方が一般ゴルファーにとって打点ブレに強く、やさしく球を上げてつかまえやすいオートマドロー性能なのに対し、『ローグサブゼロ』はつかまりづらく、低スピンタイプです」
■小平智にハマる要素は、“短尺感”なのか?■
筒によれば、『RS』より『ローグサブゼロ』の方が低スピンで強い球になりやすいことには、SSの低さ以外にも重大な理由があるという。
「簡単に言えば、『ローグサブゼロ』は『RS』よりヘッドのつかまりは減りましたが、シャフトを使っている長さが短く感じるはずで、その分球が強く、操作性も上がります。同じ長さ、同じシャフトで組んだとしても、小平プロにとって『ローグサブゼロ』の方が0.5インチほど短尺化したように振っていて感じるはず。短尺感があれば、振り心地も『ローグサブゼロ』の方がしっかりに感じますしね」(筒)
これは、どういう理由なのか。
「ホーゼル上部からSS位置までの距離を計測すると、『ローグサブゼロ』の方が『RS』よりも10ミリ以上長いんですよ。加えて、スリーブのシャフトの接着寸も5ミリほど『RS』の方が浅い。つまり、同じ長さで組んだとすると、5ミリ先詰めされた上に半インチ近く『ローグサブゼロ』の方がシャフトを使っている長さが短いんです。同一シャフトの同フレックスで組んだ別ヘッドでも、先詰めされて半インチ近い短尺感が出れば、その分シャフトのしなり量は少なくなって短いアイアンなどとの整合性は整います。
プロゴルファーは【同じシャフト、同じフレックスを使ってさえいれば、ヘッドを替えても大丈夫】と思う人が多いと思いますが、ヘッドもシャフトも現実に個体差があるし、振り感は確実に変化します。たとえ、ゼロコンマ違うだけの似た重心位置のヘッドであったとしても、シャフトの感じ方が変われば、スイング中のフィーリングは同じにはなりません。そういう部分は細かくヘッドの違いを把握しないと見えてこない部分でもありますが…」
今週開幕するプレーオフ第2戦、「デル・テクノロジーズ選手権」。はたして小平智は『ローグサブゼロ』をそのまま使うのだろうか。それとも、また新たな別のヘッドをテストすることになるのだろうか。
Text/Mikiro Nagaoka