フジクラといえば【先調子の弾き系】だが、【元調子の粘り系】を作るのは苦手なのか? | 聞きづらいことを聞く。「ルールはひとつ、禁句なし!」

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フジクラといえば【先調子の弾き系】だが、【元調子の粘り系】を作るのは苦手なのか?

『スピーダー』という、いかにも高速で弾きそうなネーミングで知られるフジクラのカーボンシャフト。先が走ってシゴトをしてくれるかもしれないけれど、上手い人や男子プロが使っている印象は薄い。ぶっちゃけて教えてください。「元調子タイプの“粘り系”って、あんまり得意じゃないんですよね?」

2021年04月08日

元調子系で評価されたシャフトも過去にあった

 
かつて海外のビッグネームが使って話題になった『初代スピーダー』を皮切りに、白い『モトーレスピーダー』、7代目を迎えた『スピーダーエボリューション』(以下、エボ)の“奇数モデル”などフジクラといえば先調子の弾き系】というイメージが先行している。一方で、男子プロが好むような元調子の粘り系シャフトは影が薄い。フジクラのツアー担当・飯田浩治氏はこう話す。

「はい、『ランバックス』や『スピーダー』のシリーズは女子ツアーでかなり支持されましたし、『エボ』シリーズを供給してからは使用率がより高まっています。ただ、男子ツアーでは、ウチのシャフトは苦戦していました。その状況を打開するために、16年からスピーダーTR』(中元調子)というシャフトの開発がスタートして、日本の男子ツアーへ投入することに。率直に言えば、そこで初めて元調子の粘り系に本腰を入れて向き合いました。当初は男子ツアーでヒアリングすると、メーカー側の想定とプロのニーズに若干のズレがあったのも事実です。それでも、『TR』は男子ツアーでモデル別の使用率1位を獲るようになりました」(以下、飯田氏)
中元調子の『スピーダーTR』と『スピーダーエボリューションTS』(GettyImages)
やはり元調子の粘り系では後れを取っていたことは否めない。その意味で『TR』が頼みの綱だったのか?

「いえいえ、世界ランクのトップであり屈指のロングヒッターでもあるダスティン・ジョンソンは、フジクラの愛用者でスピーダーエボリューションTS』という中元調子のシャフトを長く使っています。実は以前から、フジクラのシャフトはPGAツアーでも一定数のユーザーがいて、使用率1位(メーカー別)になる試合もありました」

「世界トップの多くが使う元調子系『ベンタス』でイメージは変わったはず」

ランク上位の大物プロがあまりいなかった印象があるが?

「そうです。そこで、PGAツアーのトッププレーヤーのニーズに応えるシャフトを目指して、アメリカのフジクラが開発した元調子系のモデルが『ベンタス』です。2019年にPGAツアーで供給をスタートしてから、トップランカーの使用プロがどんどん増えました。

今年のPGAツアーでは、2月までの8〜9試合で使用率1位(メーカー別)を逃したのが1試合だけ。モデル別の使用率でも『ベンタス』が上位を占めています。使用人数の内訳は『ベンタスBK(ブラック)』と『ベンタスブルー』が半々。日本の男子ツアーでは『ベンタスBK』の方が多いですね」

プロにとってシャフトは“腕代わり”のようなもの。簡単に新しいモデルに乗り換えないのではないか。
ベンタスは、『ブラック』も『ブルー』も両方とも男女問わずツアーで人気(GettyImages)
「満足できる結果やフィーリングが得られたから替えたのでしょう。たとえば、ローリー・マキロイは『ベンタスBK』の6Xをテストしたところ、ヘッドスピードとボール初速が上がったのでスイッチしました。それまでのシャフトは70g台でしたが、『ベンタスBK』に替えてからは60g台の“軽・硬”になりました。

その他にも、多くのトッププレーヤーが『ベンタスBK』を選んだし、アメリカの男女・シニアのツアーで使用プロが同時優勝しました。『ベンタス』が世界のトップランカーたちに認められたことでフジクラは元調子の粘り系シャフトを作るのが不得手”というイメージを覆せたのではないでしょうか」

ボール初速が上がると多数のトッププロが使用

「ベロコアテクノロジー」が入った先端部の強さでボール初速が上がり、低スピン。動きも少なく、暴れず球が散りません
強じんなフィジカルを武器にするモンスターたちが振りちぎるシャフトというと“棒”の印象しかない。『ベンタスBK』もやっぱり“棒”なのか? だとしたら、あえてこのシャフトに替えたのはナゼか? フジクラのシャフト開発部門のリーダーを担う、古川義仁氏はこう答える。

「PGAツアーで通用するシャフトを求めて、アメリカのフジクラが開発した『ベンタスBK』は【ここまで硬くするの?】と驚くぐらい、動きが少ないシャフトです。そういうコントロール性や叩けるフィーリングがあった上で【ボール初速が上がる】【球のバラつきが少ない】という優位性があるので、世界のトップランカーたちが使いました。

先調子=弾き系のように、シャフトがビュンと走って球を飛ばしてくれるタイプではありません。高速スイングで生まれた大きなエネルギーを効率よくボールに伝えて飛ばせる、パワーヒッターがより強く・速く振りにいける、といったアドバンテージがあります。プレーヤーのポテンシャルを引き出すタイプのシャフトと言えるでしょう」

今までのノウハウを生かさず、フジクラらしくない。それが『ベンタス』

上が『ブルー』、下が『BK』。色味は似ていても、しなり量が全く違います
これまでにフジクラが手がけた、元調子=粘り系シャフトのノウハウを生かした、というと聞こえはいいが売り文句でしかないのでは? この問いかけに対しては、フジクラの営業部門のリーダーであり“市場のニーズ”“ユーザーの声”に接する、若林雅貴氏が単刀直入に述べる。

「これまでのノウハウは全く生かしていません。ネーミングも含めて、日本で作った『スピーダー』というブランドとは全く別モノのフジクラらしくないシャフト”が『ベンタス』だからです。『スピーダー』の弾き・走りを求めるこれまでのユーザーとはまた違う層で、PGAツアーで使用率No.1を獲ったり世界のトップランカーが気に入ったハードなシャフトが打ちたい、という人たちから評価されています。アスリートやパワーヒッターといった、今までフジクラのシャフトを敬遠しがちだった人たちにも興味を抱いてもらい、使いたい・欲しいと思ってもらえるシャフトが『ベンタス』なんです」

なぜ「動きの少ない」シャフトなのに、使うプロのボール初速が上がるのか。その理屈がわからないが……。

振れば振るほど飛距離がMAX

芯を外しても負けづらい!
「ポイントは先端です。シャフト先端の曲げ剛性が高い(変形しにくい)ので、パワーをムダなく伝達してボール初速を最大化します。と同時に、打点がバラついてもヘッドがネジれにくくて球が散らばりません。これは超高弾性(70t)カーボンと高弾性カーボンを用いたマルチバイアス構造の『ベロコア テクノロジー』による効果です。シャフトの特性としては、元調子系で先がしっかりしているので、スピンが少なくて吹き上がらず球が左に行きづらい。だから叩きにいけます」(以下、古川氏)

『BK(ブラック)』と『BLUE(ブルー)』の“兄弟モデル”だが、その違いを知りたい。

「先端の剛性が高いのは、どちらも同じです。『BK』は手元の剛性を抑えた元調子ですが、全体的に硬くて振動数も高い、フジクラの中で最もハードなシャフトになっています。一方の『ブルー』は、中間から手元の剛性を抑えた中元調子で、『BK』に比べればその辺りがしなるフィーリングはあります。どちらが合うかは“好み”にもよりますが、スイングテンポや切り返しがゆったりめな人は『ブルー』の方が、トップからインパクトまで一気に振ってくる人は『BK』の方が、相性がいいのではないでしょうか」
6Xの剛性分布比較。『BK』の方が遥かにハード
プロには好まれてもアマチュアは手に負えない、となりそうだが。

「そういうわけではありません。たとえば『ブルー』は、切り返しで“タメ”が作れない人でも、手元側がしなってシャフトが“タメ”を作ってくれます。特に『BK』はハードヒッター向けな分、動きが少なくて暴れません。スイング中にヘッドがどこにあるか分かりやすいし、意図したところにヘッドが戻ってミートしやすいでしょう」

ツアーでは日米ともに60g台の支持率が急上昇

PGAツアーも国内男子ツアーも、60g台が当たり前
アマチュアのことも考えて、50g台から揃っているということなのか?

「はい。日本の一般市場のニーズに合わせて、50g台からラインナップしました。以前は“カスタムといえば6S”が王道でしたが、ここ何年かで50g台の需要が増えています」(古川氏)

また、男子プロが選ぶ重量帯にも変化があると飯田氏。

「10年以上前の国内男子ツアーでは、シャフト重量帯の使用比率が70g台と60g台で8:2くらいでした。でも今は60g台の方が多くなっています。PGAツアーだと、その流れはより顕著になり、今や比率は逆転して 2:8くらいです。PGAツアープロたちは “速く振る” ことを重視するようになり、弾道計測器が広まって、軽めの方がHSが上がりやすいと分かってきたのでしょう」
アマチュアの狙いは、もちろん、50g台!
よく耳にするのは、同じシャフトでも重量帯によって動きや特性が変わりやすい、ということだ。

「50g台の軽めだからといって、他の重量帯と性能やフィーリングが変わらないモノが作れました。というのも『エボ6』『エボ7』では、30g台〜70g台まで幅広くラインナップしています。そういう実績とノウハウがあるので、重量帯が違っても“同じシリーズ”として特性が揃っているということ。今はカーボンの材料が良くなって、軽くてもしっかりした仕上がりにできるようになったことも大きいですね」

エッジが効いたモデルにトライし続けている

2016年当時の世界最軽量の意欲作、『ゼロ スピーダー』
世界最高峰のツアーで『ベンタス』というハードなシャフトがNo.1になったが、その対極と言える、発売当時・世界最軽量の“29.5g”を達成した『ゼロ スピーダー』(16年)というモデルもフジクラは手がけている。新コンセプトの意欲作を春にリリースするのが同社のサイクルだ。それにしても、そんなにギリギリを攻めるモノ作りのマインドが知りたい。

「軽量シャフトのカテゴリーはメーカーの技術力が最も出るところであり、フジクラの強みなので“他社に負けられない”という思いで開発しました。というのも、ウチは01年
にどこよりも早く30g台の『スピーダー351』を出していましたが、そこから“最軽量”で他社と抜きつ抜かれつをして、ついに『ゼロ スピーダー』で30gを切りました。シャフトの肉厚は0.3ミリちょいの極薄。一般的なシャフトの肉厚は60g台で1ミリ弱なので、どれだけ薄いか分かっていただけると思います」

だが、軽ければいいというものでもないだろう。やはり強度が心配だ。

「もちろんです。HSが速い人が打ってもシャフトが折れないよう、耐久性にマージンを持たせて作りました。超軽量だからといって、打つ人のHSを限定していません。軽くてHSが上がりやすいけれど、頼りなさはなくてしっかり振れる、という性能が出せました。しかも、同じモノを量産しなければならない。フジクラの技術力を結集したシャフトと言って差し支えありません」

「こんなシャフトがあればもっと楽しめそう」とのワクワク感が開発のスタート

短尺ドライバー専用の意欲作、『スピーダーSLK Type-D』
19年の春モデルは、短尺用の『スピーダーSLK』が出た。短尺だからミートしやすいのならば、普通のシャフトを短くすればいいのでは?そんなギモンには“現場の声”を直に拾う、前出の若林氏が答えた。

「一般的なシャフトを短くして組むと、バランスがC5とかC6など軽くなってしまいます。『SLK』シリーズはカーボンにメタル(金属管)をコンポジットして、先端の剛性を高くせずに先重心にしました。それによって、一般的なシャフトより1インチ短くても、バランスがしっかり出るし振心地が変わりません。ただ短くしたのではなくて“その先”まで見据えたシャフトなんです。実際のところ、予想よりも幅広い人たちに受け入れていただきました」

ちなみに、モデル名の「K」は“古川のK”と、もっぱらのウワサだ。その古川氏は以下に続ける。

「ドライバーがどうしてもまとまらなかったり当たらないのならば、短くしたらイケるかな、というシンプルな発想で手がけたシャフトが『SLK』シリーズです。超軽量の『ゼ
スピーダー』とともに、われわれ技術・開発サイドが“こういうシャフトがあったらイイよね、ゴルフがもっと楽しくなりそうだな”という思いがスタートにありました」

ここ10年で材料も設計も劇的に進化

巷では、【カーボンシャフトの進化はもう頭打ち】、なんてディスる人もいるが、ホントはどうなのか?

「ここ10年で、材料や設計は劇的に進化しました。材料が良くなったことで、今までできなかった設計ができるようにもなっています。最新作の『プラチナム スピーダー』で言えば、発売した6年前には30g台は出せませんでした。しかし、カーボンシートなどの質が向上して強度が出せたので、30g台もラインナップできたんです。ウチの強みは材料の制限がないこと。いろいろな素材メーカーから材料を自由に調達できることも、シャフトの開発に役立っています」

シャフトというパーツはそもそもどんな役割があるのだろう? 改めて、ツアー担当の飯田氏に聞いた。
「その人なりのベストなインパクトを迎えるために、ヘッドを正しい軌道に導く役割があると思います。シャフトが弾道に影響を与えることももちろんありますが、より重要なことは?当たるまでのプロセス〞であり、振りやすさやタイミングの取りやすさじゃないでしょうか。正しくインパクトすることで、ヘッドとボールの性能が生かせます。適正なスペックを選ぶことで、HSが上がるというのもシャフトの役割でしょう。フジクラのシャフトの中には、そのように満足して使ってもらえる1本が必ずあります。それだけの性能を備えているし、ラインナップをそろえています。『ベンタス』ができて、足りなかったピースが埋まりました

ボールを“飛ばしてくれる”弾き系をリードしたフジクラが、自分で“飛ばしにいける”粘り系で世界のトップに認められた。シャフトのグローバルな覇権争いは、これからさらにヒートアップするに違いない。

文/新井田聡 
写真/Getty Images
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