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コロナ禍で問われる本質。タイトリスト『TSi』は、なぜ「高性能を隠す」のか?

高額なゴルフクラブの購入は、絶対に失敗したくないもの。コロナ禍の景気悪化で、そんな時代の要請がますます加速しています。だからこそ、「地味」で「マジメ」な企業に注目する必要がある!?

2020年12月28日

 

実は、ピンとタイトリストは似ている?

ゴルフクラブは工業製品。スマホアプリのように随時アプデはできないし、クルマのようにフェイスリフトやマイナーチェンジを繰り返せるわけでもない。ほとんどのゴルフクラブメーカーが、2年に一度か、1年に一度のアプデをするのが通常のサイクルで、新作が出るたび盛んに“飛距離アップ”や“新機軸”が謳われる。

何が言いたいか? といえば、ピンとタイトリストの姿勢について、である。これまで派手なマーケティング手段を取ってこなかった、ある種、地味でマジメなメーカーが、情報過多な社会でいま“最旬”を迎えている気がしてならない。

⇒タイトリスト『TSi3』『TSi2』シリーズ大激論。「コレだけは、色々マズい……」

「前作の性能を上回るまで、新製品は出さない」。高MOIを追求してきたブレないピンの姿勢はここ数年で大きくファンを獲得したように思う。そして、実は大きなアプデをしたにもかかわらず、コンサバなブランドイメージからそれを【アピールしないタイトリストの姿勢も近しい存在に映る。それではあまりにもったいないので、筆者の知る事実を明かしたくなった。

端的に現れるのが、ヘッドMOI(慣性モーメント)の数字だろう。ここ数年ピンの評価が上がったのも、ずっとこの数字を追求してきた結果「ブレない、曲がらない」との評価をゴルファーから得られたから。そして「左右と上下を足した数字で9000を越えることが1つの目安」とピンは言い続けてきた。
編集部でヘッドMOIを調べた。計測はPCMラボに依頼
タイトリストはこの数字を開示しないが、実は『TSi』シリーズで大幅なアプデをしていた。

PCMラボが計測した『TSi2』のヘッドMOIは左右MOI「5533g・cm2」+上下MOI「3708g・cm2」で、合計数字が【9241】。また、プロが好む『TSi3』でさえ左右「4991」+上下「3089」の合計【8080】だ。ピンより約ヘッド重量が3〜4gほど軽いことを考えれば、ピンも真っ青な高MOIヘッドなのに、なぜかアピールしない。実にもったいない……。

高MOIをアピールしない理由は「目的が違うから」

上下MOIを高めたと販売店には説明しますが、一般には【マルチMOI】と説明するだけに留めています…
なぜ黙っているのか。同社に聞くと、回答はこうだ。

「数字の競争に意味はなく、ヘッドMOIを極限にすることが目的ではないのです。数字が極限でも、プロが振りづらくなってスピードが得られなければ意味がありません。あくまでも、ボールスピードを速めることが目的。そのために、ATI425チタンという稀少でバネ性が高く、強度の高いフェース素材を採用しています。タイトリストがヘッドMOIを高めるのは、このフェースの特異性を活かし、芯を外しても高いボールスピードを得ることが目的なのです」(同社、PR担当)

たしかに、筆者が『TSi』を購入した決め手が、この圧倒的なボールスピードにある。激しく打点がバラつく筆者は、滅多に芯に当たらないが、『TSi』だと他メーカーのものより1〜2.5m/sくらいボールスピードが速く出る。店頭で打ち比べて購入した人はもちろんご存知のはずだ。

ヘッドMOIと同様に気になってPCMラボに協力を仰ぎ、ファイバースコープをネック穴から入れてヘッド内部の構造を確認したが、フェース裏側がかなり複雑な構造になっていることが判明。凝りに凝っているのに、なぜアピールしないのか。またもや、もったいない……。
航空宇宙素材である【ATI425チタン】をゴルフクラブ初採用。しかも、この素材を使えるのはタイトリストだけ!
「そうなんですよ。これは公式サイトやカタログなどでも公開、説明をしていませんが、【ATI425チタン】という素材の特性を最大限に活かし、スーパーコンピュータを使ってモデル毎、ロフト毎に全く異なるフェースの偏肉構造にして高初速エリアを広げています。通常のチタン素材より強度もバネ性も違うので、攻めた作りが可能で『TSi2』と『TSi3』は使う層に最適化して異なるフェース構造にしています。説明しない理由は、ユーザーから見えない内部の話ですし、複雑かつ細かな点のため省いていますね」(同)

どおりで芯を外しても初速が出るはずである。キャロウェイのように「AIを用いて」とは言わなかったが、タイトリストキャロウェイと同様にモデル毎、しかもロフト毎にフェースの偏肉化を図っていたことを今までずっと“黙っていた”のだった。

PGAツアー使用率など、ツアープロが証明してくれる

昨季から今季まで、タイトリストのドライバーがずっとPGAツアー使用率1位です
   
「まぁ、でもエンジニアが気にする中身など知らなくとも、ツアープレーヤーが証明してくれますからね」と同社。なるほど、「飛んで曲がらない」と自らアピールすることほど野暮なことはないと言いたいわけか。「ツアープレーヤーだけでなく、アマチュア含めた多くのゴルファーが “より高い性能”を一番求めているわけですから、メーカー自らが言わずとも製品を通じてゴルファーがそれを証明してくれると考えています」。

たしかに、タイトリストのPGAツアー使用率は、今年“も”尋常ではなかった。昨年も全カテゴリ(ドライバー、FW、UT、アイアン型UT、アイアン、ウェッジ)でPGAツアートップ級の使用率を記録していた同社だが、コロナ禍の今年もさらに加速。世界中のツアーで『プロV1/プロV1x』の使用率は73%前後。2位メーカーは足元にも及ばない。
ボールは常に約75%、ウェッジは50%越え、アイアンも使用率No.1
これは、フィーリングを含めた“トータルパフォーマンス”に優れるからだが、特に打感や再現性が重視されるウェッジ、アイアンにもこの高いボール使用率が連動するのは頷ける。が、ことドライバーとなると、そこまで連動しないようにも思うが、事実、タイトリストは前作『TS3』で圧倒的な使用率1位だった。

数多くのPGAツアープロからの要望を聞いて形状を見直し、高初速エリアの広い【ATI425チタン】を採用したとなれば、今年『TSi3』がモデル別使用率1位を取り続けるのも当然だと思う。なにしろ、打点を激しく外す筆者でも大幅なアプデが体感できるわけで、プロゴルファーが感じ取れないわけがないのだ。同社が性能アピールをしないのも、単なる自信の裏返しだったのか。

11月13日発売、当月シリーズ売上1位(編集部調べ)

秋の発売以降、ピンとタイトリストが売上上位争いを展開し続けています…
「そうですね、お客さまが感じることが全てですから。その意味では、マスターズの初日(11月13日)に発売して、当月シリーズ売上も絶好調で、高評価をいただけてホッとしました。でも、発売直後に人気が高まるのは一般的な流れではありますが、継続的にご評価いただけることが重要だと考えています。今回の『TSi』はすでに非常に多くのお客様にご購入いただき、同時に製品性能に関する高い評価も多くいただいており、手応えは大きいですね」(同)

筆者も発売前に試打してすぐ予約したため、購入者たちの気持ちがよく分かる。ただ、唯一の後悔は、フィッターやゴルフ仲間が『TSi3』を同時期に購入したのに対し、筆者は打点を外す不安からやさしい『TSi2』にしたこと。仲間から『TSi3』を勧められたにもかかわらず、自分の判断が仇となった。



コースで数ラウンド重ねた結果、仲間の『TSi3』を借りて打つと筆者にはこちらの方が飛ぶと分かってしまった……。そして今回の話を聞いて、まさかの同一ブランドの【2個持ち】を決意した。(予約時はヘッドMOIを計測しておらず、『TSi3』がこんなに高MOIだと想像できなかった…)

後悔はしていない。【ATI425チタン】はタイトリストだけの採用だし、最速ボールスピードを出せるエリアがこれほど広いドライバーも珍しい。あとは日によってバラツキの多い自身のスイングパターンに合わせ、『TSi3』は夏場の絶好調時用、『TSi2』は安定重視で冬の振れない時期用に細かなスペックやシャフトを整えればいい。丁度この年末年始の時間を使って、仕上げにいこうと思う。

なぜ、カスタムに古い『ツアーAD DI』を選んだのか?

2009年モデルのグラファイトデザイン『Tour AD DI』をストックカスタムシャフトに!
『TSi3』の追加購入を決めたが、シャフトをどうするか。今度こそ、失敗できない。今回用意されたストックカスタムシャフトは2009年発売のグラファイトデザインツアーAD DI』だ。松山英樹が長く愛用し、国内男子ツアー「日本シリーズJTカップ」でチャン・キムが使用して勝った、あまりにも実績あるシャフトである。

ここでも疑問が湧く。「なぜ、こんなに古いシャフトをいま用意したのか?」と。通例ならシャフトメーカーの最新作が用意されるはずだが、なぜ、そうしないのか?

タイトリストは長年フィッティングが重要であると考えており、そして日本でもここ数年強化していますが、シャフト選びは簡単ではありません。それは人の感覚というものはそれそれであるためです。同じシャフトでも、手元側を感じる派と、先端側を感じる派でフィーリングが真逆になることもあるからです。

長年のフィッティングの経験から、ゴルファーは常に新しいシャフトを求めているのではなく、ヘッドの性能を引き出してくれるシャフトを求めていることがわかっています。よって今回の『TSi』に採用したシャフトポイントは、まずは高MOIのヘッドの性能を引き出してくれること、そしてゴルファーが気持ちよく振り抜けるフィーリングを提供できるものをラインアップしました。

その一つが『DI』でありますが、我々のテストにおいてこのシャフトの特性としてシャフトの手元側を感じる方、先端側を感じる方でも、両方ともに心地よく振り抜けるフィーリングが得られるということで採用しました。
純正シャフト『TSP110』(上)、『TSP322』(下)両方ともシャフトメーカー色は一切ありません…
純正シャフトも、今作から先端がやや走って適度にスピンの入る軽めの『TSP 110』と、先端剛性の高い重めの『TSP 322』にTOUR Sという硬さを追加しています。そして、そして、今回はシャフトメーカーさんとのブランドコラボではなく、完全なオリジナルシャフトを開発しました。

この2つの純正シャフトも非常に好評で、先にも触れましたがヘッドの性能を引き出し、かつスイング時の振り心地の良いフィーリングを提供できるそれぞれ特徴をもったラインアップとなっているため、多くのゴルファーの方々に満足いただけ、またフィッティングによりさらにその満足度を高めていけると考えています」(同)
前作の純正シャフトは、シャフトメーカー色が強烈でした…
前作『TS3』までの純正シャフトは『KUROKAGE』、『Speeder 519 Evolution』、『ツアーAD 60』と、3大シャフトメーカー色が全面に打ち出されたものだったが、まさか、地味なデザインでシャフトメーカー色を排除した方に評価が高まるとは……。2020年は世界の行動や考え方が一変した一年だったが、この変化も本質を見れば当然のことなのかもしれない。

派手なデザインで性能がイマイチなもの、地味な見た目で性能が高いもの。「長期的に見て、どちらにメリットがあるか?」。世のゴルファーは、本当に長く使えるものを冷静に見極めるため、「どれだけ高性能を追求しても、過度なアピールをしない」。それは、長期的な付き合いを望むゴルファーに対するタイトリストの一種の回答なのかもしれない。

Text/Mikiro Nagaoka

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