「短く持つから、近く見える」。大型ヘッドは慣れが必要
今平: そうですね、今ドライバーは『RMX116』を使ってるんですが、小ぶりなんですね。そして、アイアンなど下のクラブとの繋がりを考えた時に、慣れの部分でどうしても…というところがありました。最新モデルの『RMX120』はすごくヘッドが大きいので。その繋がり的なところもあり、賞金王を競っていたシビアな秋ごろに替えるというのが難しかったですね。
――プロが視覚的に大きなサイズを嫌がるというのは、クラブを短く持たれるせいで、近く見えすぎてしまうのも影響していますか?
今平: そこが一番大きいですね。どうしても遠近感というか、クラブが近く見えすぎてしまうので。あとは、大きなヘッドなので、重心的にヘッドの動きも違ってきますよね。切り返しの時だけじゃなく、バックスイングからスイング中、ずっとヘッドの重心の違いは感じるものなので。
今平: そうですね。やっぱりボール初速=飛距離ですから、『RMX120』は凄いヘッドだと思いますよ。だから、オフも2、3週間は空くと思うので、明日から早速フィッティングでテストしに行きます。慣れと気持ちの部分も大きいですからね。シャフトとかも色々テストしますし、多分、いいものが見つかると思います。(笑)
アイアンは同作でも個体差を感じる。打ち込む時間が必要
今平: アイアンって、同じモデルでも見え方的にも打感的にも(微細な個体差で)違うんですよ。なので、中々合うものを替えられない。信頼感というか、気持ちの問題ですよね。構えて、まったく同じには作れないはずなんですよ。ヘッドに元々鉛を貼ってるんですが、それが使っていくうちに剥がれてきちゃって、もうバラバラになってるんですね。だから、新しいもので同じように鉛を貼ってもらっても、なんか違うんですよ。重さが。そうすると、微妙なズレが出てしまって。それで、一年戦うのであれば、同じクラブで通したいというのがあって。だから、オフに打ち込む時間が必要かなぁって思いますね。
――シーズン中は、クラブを替えるどころか、テストもしたくないって感じですか?
今平: それはありません。もちろんいろいろ試しますよ。『RMX020』アイアンは本当にいいアイアンで、高さも出ますし、抜けもいいので、オフにしっかり打ち込みたいですね。ドライバーとかアイアンって、やっぱり一番使うクラブじゃないですか。ちょっと変な球が出たりなんかすると、気になって18ホール回れないというか。そういうのを考えると、中々替えられないという僕の中の気持ちですね。
平均4.6y伸びた男子ツアー。要因は「飛ぶ外国人が増えただけ(笑)」
今平: それは外国人が増えただけでは? (去年より)チャン・キムとか、クウェイルとか、飛ぶ外国人選手がけっこう増えてきたと思いますね。
――逆に言うと、日本人選手はそんなに変わってない? 今平プロ自身もさっき去年より6、7ヤード飛距離が伸びたとおっしゃってましたが。
今平: そんなに(周囲の日本人は)伸びてないというか、一年で普通はそんなに伸びないですよね。
――石川遼プロが11ヤード伸ばしたり、片山晋呉プロが床反力を使った海外のスイングトレンドで飛距離を伸ばしたりと、いろいろ話題はありましたが、そういった最新トレンドとかはどう見てます?
今平: 打ち方の理論とか最新トレンドは観てないですが、いろんな海外選手のスイングを観たりしていいところは取り入れようとはしてますね。打ち方じゃなく、身体の動かし方とかですね。海外選手だと、マキロイのスイングとか、ファウラーの切り返しの感じとかは好きですね。
――日本人が世界トップで戦うために、近道はないと思うのですが、取り組む道筋としてはどういうものを考えていますか? 先程、飛ぶ外国人が増えた影響で、国内男子ツアーの飛距離が伸びたとおっしゃいましたが、国内男子ツアーもアジアンツアーの選手が増えたりして、ワールドワイド化しているわけですよね?
マン振りでもブレない体を作り、飛びと再現性を手に入れる
――なるほど。たとえ日本でプレーしていても、そこを磨ければ世界トップと争う実力は普通に磨けると。
今平: まぁ、芝質は海外とは全然違いますけど、フェアウェイにボールを置ければ海外でもまったく変わらない。ショットの精度とか、アイアンショットとか、全体的に少しずつ上がっていけば。トレーニングも、飛距離のためにやっているのではなくて、マン振りした時によれないためというか。そうするとボールってやっぱり曲がりづらいというか。そのためのトレーニングですね。マン振りした時のスイングスピードって、多分トレーニングしたとしても変わらないと思うんですよ。なので、思いっ切り振ってもブレない体を作れれば、多分アイアンショットも安定するし、ドライバーの飛距離も伸びると思うんですよ。だから、下半身といろんな細かいところをトレーナーと鍛えていますね。
――その考えでトレーニングすれば、飛距離も再現性も手に入ると?
今平: だと思います。
「短く持つ長さは毎回変えます」。来年の目標は「たくさんある」
今平: はい、文字を書くのは右手ですけど、ボールを投げたりするのは左ですし、元々左利きです。長所……、どこだろう……。強いていうならショットですかね。いつも同じスピードで同じ振り方をすることは常に心がけていますし、スイングで一番大事にしているのは再現性ですね。あと、クラブを短く持つのは昔からですが、実はツマ先上がりとか、ライによって短く持つ長さは毎ショット微妙に変えてます。でも、めいいっぱい長く持つことはないですね。その方が距離は出るかもしれませんが、アイアンに飛距離はいらないですし、それよりかはコントロール性が大事というか、ピンに正確に近づけるためのクラブなので当然短く持ちますね。
――例えば、プロがめいいっぱい長くクラブを持つとどうなるんですか?
今平: 短く持った時と同じスイングをしたら振り遅れますね(笑)タイミングが変わってくるんで。短く持ちますけど、グリップの好みは細めが好きです。もう、これに慣れてしまっているので、中々替えられません(笑)
――最後に、来年の目標などがあれば教えて下さい。
今平: 3勝、これは国内と書いた方がいいですか? あとはオリンピックの出場と、メジャーで予選通過をすることですね。明日から、ヤマハさんと葛城GCに行って、新しいクラブをテストして、打ち込んできます。新作で新シーズンを迎えられれば。
【取材後記】 今平もヤマハもブレない…
「なぜムリを前提とした聞き方をする?」と、抗議の眼で現実を知らぬ筆者を諭すように「(世界トップは)全然遠くない、日本にいても差を縮められる」と語る姿が印象的だった。知っての通り、ヤマハは【VS.世界、ブーストリング】というキャッチコピーで海外ブランドに宣戦布告している。そして、そのCMに今平が出演するのも当然だと、妙に納得してしまった。ヤマハと今平が妥協なき関係を築けるのも、目指すゴールが重なるから。同じ夢を見られるからなのだなと、両者の関係の良さを羨ましくも思った。聞かれたくないことにも、両者は真摯に誠実に応える。そんな両者をこれからも応援していきたい。
Text/Mikiro Nagaoka