「クラブの適合検査を“全選手”実施する」 R&AとJGAが男子ツアーで貼り紙を出した意図【記者の目】
「クラブの適合検査を“全選手”実施する」 R&AとJGAが男子ツアーで貼り紙を出した意図【記者の目】
配信日時: 2018年9月19日 09時34分
<アジアパシフィック ダイヤモンドカップゴルフ 事前情報◇19日◇武蔵カントリークラブ 笹井コース(7060ヤード・パー71)>
練習日、複数の選手から「ドライバーの適合検査、全選手って貼り紙見た?全選手なんて聞いたことなくね?」との困惑の声が漏れていた。これまでも、抜き打ちで選手をピックアップして、複数の試合で行われていたこの検査、R&AとJGAが中心になって実施してきた。
「複数の選手から、全選手検査をすることについて困惑の声が挙がってますが…」と、早速検査している協会に声を伝えると、JGAの大久保裕司氏が意図を明かしてくれた。
「根掘り葉掘り調べてお前は悪いヤツだ!と調べることが目的じゃなくて、あくまでもフィールドで使う適合クラブをテストする機会を与えることです。全選手に適応したというのは、2年前の女子オープンや、その前の日本オープンでピックアップして検査を実施してきて、浸透してきたことがあります。じゃあ、フェアに全員やった方がいいというのも、選手の方から意見もありましたので」
しかし、簡易的なペンデュラムテストとはいえ、100人を越える全選手を一気にテストできるものなのか。
「今年のアクサレディスで、2日間で全選手のテストを実施した実績があります。LPGAさんは選手への連絡や通達がよく、2日で終えられましたね。それに、百数十人でも、フィールドでやるテストの場合、フェースセンターのみのポイントでの検査なので、全選手検査は可能だと判断しています」
これまでは、選手をピックアップする形で実施されていたため、メディアの間では「選手間で飛ぶと噂されている選手や、ある特定のメーカーを狙いうちして検査するのではないか?」といった憶測もあった。これに対してもかぶりをふる。
「基本的に、どのメーカーさんも適合内のクラブを製造して選手に供給しています。でも、工業製品なので、いろんな誤差はある中で、意図に反して不適合のクラブを使ってしまう可能性があります。それが起きないよう、検査の機会を与えるというのが基本方針です。
以前は、メーカーさんのツアーバスを事前に告知して回って検査する形も取っていましたが、結局我々も選手がどのクラブを使うかを把握できないので、こういう形になりました。基本は使っているクラブを検査するのが理想ですが、選手に不安があるならスペアを含め何本でも我々はテストします」
筆者はこれまで何度も記事にしてきたとおり、『2017ディスタンスレポート』で記録された、世界中のツアーでの飛距離アップが全選手検査実施の判断につながったのではないか?と邪推していた。これについても否定。
「いえ、何度も言うように、取り締まりの目的はありません。あくまでも98年に規則とされたものの確認が目的で、これまでは時間の都合などで選手をピックアップという形でしか実施できなかったというのが実情だったんです。でも、ピックアップを数年重ねた中で、50人といった目標も実績を重ねるうちに可能になってきました。それに、選手の間でも、フェアにやるために全選手を検査した方がいいとの声が挙がったので、今回は3日間を用意して、全選手検査を目指しました。
それに、ディスタンスレポートに関してですが、全ツアー競技が終了して来年に今季に関するものが出ると思いますが、おそらく飛距離は伸びると思います。これに関しては5月にディスタンス・インサイトというプロジェクトを立ち上げていて、世界中のゴルフ関係者、メーカーさんやツアーとか競技現場の実情など幅広く意見を聞くアンケートをいま実施しています。(10月31日まで)
この姿勢からも分かるように、今までルールを統括してきたR&AやUSGAが決めたことを下ろす形となっていましたが、そういう一方的なものではなく、幅広く意見を聞くというスタンスに変わっています。だから、今後は統括団体として【こうだ!】といった押し付けのような形は取らないということです。それに、飛距離が伸びているのはクラブの問題ではなく、選手のフィットネス、ボール、弾道計測器によるフィッティングなど、様々な要因が複合していると見ていますので」
全選手を目標において3日間実施された今回の検査。知らずに受けなかった選手に罰則はないが、結果74本のクラブのうち、3本の不適合が見つかったという。「クラブは打撃を続けると変形し、摩耗し、反発係数が上がります。それを選手も分かっていますから、間違って不適合クラブを使わないように、今後も機会を設けていきます」。
「クラブは割れる直前が一番飛ぶ」というのは、昔からツアープロの常識。これは、R&AとJGAの検査によって、知らずに使って違反となるリスクを減らすために実施されていた。
Text/Mikiro Nagaoka
練習日、複数の選手から「ドライバーの適合検査、全選手って貼り紙見た?全選手なんて聞いたことなくね?」との困惑の声が漏れていた。これまでも、抜き打ちで選手をピックアップして、複数の試合で行われていたこの検査、R&AとJGAが中心になって実施してきた。
「複数の選手から、全選手検査をすることについて困惑の声が挙がってますが…」と、早速検査している協会に声を伝えると、JGAの大久保裕司氏が意図を明かしてくれた。
「根掘り葉掘り調べてお前は悪いヤツだ!と調べることが目的じゃなくて、あくまでもフィールドで使う適合クラブをテストする機会を与えることです。全選手に適応したというのは、2年前の女子オープンや、その前の日本オープンでピックアップして検査を実施してきて、浸透してきたことがあります。じゃあ、フェアに全員やった方がいいというのも、選手の方から意見もありましたので」
しかし、簡易的なペンデュラムテストとはいえ、100人を越える全選手を一気にテストできるものなのか。
「今年のアクサレディスで、2日間で全選手のテストを実施した実績があります。LPGAさんは選手への連絡や通達がよく、2日で終えられましたね。それに、百数十人でも、フィールドでやるテストの場合、フェースセンターのみのポイントでの検査なので、全選手検査は可能だと判断しています」
これまでは、選手をピックアップする形で実施されていたため、メディアの間では「選手間で飛ぶと噂されている選手や、ある特定のメーカーを狙いうちして検査するのではないか?」といった憶測もあった。これに対してもかぶりをふる。
「基本的に、どのメーカーさんも適合内のクラブを製造して選手に供給しています。でも、工業製品なので、いろんな誤差はある中で、意図に反して不適合のクラブを使ってしまう可能性があります。それが起きないよう、検査の機会を与えるというのが基本方針です。
以前は、メーカーさんのツアーバスを事前に告知して回って検査する形も取っていましたが、結局我々も選手がどのクラブを使うかを把握できないので、こういう形になりました。基本は使っているクラブを検査するのが理想ですが、選手に不安があるならスペアを含め何本でも我々はテストします」
筆者はこれまで何度も記事にしてきたとおり、『2017ディスタンスレポート』で記録された、世界中のツアーでの飛距離アップが全選手検査実施の判断につながったのではないか?と邪推していた。これについても否定。
「いえ、何度も言うように、取り締まりの目的はありません。あくまでも98年に規則とされたものの確認が目的で、これまでは時間の都合などで選手をピックアップという形でしか実施できなかったというのが実情だったんです。でも、ピックアップを数年重ねた中で、50人といった目標も実績を重ねるうちに可能になってきました。それに、選手の間でも、フェアにやるために全選手を検査した方がいいとの声が挙がったので、今回は3日間を用意して、全選手検査を目指しました。
それに、ディスタンスレポートに関してですが、全ツアー競技が終了して来年に今季に関するものが出ると思いますが、おそらく飛距離は伸びると思います。これに関しては5月にディスタンス・インサイトというプロジェクトを立ち上げていて、世界中のゴルフ関係者、メーカーさんやツアーとか競技現場の実情など幅広く意見を聞くアンケートをいま実施しています。(10月31日まで)
この姿勢からも分かるように、今までルールを統括してきたR&AやUSGAが決めたことを下ろす形となっていましたが、そういう一方的なものではなく、幅広く意見を聞くというスタンスに変わっています。だから、今後は統括団体として【こうだ!】といった押し付けのような形は取らないということです。それに、飛距離が伸びているのはクラブの問題ではなく、選手のフィットネス、ボール、弾道計測器によるフィッティングなど、様々な要因が複合していると見ていますので」
全選手を目標において3日間実施された今回の検査。知らずに受けなかった選手に罰則はないが、結果74本のクラブのうち、3本の不適合が見つかったという。「クラブは打撃を続けると変形し、摩耗し、反発係数が上がります。それを選手も分かっていますから、間違って不適合クラブを使わないように、今後も機会を設けていきます」。
「クラブは割れる直前が一番飛ぶ」というのは、昔からツアープロの常識。これは、R&AとJGAの検査によって、知らずに使って違反となるリスクを減らすために実施されていた。
Text/Mikiro Nagaoka