【記者の目】アスリート1Wに変化の兆し。国産も外ブラも全部【カーボン複合】になる?
【記者の目】アスリート1Wに変化の兆し。国産も外ブラも全部【カーボン複合】になる?
配信日時: 2018年6月22日 09時43分
カーボンコンポジット。ゴルファーには聞き慣れた言葉で、この構造や技術自体に目新しさはまったくない。ところが、直近でツアー投入されたアスリートモデルドライバーにちょっとした変化の兆しが。
■国産メーカーが軒並みカーボン複合へ■
既報のとおり、クラブ契約フリーの三浦桃香、アン・ソンジュがプロギア『RS-F』ドライバー(7月13日発売)を導入。このモデルは高いCT値と、そのエリアの広さを誇るモデルだが、3代目となる今作からカーボンクラウンへと変化している。
同社は2002年発売の『TR DUO』で【カーボンクラウン+チタンヘッド】のアスリートモデルで爆発的なヒットを飛ばしており、これを契機にカーボン複合が各社から発売されブームになった。しかし、それも一過性のもので【フルチタン+高反発】にブームはとって代わられたが、今回の『RS-F』はクラブ契約フリーの活躍や高初速の証明によって、2016年の初代を越えるヒットの予感を感じさせる。
また、既報のとおり今週ツアーデビューしたダンロップ『スリクソンZ785』『Z585』プロトタイプも今作からスリクソン初のカーボンコンポジットへと生まれ変わった模様。同社はアベレージ向けの王者『ゼクシオ』を抱えるものの、歴代モデルはすべてフルチタン。過去にはシニア向けの『ゼクシオプライム』の数機種のみにカーボン複合を採用していただけだった。
その他の国産メーカーでも、既報のとおり今季の開幕戦から男子ツアーに投入されている、ブリヂストン『TOUR B XD-3 P40-1』プロトタイプも同様にカーボンコンポジットへ生まれ変わっていると思われる。(写真のようにクラウンにストライプが入っている部分)
同社のアスリートモデルでは「ツアーステージ」時代を遡っても、該当するのはボディ一体がカーボンだった2004年発売の『シナジーディープ』くらい。当時としては意欲作だったが、カーボンコンポジット特有の打感が好まれたとは言い難く、その後のアスリートモデルに採用はなかった。
■世界初のカーボン複合はミズノ?ヤマハ?■
このように、近年の大手国産メーカーでは、カーボン複合でないものの方が多数派だったが、起源は実は国産メーカー。1982年にミズノ『バンガード』が世界初のカーボンコンポジットクラブを発売。(ミズノはチタン製ドライバーも世界初)ただし、この当時は「グラフィモン」との愛称のとおり、パーシモンがベースだった。
同年にこちらも世界初の中空『カーボンコンポジット』として『FOCUS SUPER C-300』が発売。ヤマハがゴルフ事業に参入したのは、実はカーボンコンポジットだった。このドライバーは、中空構造による高反発特性と高慣性モーメント化を実現しており、当時としては画期的なものだった。
なお、同年にゴルフ事業に進出したのが、テニスやラケットの老舗・ヨネックス。カーボングラファイトとパーシモンを一体化したゴルフクラブ、「カーボネックス」を発売。以降、ヨネックスはラケットその他でカーボン技術を研究し、シャフトからヘッドまで現代にカーボン技術が息づいている。
また、カーボン素材を使った釣り竿メーカーが母体のグローブライド(旧・ダイワ精工)も、早くからカーボン技術を採用したメーカー。(1973年に国産初のカーボンシャフト発売、1982年にカーボン複合パーシモン『カーボレックス』を発売)ただし、2000年代には高反発路線でフルチタンのものが多かった。これはその他の国産メーカーも同じで、パーシモン時代の1980年代の早くからシャフトやヘッドにカーボンを導入するも、メタルやチタン初期にはヘッドにカーボン複合を用いる国産メーカーは少なかった。
■キャロウェイ、テーラーメイドは既に複合で大ヒット■
かたや、海外メーカーに目を移してみよう。大手どころでは、カーボン複合にリスクを取って真っ先に取り組んだのはキャロウェイだ。2000年に『ERC』や『ERCII』で爆発的なヒット、高反発ブームを巻き起こしながら、なぜか2002年にカーボン製ヘッド『ビッグバーサC4』を発売。ただし、これが高反発の「パキーン」という弾き音が全盛を迎えていた市場から敬遠されてしまった。
ボディ、フェースもカーボンの『ビッグバーサC4』はパーシモンを彷彿させる低めの打球音が「ミスショットの音がする」と不評。軽量でミスに強い性能面を理解してもらえなかったが、同社は2003年に『ERCフュージョン』、2005年に『ERCホット』と、カーボンボディの使い方を変えてトライを重ねている。
現代に目を移すと、長らくフルチタン製だったテーラーメイドは2015年の『M1』『M2』からカーボンクラウンへと移行。白いクラウンからカーボンの網目模様への移行はリスクにも見えたが、これが成功。昨年はキャロウェイ『GBB EPIC』のメガヒットの影響も受けず、テーラーメイドも2代目『M1』『M2』をヒットに導いている。
今年の『ローグスター』や『M4』の打感や打球音へのネガティブな声が聞かれることも少なく、昔のような「カーボンコンポジットの音が嫌い」は完全に過去のものだと感じさせる。PINGはフルチタンだがコブラ『KING F8』もカーボンコンポジット。そんな市場の変化や製造技術の進化が、ダンロップとブリヂストンの決断を促したのだろうか。
また、直近では工房向けのカスタムパーツメーカーでもカーボン複合ヘッドが増えている。これまではほぼ全てがフルチタンだったが、「グランディスタ」、「GTD」、イオンスポーツ『GIGA』などが続々とカーボン複合の新作を投入している。
■タイトリスト『TS2』『TS3』はどうなる?■
既報のとおり、タイトリストは直近で『TS2』『TS3』ドライバーをPGAツアーに投入。全貌はベールに包まれているが、今作は反発性能やボールスピードアップを匂わせている。その“ボールスピードアップの中身”が気がかりなところ。そして、これを紐解くヒントがカーボン複合の可能性もある。
昨年発売された『VG3』ドライバーはアベレージモデル。「チーターテクノロジー」と呼ばれる穴の空いたクラウンの軽量化技術がウリだが、この外側の「スピードクラウン」は軽いカーボン製だ。見た目には分かりづらいものの、『TS3』『TS2』にこの技術が搭載されても何ら不思議ではない。
タイトリスト?、キャロウェイ、テーラーメイド、コブラ、ダンロップ、ブリヂストン、ヨネックス、プロギア…。はたして今後アスリートドライバーのほとんどがカーボン複合ヘッドに変わるのか?もしそうなれば、構造が似てしまうのに性能面での差別化が図れるのだろうか?来る秋はアスリートモデルの新作が集中するタイミングとなる。引き続き動向に注目していきたい。
Text/Mikiro Nagaoka
■国産メーカーが軒並みカーボン複合へ■
既報のとおり、クラブ契約フリーの三浦桃香、アン・ソンジュがプロギア『RS-F』ドライバー(7月13日発売)を導入。このモデルは高いCT値と、そのエリアの広さを誇るモデルだが、3代目となる今作からカーボンクラウンへと変化している。
同社は2002年発売の『TR DUO』で【カーボンクラウン+チタンヘッド】のアスリートモデルで爆発的なヒットを飛ばしており、これを契機にカーボン複合が各社から発売されブームになった。しかし、それも一過性のもので【フルチタン+高反発】にブームはとって代わられたが、今回の『RS-F』はクラブ契約フリーの活躍や高初速の証明によって、2016年の初代を越えるヒットの予感を感じさせる。
また、既報のとおり今週ツアーデビューしたダンロップ『スリクソンZ785』『Z585』プロトタイプも今作からスリクソン初のカーボンコンポジットへと生まれ変わった模様。同社はアベレージ向けの王者『ゼクシオ』を抱えるものの、歴代モデルはすべてフルチタン。過去にはシニア向けの『ゼクシオプライム』の数機種のみにカーボン複合を採用していただけだった。
その他の国産メーカーでも、既報のとおり今季の開幕戦から男子ツアーに投入されている、ブリヂストン『TOUR B XD-3 P40-1』プロトタイプも同様にカーボンコンポジットへ生まれ変わっていると思われる。(写真のようにクラウンにストライプが入っている部分)
同社のアスリートモデルでは「ツアーステージ」時代を遡っても、該当するのはボディ一体がカーボンだった2004年発売の『シナジーディープ』くらい。当時としては意欲作だったが、カーボンコンポジット特有の打感が好まれたとは言い難く、その後のアスリートモデルに採用はなかった。
■世界初のカーボン複合はミズノ?ヤマハ?■
このように、近年の大手国産メーカーでは、カーボン複合でないものの方が多数派だったが、起源は実は国産メーカー。1982年にミズノ『バンガード』が世界初のカーボンコンポジットクラブを発売。(ミズノはチタン製ドライバーも世界初)ただし、この当時は「グラフィモン」との愛称のとおり、パーシモンがベースだった。
同年にこちらも世界初の中空『カーボンコンポジット』として『FOCUS SUPER C-300』が発売。ヤマハがゴルフ事業に参入したのは、実はカーボンコンポジットだった。このドライバーは、中空構造による高反発特性と高慣性モーメント化を実現しており、当時としては画期的なものだった。
なお、同年にゴルフ事業に進出したのが、テニスやラケットの老舗・ヨネックス。カーボングラファイトとパーシモンを一体化したゴルフクラブ、「カーボネックス」を発売。以降、ヨネックスはラケットその他でカーボン技術を研究し、シャフトからヘッドまで現代にカーボン技術が息づいている。
また、カーボン素材を使った釣り竿メーカーが母体のグローブライド(旧・ダイワ精工)も、早くからカーボン技術を採用したメーカー。(1973年に国産初のカーボンシャフト発売、1982年にカーボン複合パーシモン『カーボレックス』を発売)ただし、2000年代には高反発路線でフルチタンのものが多かった。これはその他の国産メーカーも同じで、パーシモン時代の1980年代の早くからシャフトやヘッドにカーボンを導入するも、メタルやチタン初期にはヘッドにカーボン複合を用いる国産メーカーは少なかった。
■キャロウェイ、テーラーメイドは既に複合で大ヒット■
かたや、海外メーカーに目を移してみよう。大手どころでは、カーボン複合にリスクを取って真っ先に取り組んだのはキャロウェイだ。2000年に『ERC』や『ERCII』で爆発的なヒット、高反発ブームを巻き起こしながら、なぜか2002年にカーボン製ヘッド『ビッグバーサC4』を発売。ただし、これが高反発の「パキーン」という弾き音が全盛を迎えていた市場から敬遠されてしまった。
ボディ、フェースもカーボンの『ビッグバーサC4』はパーシモンを彷彿させる低めの打球音が「ミスショットの音がする」と不評。軽量でミスに強い性能面を理解してもらえなかったが、同社は2003年に『ERCフュージョン』、2005年に『ERCホット』と、カーボンボディの使い方を変えてトライを重ねている。
現代に目を移すと、長らくフルチタン製だったテーラーメイドは2015年の『M1』『M2』からカーボンクラウンへと移行。白いクラウンからカーボンの網目模様への移行はリスクにも見えたが、これが成功。昨年はキャロウェイ『GBB EPIC』のメガヒットの影響も受けず、テーラーメイドも2代目『M1』『M2』をヒットに導いている。
今年の『ローグスター』や『M4』の打感や打球音へのネガティブな声が聞かれることも少なく、昔のような「カーボンコンポジットの音が嫌い」は完全に過去のものだと感じさせる。PINGはフルチタンだがコブラ『KING F8』もカーボンコンポジット。そんな市場の変化や製造技術の進化が、ダンロップとブリヂストンの決断を促したのだろうか。
また、直近では工房向けのカスタムパーツメーカーでもカーボン複合ヘッドが増えている。これまではほぼ全てがフルチタンだったが、「グランディスタ」、「GTD」、イオンスポーツ『GIGA』などが続々とカーボン複合の新作を投入している。
■タイトリスト『TS2』『TS3』はどうなる?■
既報のとおり、タイトリストは直近で『TS2』『TS3』ドライバーをPGAツアーに投入。全貌はベールに包まれているが、今作は反発性能やボールスピードアップを匂わせている。その“ボールスピードアップの中身”が気がかりなところ。そして、これを紐解くヒントがカーボン複合の可能性もある。
昨年発売された『VG3』ドライバーはアベレージモデル。「チーターテクノロジー」と呼ばれる穴の空いたクラウンの軽量化技術がウリだが、この外側の「スピードクラウン」は軽いカーボン製だ。見た目には分かりづらいものの、『TS3』『TS2』にこの技術が搭載されても何ら不思議ではない。
タイトリスト?、キャロウェイ、テーラーメイド、コブラ、ダンロップ、ブリヂストン、ヨネックス、プロギア…。はたして今後アスリートドライバーのほとんどがカーボン複合ヘッドに変わるのか?もしそうなれば、構造が似てしまうのに性能面での差別化が図れるのだろうか?来る秋はアスリートモデルの新作が集中するタイミングとなる。引き続き動向に注目していきたい。
Text/Mikiro Nagaoka