【記者の目】BS『TOUR B XD-3』を数ヶ月使った本音を聞く。堀川未来夢「ボクは筋金入りの不器用なので」に込められた意味
【記者の目】BS『TOUR B XD-3』を数ヶ月使った本音を聞く。堀川未来夢「ボクは筋金入りの不器用なので」に込められた意味
配信日時: 2018年8月8日 01時38分
6日に行われた登壇して製品について話したこと以外に、それぞれの本音に迫ったので紹介したい。今回は25歳の若武者・堀川未来夢のエピソード。登壇して製品について話したこと以外に、それぞれの本音に迫ったので紹介したい。今回は25歳の若武者・堀川未来夢のエピソード。
■筋金入りの不器用男・堀川未来夢の矜持■
「ボクは筋金入りの不器用なので」。トークセッションで堀川未来夢から飛び出した自虐的にも取られる発言は、紛れもない本音であり、今回の新作の【筋金入り】とかけたセンスある発言だった。
この言葉が飛び出した背景は、先輩プロの近藤智弘が「アイアンは曲げて弾道コントロールした方がタテの距離が合う」と発言したのに対し、リスペクトの意味も込めて「ボクは不器用なのでそんな芸当は出来ない」の意味で発した。
改めて個別に話を聞くと、やはり「ボクは筋金入りの不器用なので」の発言を連発。言葉だけを真に受けると、堀川のことを「あぁ、不器用な人なんだ」と誤解する人も多いと思う。そこで、いくつか質問をした。「ハンドアップアドレスで、敢えて飛ばないスイングをしているよね?」と。
「そうです。ボクは自己流でゴルフをやってきた中で、今のように超ハンドアップで構えて体のシンプルな回転で“ボールを面でとらえたい”との結果、こういうスタイルになりました。飛距離の意味では明らかにマイナスですよね。本当に飛ばしを目指すなら、ハンドダウンでリストを上手く使えるスイングを変えればあと、2、30ヤードは飛ばせるのかもしれませんが、それでは安定しないと思うので」(堀川)
超ハンドアップアドレスは、1つ歳下の時松隆光とも共通する。(時松はさらに特殊でベースボールグリップ)飛距離を失うことは折り込み済みだが、インパクトを点ではなく、線で捉えられ、シンプルなスイングプレーンで安定性を優先するスタイルだ。
時松が初シードを獲る1年前、堀川がツアーに参戦しだした頃から、筆者もこのスタイルで「安定させよう」とビッグチェンジに取り組んだ経験があるため、堀川や時松の気持ちはよく分かるつもり。結論から言えば、筆者は飛距離ダウンを許容出来なかったくちだ…。だからこそ、若くて振れる年齢でこのスタイルを貫ける彼らにリスペクトを感じざるを得ないのである。
■ハンドアップ一軸スイングは不器用な方がいい!■
「ボクは不器用だからこそ、このスタイルなんです。(池田)勇太さんのような、器用な腕さばき、クラブさばきは到底真似できません。ボクに器用な腕さばきがあれば、またスタイルが違ったと思うんですが、そこがなかったのでリストワークを極力排除して、柔軟な体を活かして体の回転でインパクトが面になるスイングを理想としてきました。
源ちゃん(時松のこと)と似てる?確かにそうかもしれないですね。彼とは歳も近いし仲良しですけど、このスイングスタイルやクラブについて議論したりしないです。彼もボクも特殊だし、自己流だと思うので。参考になるスイングをする選手も少ないです。自己流で作り上げてきたので、むしろ、ほとんどいません(笑)
でも、強いて言うなら、ブライソン・デシャンボーとかはかなり近い考え方をしているのかなと。あそこまで全部同じ長さのアイアンとかはさすがにやりませんけど、腕の操作を抑えて、シンプルなプレーンで極力リストを使わずに打つ点では、考え方が同じだと感じます」(堀川)
感覚的なプロは多い。むしろ、ほとんど全てが感覚でゴルフしていて、それでうまくいく天才たちの集団だ。一般ゴルファーからすれば堀川もそれに当てはまるが、天才たちを前にすると、彼の自己分析としては、「不器用」になる。ただし、それを逆手に取り「不器用=安定しやすい」と、ストロングポイントに変えている。
デシャンボーも同じだが、機械のような正確さへの理想実現のため、その探究心は高まっていく。そして、感覚だけに頼らず、客観的に自己分析できるのも異能だと言えるだろう。堀川も飛距離の出ないスタイルを補うため、柔軟な体を活かしつつ鍛えることに余念がないし、『フレループ』などの練習器具など貪欲に新しいものを取り入れる。また、飛距離が出ないスタイルゆえ、当然のことながらクラブ選びにも貪欲だ。
■科学的にも直感的にも新作が合うと分かった■
「近藤さんや木下さんも言ってましたが、今回の【筋金入り】の新作は本当にすぐに替えました。オフにテストで打った瞬間から“これ、いつ公認になるの?”ってホント使いたくて。公認になった週からバッグに入れました。ボクはスピン量が元々多いタイプなんですけど、このドライバーだとスピンも減るし、強い球でランも稼げるから飛距離が伸びる。慣性モーメントが大きいのか曲がらないし、本当に出会えて良かったです」(堀川)
言葉どおり、昨季のドライビングディスタンスは275.7ヤード(FWキープ率は55.34%)だったが、今季は279.69ヤード(FWキープ率は59.02%)とスタッツが引き上がっている。ティショットのパフォーマンスアップが寄与したのか、「筋金入りの不器用」だと語っていたパーオン率も昨季は61.81%(58位)から、新しい『X-CB』を使用しはじめた今季は65.94%(24位)へと上がっている。
⇒「筋金入り」の正体が判明!BS新『TOUR B』はカーボン複合の中身が他社の一歩先へいっていた!
「ドライバーのスピン量は2000回転の後半だったのが、【筋金入り】になって前半に変わりました。2800付近から2300〜2400付近ですね。それでいて打ち出しは11〜12°と変わっていません。新しい『X-CB』アイアンも前回より数ヤードキャリーが伸びて飛びます。確実に以前よりラクになっていますね」(堀川)
リストワークを極力排除したハンドアップスタイルは、慣性モーメントの大きな大型ヘッドとの相性◎で、堀川は直感的にも科学的なデータの裏付けとしても、「【筋金入り】こそがまさに自分の武器になる!」と感じていたし、それはいきなり成績にも現れた。何しろ平均ストロークを昨季の71.74から70.87まで縮め、予選落ちの少なさも昨季と比較にならない。
「筋金入りの不器用」な男が、自分流を突き詰めて【筋金入り】のドライバーで飛躍する……。現状でも十分なのだが、この秋、堀川が待望の初勝利を手にする姿を想像して、そんな「出来過ぎたエピソードをもっと書きたい!」と欲深くも思ってしまった。
Text/Mikiro Nagaoka
■筋金入りの不器用男・堀川未来夢の矜持■
「ボクは筋金入りの不器用なので」。トークセッションで堀川未来夢から飛び出した自虐的にも取られる発言は、紛れもない本音であり、今回の新作の【筋金入り】とかけたセンスある発言だった。
この言葉が飛び出した背景は、先輩プロの近藤智弘が「アイアンは曲げて弾道コントロールした方がタテの距離が合う」と発言したのに対し、リスペクトの意味も込めて「ボクは不器用なのでそんな芸当は出来ない」の意味で発した。
改めて個別に話を聞くと、やはり「ボクは筋金入りの不器用なので」の発言を連発。言葉だけを真に受けると、堀川のことを「あぁ、不器用な人なんだ」と誤解する人も多いと思う。そこで、いくつか質問をした。「ハンドアップアドレスで、敢えて飛ばないスイングをしているよね?」と。
「そうです。ボクは自己流でゴルフをやってきた中で、今のように超ハンドアップで構えて体のシンプルな回転で“ボールを面でとらえたい”との結果、こういうスタイルになりました。飛距離の意味では明らかにマイナスですよね。本当に飛ばしを目指すなら、ハンドダウンでリストを上手く使えるスイングを変えればあと、2、30ヤードは飛ばせるのかもしれませんが、それでは安定しないと思うので」(堀川)
超ハンドアップアドレスは、1つ歳下の時松隆光とも共通する。(時松はさらに特殊でベースボールグリップ)飛距離を失うことは折り込み済みだが、インパクトを点ではなく、線で捉えられ、シンプルなスイングプレーンで安定性を優先するスタイルだ。
時松が初シードを獲る1年前、堀川がツアーに参戦しだした頃から、筆者もこのスタイルで「安定させよう」とビッグチェンジに取り組んだ経験があるため、堀川や時松の気持ちはよく分かるつもり。結論から言えば、筆者は飛距離ダウンを許容出来なかったくちだ…。だからこそ、若くて振れる年齢でこのスタイルを貫ける彼らにリスペクトを感じざるを得ないのである。
■ハンドアップ一軸スイングは不器用な方がいい!■
「ボクは不器用だからこそ、このスタイルなんです。(池田)勇太さんのような、器用な腕さばき、クラブさばきは到底真似できません。ボクに器用な腕さばきがあれば、またスタイルが違ったと思うんですが、そこがなかったのでリストワークを極力排除して、柔軟な体を活かして体の回転でインパクトが面になるスイングを理想としてきました。
源ちゃん(時松のこと)と似てる?確かにそうかもしれないですね。彼とは歳も近いし仲良しですけど、このスイングスタイルやクラブについて議論したりしないです。彼もボクも特殊だし、自己流だと思うので。参考になるスイングをする選手も少ないです。自己流で作り上げてきたので、むしろ、ほとんどいません(笑)
でも、強いて言うなら、ブライソン・デシャンボーとかはかなり近い考え方をしているのかなと。あそこまで全部同じ長さのアイアンとかはさすがにやりませんけど、腕の操作を抑えて、シンプルなプレーンで極力リストを使わずに打つ点では、考え方が同じだと感じます」(堀川)
感覚的なプロは多い。むしろ、ほとんど全てが感覚でゴルフしていて、それでうまくいく天才たちの集団だ。一般ゴルファーからすれば堀川もそれに当てはまるが、天才たちを前にすると、彼の自己分析としては、「不器用」になる。ただし、それを逆手に取り「不器用=安定しやすい」と、ストロングポイントに変えている。
デシャンボーも同じだが、機械のような正確さへの理想実現のため、その探究心は高まっていく。そして、感覚だけに頼らず、客観的に自己分析できるのも異能だと言えるだろう。堀川も飛距離の出ないスタイルを補うため、柔軟な体を活かしつつ鍛えることに余念がないし、『フレループ』などの練習器具など貪欲に新しいものを取り入れる。また、飛距離が出ないスタイルゆえ、当然のことながらクラブ選びにも貪欲だ。
■科学的にも直感的にも新作が合うと分かった■
「近藤さんや木下さんも言ってましたが、今回の【筋金入り】の新作は本当にすぐに替えました。オフにテストで打った瞬間から“これ、いつ公認になるの?”ってホント使いたくて。公認になった週からバッグに入れました。ボクはスピン量が元々多いタイプなんですけど、このドライバーだとスピンも減るし、強い球でランも稼げるから飛距離が伸びる。慣性モーメントが大きいのか曲がらないし、本当に出会えて良かったです」(堀川)
言葉どおり、昨季のドライビングディスタンスは275.7ヤード(FWキープ率は55.34%)だったが、今季は279.69ヤード(FWキープ率は59.02%)とスタッツが引き上がっている。ティショットのパフォーマンスアップが寄与したのか、「筋金入りの不器用」だと語っていたパーオン率も昨季は61.81%(58位)から、新しい『X-CB』を使用しはじめた今季は65.94%(24位)へと上がっている。
⇒「筋金入り」の正体が判明!BS新『TOUR B』はカーボン複合の中身が他社の一歩先へいっていた!
「ドライバーのスピン量は2000回転の後半だったのが、【筋金入り】になって前半に変わりました。2800付近から2300〜2400付近ですね。それでいて打ち出しは11〜12°と変わっていません。新しい『X-CB』アイアンも前回より数ヤードキャリーが伸びて飛びます。確実に以前よりラクになっていますね」(堀川)
リストワークを極力排除したハンドアップスタイルは、慣性モーメントの大きな大型ヘッドとの相性◎で、堀川は直感的にも科学的なデータの裏付けとしても、「【筋金入り】こそがまさに自分の武器になる!」と感じていたし、それはいきなり成績にも現れた。何しろ平均ストロークを昨季の71.74から70.87まで縮め、予選落ちの少なさも昨季と比較にならない。
「筋金入りの不器用」な男が、自分流を突き詰めて【筋金入り】のドライバーで飛躍する……。現状でも十分なのだが、この秋、堀川が待望の初勝利を手にする姿を想像して、そんな「出来過ぎたエピソードをもっと書きたい!」と欲深くも思ってしまった。
Text/Mikiro Nagaoka