【バケモノたちの使用ギア】小柄なレフティ、ブライアン・ハーマンは根っからの勝負師!
ついに明日決着を迎える、全米オープン。世界最高峰のPGAツアーは松山を上回るバケモノ揃い。今回はスピンオフのPGAツアーデータ・ドリブンシリーズとして、さまざまな公式データからギアとバケモノの相関関係をひも解いて行きたいと思う。最終日の展望は、伏兵!?のブライアン・ハーマンだ!
配信日時: 2017年6月18日 04時15分
目次 / index
全米オープン3日目、小柄で地味なレフティが躍動!
全米オープン3日目、この日5アンダー(6バーディ、1ボギー)の堅実なプレーを見せたのは、我々ゴルフメディアにも馴染みのないブライアン・ハーマン(30)。米国の解説者たちも彼に関する情報があまりないのか、「小柄」「ツアーで一番小さい」「全米ジュニアで勝っている」と、連呼するにとどまっていた。
だが、これまで117回目の全米オープン史上レフティの優勝はなく、勝てば史上初の快挙に期待がかかる。彼の勝利を最も応援するのは、元A級ティーチングプロでPGAツアーウォッチャーのトシ平田氏だ。ジョージア州サヴァンナ在住のトシ平田氏は、ハーマンがジュニア時代から競技で競い合ってきた仲で、息子が同級生だった縁もあるという。
「息子の同級生であり、クラブチャンピオンを争ってきた地元の英雄・ブライアンを家族総出で応援していますよ。けれども、明日の最終日に回るジャスティン・トーマス選手も爆発力がすごい。右手のサポーターをしていましたが、2週間前とは別人のように仕上がっている。相当練習したに違いありません」(トシ平田)
だが、これまで117回目の全米オープン史上レフティの優勝はなく、勝てば史上初の快挙に期待がかかる。彼の勝利を最も応援するのは、元A級ティーチングプロでPGAツアーウォッチャーのトシ平田氏だ。ジョージア州サヴァンナ在住のトシ平田氏は、ハーマンがジュニア時代から競技で競い合ってきた仲で、息子が同級生だった縁もあるという。
「息子の同級生であり、クラブチャンピオンを争ってきた地元の英雄・ブライアンを家族総出で応援していますよ。けれども、明日の最終日に回るジャスティン・トーマス選手も爆発力がすごい。右手のサポーターをしていましたが、2週間前とは別人のように仕上がっている。相当練習したに違いありません」(トシ平田)
データをひも解くと、「自分のプレーができればハーマンにチャンスあり」(トシ平田)
では、3日目を終えた時点での、明日の最終組の二人のスタッツを振り返ってみよう。
2、3日目まで首位を守ったハーマンは、さすがにデータが整っている。スコアに及ぼす(STROKE GAIND)SG:TOTALは当然1位。トーマスも2位だ。ハーマンのボギー2つのみというステディなプレーぶりが光っている。
さらに細かく見ていくと、ハーマンは飛距離がさして出ないものの、ここまで88.1%のFWキープ率を誇り、パーオン率77.8%と高い数字。平均パットは18位だが、3日目は勝負どころをきっちり抑え、パッティングの状態もかなりよく見える。
対してトーマスは、3日目に神がかり的なプレーを見せたが、FWキープ率とパーオン率でハーマンには見劣りするデータ。ただし、バーディ19個はトップで、既報のとおり最終18番の667ヤードのロングでイーグル奪取するなど、攻撃力には目を見張るものがある。平均パットも1.54とこちらはハーマンを上回る。
ハーマンの使用ギアは、1、3、5Wがテーラーメイド新『M2』(9.5、15、18度)。アイアンはタイトリスト『716CB』で、ウェッジは『ボーケイSM6』(46、50、55度)が中心。試合によってはタイトリスト『T-MB』の3、4Iを入れることも。また、パターはテーラーメイドの『スパイダーOS CB』で、ボールはタイトリスト『Pro V1』だ。
飛ばしたい番手はテーラーメイドを中心に揃え、セットの核となるそれ以下のものはタイトリストでコントロールを重視していることが見て取れるが、肝心のプレースタイルやスイングの特長はどのようなものなのか? ハーマンのスイングをジュニア時代からよく知るトシ平田がジュニア時代の動画を提供し、解説してくれた。
2、3日目まで首位を守ったハーマンは、さすがにデータが整っている。スコアに及ぼす(STROKE GAIND)SG:TOTALは当然1位。トーマスも2位だ。ハーマンのボギー2つのみというステディなプレーぶりが光っている。
さらに細かく見ていくと、ハーマンは飛距離がさして出ないものの、ここまで88.1%のFWキープ率を誇り、パーオン率77.8%と高い数字。平均パットは18位だが、3日目は勝負どころをきっちり抑え、パッティングの状態もかなりよく見える。
対してトーマスは、3日目に神がかり的なプレーを見せたが、FWキープ率とパーオン率でハーマンには見劣りするデータ。ただし、バーディ19個はトップで、既報のとおり最終18番の667ヤードのロングでイーグル奪取するなど、攻撃力には目を見張るものがある。平均パットも1.54とこちらはハーマンを上回る。
ハーマンの使用ギアは、1、3、5Wがテーラーメイド新『M2』(9.5、15、18度)。アイアンはタイトリスト『716CB』で、ウェッジは『ボーケイSM6』(46、50、55度)が中心。試合によってはタイトリスト『T-MB』の3、4Iを入れることも。また、パターはテーラーメイドの『スパイダーOS CB』で、ボールはタイトリスト『Pro V1』だ。
飛ばしたい番手はテーラーメイドを中心に揃え、セットの核となるそれ以下のものはタイトリストでコントロールを重視していることが見て取れるが、肝心のプレースタイルやスイングの特長はどのようなものなのか? ハーマンのスイングをジュニア時代からよく知るトシ平田がジュニア時代の動画を提供し、解説してくれた。
元テニスプレーヤーでリストが強く、フォローでクラブが立ってラインが出る!
全米ジュニア選手権をとった時の、ジュニア時代のハーマン(動画提供:トシ平田)
ハーマンのプレースタイルをジュニア時代からよく知るトシ平田はこういう。
「彼のプレースタイルはメンタルの強さにあります。エピソードはたくさんありますが、例えるなら、USジュニア選手権の決勝の最終ホール。2.5メートルのバーディパットを待つ彼は、相手が1stパットを1.5mくらいオーバーしたのにコンシード(OK)しました。で、バーディパットを入れて勝ったのですが、試合後に“なんであんなに長い距離をコンシードしたのか”聞いたんです。すると、“相手のミスを待ってプレーしたくなかった”とサラリ。彼が17歳のときです。うちの息子より3つ年下でしたが、ハイスクール入学時から“彼には勝てない”とよく言っていましたね」(トシ平田)
また、トシ平田氏本人も、ハーマンと何度もクラブチャンピオンを争ったという。
「地元のジョージア州サバンナ、サウスブリッジGCで彼は15歳でクラブチャンピオンになりました。翌年は“戦う相手がいないから出ない”と不出場。その翌年、“俺が戦うから出ろ!” と言って無理やり出させたら、こてんぱんに負けたました……。彼はテニスプレーヤーだったから、小柄ですがリストが強くて当時から280ヤード以上飛距離が出ました。持ち球は高いハイドロー。最も上手いのがパッティングで、絶対にショートしない強気のスタイルです。
彼は球が曲がらないタイプで、スイングはジュニアの当時からいまもほとんど変わっていない。(ジュニア時代と現在のスイング動画参照:トシ平田提供)昔よりリストの使う量は減りましたが、基本ダウンスイングで左ヒジがくっついてきて強烈なタメとともにしっかり押し出すドロヒッターです。それでいて、ジュニア出身者特有のスイングに柔らかさがあります。また、5月にPGAツアー2勝目を挙げましたが、フォロースルーでクラブが立っていて、より曲がらないスイングになっています」
そんなスイングの特長があるが、本当に強いのは得意のパッティングで顕著に現れるとおり、メンタルの強さにあるという。
「彼のプレースタイルはメンタルの強さにあります。エピソードはたくさんありますが、例えるなら、USジュニア選手権の決勝の最終ホール。2.5メートルのバーディパットを待つ彼は、相手が1stパットを1.5mくらいオーバーしたのにコンシード(OK)しました。で、バーディパットを入れて勝ったのですが、試合後に“なんであんなに長い距離をコンシードしたのか”聞いたんです。すると、“相手のミスを待ってプレーしたくなかった”とサラリ。彼が17歳のときです。うちの息子より3つ年下でしたが、ハイスクール入学時から“彼には勝てない”とよく言っていましたね」(トシ平田)
また、トシ平田氏本人も、ハーマンと何度もクラブチャンピオンを争ったという。
「地元のジョージア州サバンナ、サウスブリッジGCで彼は15歳でクラブチャンピオンになりました。翌年は“戦う相手がいないから出ない”と不出場。その翌年、“俺が戦うから出ろ!” と言って無理やり出させたら、こてんぱんに負けたました……。彼はテニスプレーヤーだったから、小柄ですがリストが強くて当時から280ヤード以上飛距離が出ました。持ち球は高いハイドロー。最も上手いのがパッティングで、絶対にショートしない強気のスタイルです。
彼は球が曲がらないタイプで、スイングはジュニアの当時からいまもほとんど変わっていない。(ジュニア時代と現在のスイング動画参照:トシ平田提供)昔よりリストの使う量は減りましたが、基本ダウンスイングで左ヒジがくっついてきて強烈なタメとともにしっかり押し出すドロヒッターです。それでいて、ジュニア出身者特有のスイングに柔らかさがあります。また、5月にPGAツアー2勝目を挙げましたが、フォロースルーでクラブが立っていて、より曲がらないスイングになっています」
そんなスイングの特長があるが、本当に強いのは得意のパッティングで顕著に現れるとおり、メンタルの強さにあるという。
今年5月のハーマン。ジュニア時代とほとんどスイングが変わらない!(動画提供:トシ平田)
この男、天性の勝負師か。「プレッシャーを感じなくなったら、ゴルフをやめる」
ジョージア州サヴァンナという小さな街では無敵だったハーマンも、挫折がなかったわけではないと言う。
「彼はジョージア大学に進学し、ハリス・イングリッシュやケビン・キスナーと同級生。ゴルフエリートには違いないのですが、卒業後はスランプでQTを二回くらい滑って下部ツアーやミニツアーでしばらく戦っていました。公称は170cmですが、実際は167、8cmくらいしかありません。小柄なために、スランプの頃“この先どうするのか?”と意地悪な記者から聞かれたとき、“ボクの将来ビジョンはPGAツアーにしかない”ときっぱり答えていましたね。無口なタイプですが、信念の人で、出会った16歳の頃から大人のように考え方が成熟していました」
トシ平田は、何度もハーマンとプレーする度にいろんな話をしたという。その度、16、7歳のハーマンから何度も感銘を受けるような発言を聞いたのだとか。中でも、今でも忘れられない言葉があるという。
「プレッシャーを感じなくなったら、ボクはゴルフをやめる」(ブライアン・ハーマン)
「ある時、競技中における、緊張やプレッシャーとどう戦うかについて彼と議論しました。その時、16歳の彼は私にはっきりとこう答えたのです。この言葉は実に深い。ゴルフ競技とは、相手との戦いである前に自分との戦いですからね。ゴルフはミスのスポーツでもありますから。でも、彼はプレッシャーを全くネガティブに捉えるどころか、プレッシャーを感じなくなったらゴルフをやめるとさえ言い切った。考え方のモノが違うなと思いましたね」(トシ平田)
ハンティング好きで、釣り好き、お父さんはゴルフしないというブライアン・ハーマン。無口なタイプゆえ、メディアにもあまり人となりが知られていないが、根っからの勝負師だ。
「トーマス選手は30ヤード以上飛ぶし、勢いもあるタイプ。ブライアンはそれに影響されずに、自分のゴルフを貫いてほしいと思います。その点では、プレッシャーをこの上なく楽しむタイプなので、心配していませんが、厳しいPGAツアー、しかもメジャー。そう甘くはないですからね。今日は眠れそうにありません」(トシ平田)
Text/Mikiro Nagaoka
「彼はジョージア大学に進学し、ハリス・イングリッシュやケビン・キスナーと同級生。ゴルフエリートには違いないのですが、卒業後はスランプでQTを二回くらい滑って下部ツアーやミニツアーでしばらく戦っていました。公称は170cmですが、実際は167、8cmくらいしかありません。小柄なために、スランプの頃“この先どうするのか?”と意地悪な記者から聞かれたとき、“ボクの将来ビジョンはPGAツアーにしかない”ときっぱり答えていましたね。無口なタイプですが、信念の人で、出会った16歳の頃から大人のように考え方が成熟していました」
トシ平田は、何度もハーマンとプレーする度にいろんな話をしたという。その度、16、7歳のハーマンから何度も感銘を受けるような発言を聞いたのだとか。中でも、今でも忘れられない言葉があるという。
「プレッシャーを感じなくなったら、ボクはゴルフをやめる」(ブライアン・ハーマン)
「ある時、競技中における、緊張やプレッシャーとどう戦うかについて彼と議論しました。その時、16歳の彼は私にはっきりとこう答えたのです。この言葉は実に深い。ゴルフ競技とは、相手との戦いである前に自分との戦いですからね。ゴルフはミスのスポーツでもありますから。でも、彼はプレッシャーを全くネガティブに捉えるどころか、プレッシャーを感じなくなったらゴルフをやめるとさえ言い切った。考え方のモノが違うなと思いましたね」(トシ平田)
ハンティング好きで、釣り好き、お父さんはゴルフしないというブライアン・ハーマン。無口なタイプゆえ、メディアにもあまり人となりが知られていないが、根っからの勝負師だ。
「トーマス選手は30ヤード以上飛ぶし、勢いもあるタイプ。ブライアンはそれに影響されずに、自分のゴルフを貫いてほしいと思います。その点では、プレッシャーをこの上なく楽しむタイプなので、心配していませんが、厳しいPGAツアー、しかもメジャー。そう甘くはないですからね。今日は眠れそうにありません」(トシ平田)
Text/Mikiro Nagaoka