超軽量(アンダースペック)は武器? キャロウェイ『EPIC MAX FAST』でキャリーは伸びるか
PGAツアー、そして国内男子ツアーで軽量ヘッド・長尺ドライバーの波が押し寄せている。ある種「アンダースペック」と呼べるものだが、どれくらいの効果が出るか、HS30m/s台のアマチュアが検証した。
配信日時: 2021年7月20日 21時30分
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Rで約269gの『EPIC MAX FAST』が登場
5月の「全米プロ」でフィル・ミケルソンが7876yのメジャー最長コースで最年長優勝。手には189gの軽量ヘッドが握られ、47.75インチの長尺だ。ここ数年、ブライソン・デシャンボーが48インチへの挑戦を口にしたり、石川遼が47.5インチを投入したり、マキロイが60g台のXを使用したりと、猛者たちの【1W・アンダースペック化】の動きが見られる。
軽量で長いとHSアップするが【安定が得られるのか?】と常に不安がつきまとう。昔からクラブの格言は【振り切れる範囲でMAX重めがいい】が常識。なぜ、猛者たちはこの流れに逆行できるのか? そして我々にも真似できるのか? キャロウェイの最新・超軽量作『EPIC MAX FAST』を例にテストすることにした。
軽量で長いとHSアップするが【安定が得られるのか?】と常に不安がつきまとう。昔からクラブの格言は【振り切れる範囲でMAX重めがいい】が常識。なぜ、猛者たちはこの流れに逆行できるのか? そして我々にも真似できるのか? キャロウェイの最新・超軽量作『EPIC MAX FAST』を例にテストすることにした。
1人目のテスターは、ロマン派ゴルフ作家の篠原嗣典さん(56歳、約39m/s)。『貧打爆裂レポート』を寄稿する平均スコア76の上級者で、クラブにも詳しい。2人目は、エンジョイ派の山野孝一さん(55歳、約38m/s)。PGAツアーで多数使用の人気アスリートモデルを所有するクラブ好きだ。
2人とも自身のエース1Wよりも30g以上軽い【アンダースペック】に不安な様子。PGAツアーの猛者たちの長尺と異なるレベルの【超軽量スペック】に「球が暴れるのではないか?」と疑うのも当然。そこでトラックマンで計測し、厳正なデータを基に試打を行った。
2人とも自身のエース1Wよりも30g以上軽い【アンダースペック】に不安な様子。PGAツアーの猛者たちの長尺と異なるレベルの【超軽量スペック】に「球が暴れるのではないか?」と疑うのも当然。そこでトラックマンで計測し、厳正なデータを基に試打を行った。
山野さんはスライス激減、キャリー22y増
山野さんが試打開始。エース1Wでは弾道が低く、つかまえきれずにスライスが多かった。飛ばないレンジ球なこともあるが、エースの平均キャリーは【169.6y】。が、「普段のコース球だともっと飛ぶので、200yで越せるバンカーなら迷わず上を狙います」とアグレッシブな性格だ。
エースより36gも軽い『EPIC MAX FAST』(R)はどうか。軽さに慣れた後は、エースの低いスライスがウソのようにつかまり、中・高弾道ストレートに。ミスして右に飛び出した球もドローで少し戻るなど助かる球に変わった。平均キャリーは【191.8y】と22yも伸び、ナイスショットは飛ばないレンジ球でも200yを越えた。
「お気に入りのエースとこんなに違うのはショックですが、高さもつかまりも明らかに『EPIC MAX FAST』の方がイイですね……。ミスヒットしても右にすっぽ抜けたりしないですし、すごく軽いのに振りやすくて球が暴れないのが意外でした」(山野さん)
エースより36gも軽い『EPIC MAX FAST』(R)はどうか。軽さに慣れた後は、エースの低いスライスがウソのようにつかまり、中・高弾道ストレートに。ミスして右に飛び出した球もドローで少し戻るなど助かる球に変わった。平均キャリーは【191.8y】と22yも伸び、ナイスショットは飛ばないレンジ球でも200yを越えた。
「お気に入りのエースとこんなに違うのはショックですが、高さもつかまりも明らかに『EPIC MAX FAST』の方がイイですね……。ミスヒットしても右にすっぽ抜けたりしないですし、すごく軽いのに振りやすくて球が暴れないのが意外でした」(山野さん)
篠原さん、高ストレートでキャリー21y増
次は、今年買い替えたメジャー制覇ドライバーを愛用する篠原さん。エース1Wは中弾道フェードで快音を響かせる。「普段のコース球はもっと飛ぶけど、200yで越せるバンカーは刻みます。芯を喰えばキャリー200yは越せますが、少しでも外すとバンカーなので」と、上級者ならではのコメント。
エースより39gも軽い『EPIC MAX FAST』は、まず球が高く最高到達点が遠くなった。滞空時間も長く、中・高弾道ストレートドローを連発する。山野さん(+1.4m/s)ほどのHSアップせずだが、エースよりミート率が高く平均キャリー171.5yから【192.5y】に21y伸びた。
「レンジ球じゃなく、コース球だったら絶対にもっと飛んでるはずです」と篠原さん。エース1Wよりスピンも約600rpmほど減っており、慣れないアンダースペックでミート率【1.5】をマークし続けた。さすがに“試打慣れ”しているからと思いきや、テストを見届けた筒康博は「それだけじゃない」と話す。
エースより39gも軽い『EPIC MAX FAST』は、まず球が高く最高到達点が遠くなった。滞空時間も長く、中・高弾道ストレートドローを連発する。山野さん(+1.4m/s)ほどのHSアップせずだが、エースよりミート率が高く平均キャリー171.5yから【192.5y】に21y伸びた。
「レンジ球じゃなく、コース球だったら絶対にもっと飛んでるはずです」と篠原さん。エース1Wよりスピンも約600rpmほど減っており、慣れないアンダースペックでミート率【1.5】をマークし続けた。さすがに“試打慣れ”しているからと思いきや、テストを見届けた筒康博は「それだけじゃない」と話す。
筒「アンダースペックの新常識!」
「ミート率が出るのは篠原さんの腕前もありますが、軽量ヘッドなのにJAILBREAK AIスピードフレームが付いて、ボール初速が出るからでしょう。上級者の篠原さんはクラブを感知しながら振る【スインガー】なのでHSアップは0.5m/sでしたが、【ヒッター】の山野さんは約1.4m/s近く速く振れました。言い換えると、超軽量の『EPIC MAX FAST』は、アベレージゴルファーほど速く振れる可能性が高いということ。
それにも増して魅力なのは、過去の球が暴れるアンダースペックではなく、【現代のアンダースペックは、ミート率も高く球が安定する】こと。これだけ軽いとシャフトが戻り切らずド右に出たり、チーピンや吹け上がりを想像しますけど、実戦的な中・高弾道ストレートドローで2人ともキャリーを大幅に伸ばせました。2人ともフェースが開いて当たるミスが少なく、スピン量も改善されましたが、今までの軽量クラブの常識には全く当てはまらない、実戦的なドライバーです」(筒康博)
また、PGAツアーの猛者たちについても触れる。
また、PGAツアーの猛者たちについても触れる。
「フィル・ミケルソン選手は、2Wを多用するのに平均キャリーで昨年の290yから297ヤードに伸ばしました。石川遼プロも47.5インチで【競技人生で一番飛んでいる。キャリーは300y】と話してますが、HSの速い猛者たちも【キャリーを伸ばしたい】意味では我々アマと同じです。特に雨が降った後もそうですし、池やバンカーなどハザードをキャリーで越せるとコース攻略が劇的に変わります。
ここまで猛者たちが長尺を投入するのも記憶にないですが、背景には【軽量でも剛性の高いシャフト】、【軽量ヘッドでもMOIを高めて安定が可能】なことが大きいなと。松山英樹プロが、1Wのスピン量を減らさずに高初速を求めるのも、キャリーを伸ばすためだと聞きます。低スピン過ぎてキャリーが減るものは猛者でも求めない時代。我々アマもキャリーを伸ばしたいですよね」(同)
ここまで猛者たちが長尺を投入するのも記憶にないですが、背景には【軽量でも剛性の高いシャフト】、【軽量ヘッドでもMOIを高めて安定が可能】なことが大きいなと。松山英樹プロが、1Wのスピン量を減らさずに高初速を求めるのも、キャリーを伸ばすためだと聞きます。低スピン過ぎてキャリーが減るものは猛者でも求めない時代。我々アマもキャリーを伸ばしたいですよね」(同)
1Wだけアンダースペックじゃ困る!
超軽量ドライバーで20y以上のキャリー増をはたした篠原さんと山野さん。ところが、「他の13本はどうしたらいいの?」と指摘するのも当然のこと。今回の『EPIC MAX FAST』シリーズには、FW、UT、IRONまでが揃っているため、マイ7Iと『EPIC MAX FAST』の7Iも比較してもらうことにした。
まずは、7Iロフト30°のエースを使用する山野さん。ややフェード気味の持ち球で平均146.2yを記録し「レンジ球なのでこんなものです」。次に7Iロフト26°と、約1番手分立った『EPIC MAX FAST』を打つと、高弾道ストレートで平均157.1yと、約11y伸びた。「飛びも魅力ですが、高く上がる点もイイです。でも、ボクはアイアンに何より【カッコよさ】を求めます。構えた時の顔つきもシャープですし、バックフェースのデザインもそういう意味では完璧に近いのかも」。
次は、7Iロフト26°のエースを使用中の篠原さん。『EPIC MAX FAST』と同じ超飛び系アイアンなだけに打つ前に「この戦いは厳しくなるのでは?」と話していたが、平均データに絶句。エースが152.6yだったのに対し、軽量の『EPIC MAX FAST』は160.7yを記録。「打球音と打感が反則レベルにイイ。飛び系なのに上から打ち込んだり弾道の打ち分けも出来ますし、球を拾いやすくて寛容性も高い。まさか、自分の飛び系より飛ぶとは……」。
筒「イイ顔で寛容性ある飛び系は珍しい」
この2人の試打結果をどう受け止めればいいのか? 筒はこう解説する。
「2人ともゴルフ歴も長く、アイアンの顔つきに非常に敏感な熟練ゴルファーでしたよね。クラブにうるさく目が肥えているので、大型でボテッとした顔のアイアンより、シャープな顔のモノが好き。ただし、単にシャープで寛容性がないモノだと、ミスして飛ばなくなることはお二人とも経験上分かっています。
『EPIC MAX FAST』で平均距離が伸びた理由は、軽量でHSアップするのは勿論ですが、【寛容性のあるイイ顔の飛び系】という、他にはない特徴から来る安心感がかなり効いていると思います。構えてその気になるというか、途中で本気な目つきになり、打つ度に自信をもって振れていくのが見ていてよく分かりました。ミスの不安が無さそうというか」。
筒が指摘したように、『EPIC MAX FAST』は一見するとマッスルバックに見えるが、内部は中空構造になっている。そして、ウレタン・マイクロスフィアに包まれた大量のタングステンで寛容性と高打ち出しを生み出す構造となっていた。最後に、筒が最近のアマチュアの生声を明かして取材を締めた。
「2人ともゴルフ歴も長く、アイアンの顔つきに非常に敏感な熟練ゴルファーでしたよね。クラブにうるさく目が肥えているので、大型でボテッとした顔のアイアンより、シャープな顔のモノが好き。ただし、単にシャープで寛容性がないモノだと、ミスして飛ばなくなることはお二人とも経験上分かっています。
『EPIC MAX FAST』で平均距離が伸びた理由は、軽量でHSアップするのは勿論ですが、【寛容性のあるイイ顔の飛び系】という、他にはない特徴から来る安心感がかなり効いていると思います。構えてその気になるというか、途中で本気な目つきになり、打つ度に自信をもって振れていくのが見ていてよく分かりました。ミスの不安が無さそうというか」。
筒が指摘したように、『EPIC MAX FAST』は一見するとマッスルバックに見えるが、内部は中空構造になっている。そして、ウレタン・マイクロスフィアに包まれた大量のタングステンで寛容性と高打ち出しを生み出す構造となっていた。最後に、筒が最近のアマチュアの生声を明かして取材を締めた。
「最近多くのお客さんから【イイ感じに飛ぶマッスルがあるらしいですね】と問い合わせを受けることが多く、【中空マッスル】のことを仰っています。多くの方が50代以上で、若い頃にマッスルバックに憧れていた方。もちろん、大型キャビティを使っていたけど、最近【やさしくて飛ぶマッスルがあるらしい】と気づいたそう。
まさにこの図式に当てはまるのが今回の『EPIC MAX FAST』ですが、他の『P790』や『P770』、『オノフ黒』や『i500』、『スリクソンZX4』と違う点は、本当に【50代以上の方のためだけに作られた超軽量モデル】な点。他機種は軽いシャフトが一部選べても、基本はアスリートライクなため、キャロウェイだけがシニア層に向けて作った点が新しいです」。
超軽量(アンダースペック)クラブの実力を最初は疑っていた、篠原さんと山野さん。最終的には、ギラギラした勝負師の目つきに変わっていた。
Text/Mikiro Nagaoka
まさにこの図式に当てはまるのが今回の『EPIC MAX FAST』ですが、他の『P790』や『P770』、『オノフ黒』や『i500』、『スリクソンZX4』と違う点は、本当に【50代以上の方のためだけに作られた超軽量モデル】な点。他機種は軽いシャフトが一部選べても、基本はアスリートライクなため、キャロウェイだけがシニア層に向けて作った点が新しいです」。
超軽量(アンダースペック)クラブの実力を最初は疑っていた、篠原さんと山野さん。最終的には、ギラギラした勝負師の目つきに変わっていた。
Text/Mikiro Nagaoka