PGAツアー
米国男子
マスターズ
「マスターズ優勝より大事なもの」が“グリーンジャケット”を運んだ【舩越園子コラム】
マスターズ2勝目を飾ったスコッティ・シェフラーにとって“マスターズ優勝よりも大事なもの”とは?
配信日時: 2024年4月15日 03時00分
「2年前は春先から突然、フェニックスオープンやマッチプレー、アーノルド・パーマー招待で優勝し、僕もメレディスも、自分たちの人生が急激に変化していることを感じながらオーガスタにやってきて、とてもエモーショナルになっていた。でも今は僕も妻も、以前よりずっと成熟している。そして、マスターズで勝つことより、僕たちの初めてのベイビーがこの世に誕生することを、より一層、楽しみにしている」
オーガスタ・ナショナルのサンデー・アフタヌーンに勝利を目前にしながら戦うとなれば、誰だって気持ちは前のめりになり、その気持ちが集中力や思考、ひいてはパフォーマンスを阻害する。栄えあるマスターズ2勝目をかけて戦うとなれば、なおさらである。しかし、シェフラーはグリーンジャケットより、まだ見ぬベイビーに想いを馳せていた。だからこそ、その想いが、前のめりになりがちな彼の心を適度に引き戻し、心の火をいい具合に中庸に保ってくれたのではないだろうか。
マスターズ2勝を挙げたのは史上18人目、世界ランキング1位の立場でグリーンジャケットを羽織ったのは史上5人目。そんな大記録がかかっていた今年のマスターズと愛妻の初産の時期が重なったことで、シェフラーは本来なら重くのしかかるはずのプレッシャーを、結果的に吹き飛ばすことができた。
「無欲の勝利」とまでは言わないが、勝利を意識しすぎずに戦うことができた。「マスターズ優勝より大事なもの」が、彼にグリーンジャケットを羽織らせた。「それも、すべては神の定めなのよ」。愛妻メレディスは、きっとそう思っているのではないだろうか。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)