ヤマハゴルフ 新規契約プロたちが決断に至った理由とは?
text by Kazuhiro Koyama
配信日時: 2017年4月14日 05時40分
有村智恵の心を動かした打感と打音
有村智恵の場合も、そんなリスクと無縁ではない。ゴルフをはじめたジュニア時代から、同じメーカーのクラブを使い続け今日に至っている。当然、クラブ契約の変更は、今回が初めてのことだ。
毎年のように新作をリリースするクラブメーカーだが、それでもその企業のカラーとでもいうべき特徴を継承しているものだ。構えたときの形状の傾向、打ったときや振ったときの感触、そして機能面においても、決して前作と大きく異なったクラブにはならない。プロは、そのクラブで練習し、技術を作っているわけで、ひとつのメーカーのモデルを長く使っているプロほど、他のメーカーに移るのは容易ではない。それでも新たなクラブ契約を決断したのは、有村の「もう一度ツアーで勝利する」という復活への意志にほかならない。
アメリカツアーを転戦し、最終的には二部ツアーを戦った。ケガにも苦しみ、日本ツアーのシード権も失い、昨年末は予選会に出場し、17位で辛くも今季の出場権を得た。若手の台頭が著しい現在の女子ツアーにおいて、シード権を確保し、再び優勝を手にするには、実績のある有村とて簡単なことではない。そんな状況が、クラブを変え、ウェアを変え、スイングまでも変えるほどの「大改革」を必要としたのだ。
有村がヤマハのクラブに魅力を感じたのは、打感と打音の良さだ。はじめて打ったときの打音に「ビビッと」きたのだという。特にウッド系の打音を気に入っているというが、このあたりは、世界屈指の楽器メーカーであり、ゴルフにおいても、以前からヘッド内部の音響にこだわり続けたヤマハの真骨頂がある。メーカーのアイデンティティとも言える“音”の部分が、感覚派の有村のフィーリングにマッチした、幸福な邂逅がそこに存在した。
若手の実力派、ツアー屈指のショットメーカーであるスタープレーヤー、そんなかつての有村のイメージと、今季は印象が違って見える。アメリカでの過酷な戦いの中で、刀折れ矢尽きて、改めて国内ツアーに復帰した。そこから再び上昇するべく復活を期する。ファンは、そのひたむきさに胸を打たれるのではないだろうか。
今季、有村は『inpres(インプレス)』ロゴを身につけて、ツアーを戦う。復活をテーマに、もう一度ゴルフの楽しさを味わう、『inpres(インプレス)』のイメージと有村の戦いぶりが重なるだろう。